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    人類進化理論の新開拓:社会性の起原と進化の事例から

    河合香吏
    (AA研)

     本報告で紹介した科研費プロジェクト「社会性の起原と進化:人類学と霊長類学の協働に基づく人類進化理論の新開拓」は、「社会性」をめぐり、地域・文化、そして種を超えた比較研究を通じて、「われわれはどこから来て、何者であり、どこへ向かうのか」という人類学の究極課題を問い直す試みである。 人間は極めて多くの個体との共存を果たしている種だが、それを支えているのは人間の社会的なあり方=社会性にほかならない。その特異性および起原と進化を明らかにするために、現場(フィールド)で繰り広げられる社会性の具体的な現れ、個体同士の相互行為の詳細という実証データを中核とする人類学と霊長類学がともに同等の資格において協働し、さらに自然人類学系、実験社会科学系、理論系との討議を重視するより広い学際的研究を展開している。 本研究では社会性を(1)利他性や協力行動といった向社会的(prosocial)な性向のみに限定しない、(2)親密で友好的なだけではなく、競争や競合、無視や黙認、敵対や排斥などさまざまな社会的相互行為として現れる、(3)実験下における「できる・できない」という能力の問題と自然状態で何かを「する・しない」という実践の問題は別ものであるという3つの立脚点からとらえる。その上で、真の意味での共同研究には、最大限同じ方法で同等な質・量のデータを収集し、同じ用語と概念で記述、分析、考察するための方法論の開拓が重要であることを指摘した。