1. 『コーラン』の現世否定と神の描写
よく聞くがよい。現世の生活はただ束の間の遊びごと......」(Q57:20)
「私の僕どもが私のことを汝に尋ねる時、おお、私は側近くにいる」(Q2:186)
「われは彼の頸の血管より近くにいる」(Q50:16)

2. 禁欲主義の時代(7世紀末〜)
神への恐怖が基調。修行・禁欲自体を重視。来世における魂の救済を目指す
・dhikr=アッラーの名を含んだ唱句を繰り返し唱える修行(唱名)
・tawakkul=神への絶対的信頼、すべてを神のなすがままに任せること

3. スーフィズムの誕生=愛の強調
☆聖女al-Rabiaのことば
「おお神よ、もし私が地獄の恐怖からあなたを崇拝するのでしたら、私を地獄で焼いて下さい。もし私が天国が欲しくてあなたを崇拝するのでしたら、私をそこから追放して下さい。しかし、もし私があなたご自身のためにあなたを崇拝するのでしたら、どうかあなたの永遠の美をお取り上げにならないで下さい」
(中村廣治郎著『イスラム――思想と歴史』東京大学出版会より引用)

4. 神との合一
fana(消滅)〜自己についての意識がなくなり、神の中に包摂されて一体化した状態
     ・al-Bastami(d.875)のことば「われに栄光あれ!(subhani)」
     ・al-Hallaj(d.922)のことば「われは神なり!(Ana al-Haqq)」
     cf.)神は世界の中心に輝く光源(Q24:35「アッラーは天地の光である」)

5. 修行道とスーフィー教団の成立
☆懺悔、律法遵守、隠遁と独居、清貧と禁欲、心との戦い、タワックル.....
     ―――→ そして、ズィクルや歌舞音曲をともなうsamaからファナーへ
☆導師(シャイフ、ピール)による指導(ファナーの状態を知るため)
     ―――→ 12〜13世紀 tariqa(スーフィー教団)の形成
     《生業に従事する「在家」が財政支援》

《参考文献》
ニコルソン,R.A.(中村廣治郎訳)『イスラムの神秘主義』平凡社ライブラリー、1996年
井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』岩波新書、1980年
中東政治論地域研究(中東)中東・中央アジアの社会と文化宗教学A地域文化研究A
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