1. ウンマ〜地上に「神の国」を実現しようとする共同体
☆イスラームの人類史観
創造の日:イスラームの誕生(自然界 vs 神の命令に従わない自由を持つ人間)
アダム → 子孫はすべて忘却 → アブラハム → 一神教の確立、偶像否定以外は子孫が忘却 → モーセ → (律法による善悪把握) → 後の人々の過ち(自分たちだけのための法と誤解したユダヤ教徒) → イエス(普遍的な信仰の確立) → 信者によるイエス崇拝、個人の信仰重視(社会正義をなおざりにして、現世の問題は世俗権力に任せたキリスト教徒) → ムハンマドのウンマ:最後の劇的なドラマ(神の命令に従って生きようとする社会の始まり/使信を正確に保持し広め実行しようとする共同体の成立)

☆現世(歴史)の持つ意味―――他の宗教・イデオロギーとの比較
     ・ヒンドゥー教:究極的には無意味(この世のすべては幻、救済はこの世の外に)
     ・キリスト教 :意味を持つが決定的ではない
(現世は神の国のために努力する場だが、人間の罪性が現れる場でもある。救済はキリストによる)
     ・イスラーム:決定的な意味を持つが最終的ではない(永遠の救済は来世で)
     ・マルクス主義:すべて(歴史の必然的な過程を前進させる行為のみが意味を持つ)

2. イスラームの「政教一元論」的発想(小杉泰『現代中東とイスラーム政治』による)
《イスラーム型国家/社会モデル》 《西洋型国家/社会モデル》
[政教は別体系として存在しない] [政教2つの体系が前提]
シャリーア(イスラーム法) 国家            宗教
政治 ←          → 宗教 政治 ←          → 宗教
  市民法          教会法
  世俗的          精神的
ウンマ(イスラーム共同体) 俗            聖
人間的、人的/権力 人間的、人的/権力
☆イスラーム型国家〜法が施行される領域を防衛し、その領域内での法の実施を保証するために創出されるもの
☆シャリーア〜政治的事柄と宗教的な事柄とを横断的に網羅する法
(ただし、行政に関わる部分は人間に任されている)

《参考文献》
W.C.スミス(中村廣治郎訳)『現代におけるイスラーム』紀伊國屋書店、1974年
小杉泰『現代中東とイスラーム政治』昭和堂、1994年
中東政治論地域研究(中東)中東・中央アジアの社会と文化宗教学A地域文化研究A
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