海外学術調査フォーラム

ワークショップ講師との個別質疑 BR1

講師平田 昌弘(帯広畜産大学 人間科学研究部門)

西アジアにおけるフィールドワークを通して、乳文化研究の面白さ、西アジアの牧畜の本質、乳文化研究の意義などについて考察を進めた。搾乳と去勢の発明により「牧畜」という新しい生業が誕生したといわれるように(梅棹 1976)、乳利用の発明は人類史における一大変革である。搾乳の開始により、人類の生活域が広がるとともに、経常的な食料確保が可能になった。搾乳により生産効率も飛躍的に上昇した。一地点で課題を深く探るとともに、他地域でデータを蓄積することにより、ユーラシア大陸における乳文化の一元二極化論の仮説を構築した。他地域での調査実現には共同研究が必要になる。これまで様々な学際的共同研究に携わった。共同研究の型には、放任・個人成果重視型や目的邁進型などがある。共同研究の課題として、個別成果の寄せ集めに終わりがちな点があるが、共同研究においては如何に存在意義を示せるか、如何に自分の専門領域から出るか、如何に融合するための土俵を設定できるか、などが重要になる。また、成果偏重から脱却するとともに、共同研究においては現地協力者・共同研究者の尊重や充分なコミュニケーションが必要不可欠である。質疑応答では、牧畜・酪農では穀物への依存なしに栄養学的に充足するか、家畜のし尿はどのように利用されるか、家畜のし尿の地下水への浸透や循環に季節が関係するか、地図化する際にどのような根拠で線を引くか、もともと牧畜のなかった地域に牧畜を持ってくることでどのようなことが起こりうるか、などの質問があった。

(報告: 倉部 慶太(AA研))