海外学術調査フォーラム

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    ゲノム情報から復元された琉球列島人の集団史―新学術領域「ヤポネシアゲノム」から

    松波 雅俊
    (琉球大学医学研究科)

    本報告では、科研費・新学術領域研究「ゲノム配列を核としたヤポネシア人の起源と成立の解明」の一環として実施した琉球列島の現代人ゲノム解析について紹介した。本課題はゲノム配列を中心として異分野融合による新たな学問領域を構築する試みである。琉球列島は、日本列島人の起源を考える上で重要な地域であり、そこに住む人々のゲノム情報には、その集団がこれまでに経てきた歴史が秘められている。我々は、沖縄バイオインフォメーションバンクに登録されている琉球列島各地から収集した検体を用いてゲノム解析を進めており、琉球列島人の遺伝背景には、島嶼ごとに多様性があることを見出している。これらのうち宮古諸島で収集した1,240検体を用いたゲノムワイドSNP解析を実施し、宮古諸島出身者はそれぞれに異なる集団史を経てきた3つの集団に分類されることを明らかにした最近の我々の研究を報告した。この報告では現在の宮古諸島の集団遺伝構造は、村立てと呼ばれる過去の集団移住や、自然災害による人口の変化を反映していることが示唆されている。このような研究成果は、遺伝背景と疾患との関連を考える上で重要であり、遺伝学のみならずヒトの移動に関係する考古学・比較言語学の分野からも注目されている。今後は、文理の境界も越えてこのような研究分野と共同研究の可能性を模索することで、該当地域の多様性の総合的理解を目指す。