海外学術調査フォーラム

分科会 BR2

講師松波 雅俊(琉球大学医学研究科)

  本分科会では、共同研究を遂行する際の困難点、及び、研究課題の医学的な側面について、座長・参加者と講師の松波氏との間で下記のような質疑応答が交わされた。
  まず、共同研究の実施に関し、1.「専門知」と「総合知」の組み合わせ方、2. 大学院生など若手の参画方法、3. 生命情報科学研究において人文系研究者と時間スケールにずれが生じた場合の調整方法について質疑があった。それに対し、松波氏からは、1’. ゲノム情報など、これまで専門知として蓄積されてきた情報を、人類集団の分岐の歴史を解明するための総合知として活用することを進めており、2’. 生物学や考古学といった専門知に加え、ゲノム解析のためのプログラミングの知識を持った学生を育成しつつ、3’. 世代という絶対的な時間軸を有する遺伝学分野と、親子や地域・集団・支配者階級などの影響を勘案する言語学など年代推定を行うことが難しい分野との間で、ギャップを埋めるための相談・調整を行っているとの回答があった。
  次に、医学的な側面について、4. 縄文・弥生時代の人類の移動に対する火山・地震・津波など自然災害の影響から、5. ゲノムと疾患の関係(ピロリ菌、長寿、風土病の伝来)に至るまで、多岐にわたる質問が投げかけられた。これに対し松波氏からは、4’. 6,000~7,000年前の人類の移動にはまだ不明点が残っているが、ゲノム解析から中国人と縄文人には違いがあることが判明しており、そして、5’. 遺伝情報(免疫など)と疾患の関係を明らかにするためには、バイオバンクにさらに数万から数十万規模の検体の臨床情報を蓄積する必要があり、今後の研究の進展が期待される、との回答があった。


(報告: 安達 真弓(AA研))