海外学術調査フォーラム

分科会(ワークショップ講師との個別質疑) BR3

講師石川 博樹(AA研)

 エチオピア高原で栽培化されたイネ科の植物「テフ」と、その粉でつくられる酸味のあるパンケーキ状の食べ物「インジェラ」に関する石川博樹氏の研究報告を出発点として、ルーム3では、文字資料の少ない地域における歴史的研究をどのように進めうるのか、またその際、歴史学以外の研究手法をどう組み合わせられるのかという二点が主に議論された。テフに関する史料としては、ヨーロッパの宣教師による記録のほか、周辺のイスラーム王朝で書かれた地理書等があるものの、それらから得られる情報は限られているという石川氏の説明を受けて、フロアからは、文字資料を補うものとして、気象条件や気候変動に関する研究や、テフの植物学的背景や野生種からの変化を含む生態条件、栽培方法や肥料等に関する研究を活用する可能性が提案された。さらに、テフが主食となった際の副食について、とくにたんぱく源が何であったのか、どのように調理されたり食されたりしたのか、そのバリエーションについても話題に上った。
  分科会の共通テーマである「異なる分野や地域を結び付けて共同研究を組織するときの苦労や工夫は?」という問いに対して、石川氏は、(歴史学など)人文系学問は、しばしば、それぞれの研究者が個別に研究を進める傾向にあり、他の分野や地域に関する研究者と共同のテーマを設定したり、共同研究を主導したりすることが、必ずしも容易ではないとした上で、工夫として、テーマの枠をゆるやかに設定することで、各々の関心から議論に入れるような場を提供しようと心がけたと述べた。ルーム3には自然科学系の研究者が多く参加しており、最後に座長の伊藤元己氏(生物多様性情報学)が指摘したとおり、こうしたフォーラムこそが、アイデアを交換する場となり、分野によらず関心を共有する研究者が出会う場として機能することを実感した。


(報告: 後藤 絵美(AA研))