海外学術調査フォーラム

分科会3 先史考古学を事例として

座長窪田 順平(人間文化研究機構)
三浦 英樹(国立極地研究所)
講師近藤 康久(人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)

 第三分科会は、講師に近藤康久氏、座長に窪田順平氏と三浦英樹氏のお二人を迎えて、定刻どおり、304室において開催された。

 最初に、午前の報告「先史考古学の海外調査——学際新領域へのチャレンジ」に関連して、近藤氏から次の二つの点について補足があった。一つは、フィールドとなる地域との関わり方に関してである。このなかで、近藤氏の研究チームが行っている、オマーンのドファール地方におけるコミュニティー主導型の伝統建築保全へのとりくみの事例が紹介された。二つ目は、フィールド調査において競合する各国との関係のあり方についてである。伝統的に考古学は国単位で展開してきたことから、現在でも基本的にはその枠組みで行われているが、各自の成果を共有するなどの形で相互に協力しあうことがあることが紹介された。

 これにつづいて、質疑応答がおこなわれた。そのさい、近藤氏が提示した「異なる分野の研究者のあいだでは、問題に対する理解がずれていることがあるが、そのズレを乗り越えるにはどうすればいいか?」という問題が再び確認された。出席者からは、学際的な共同研究をおこなうさいに必須のプラットフォームづくりについて、分野間での研究対象の違いを共同研究においてどのように乗り越えるか、また、フィールドである現地の研究者との協働関係の構築や、どのようなかたちで現地に貢献することができるかについて質問がだされた。これらに対する講師からの回答は、大きく三つの点に集約される。第一は、GISなどの新技術が学際的な研究プラットフォームづくりに貢献しうるということ。第二は、学際的な共同研究においては、共通の問題意識を持つのが重要であること。第三は、分野を異にする研究者が、ある現象を見たときに、異なる見方をするのは必然であり、共同研究において大切なのはそれを統合することであるということ。

 最後に、出席者一人一人が自己紹介をおこない、各々が学際的共同研究において抱えている課題や体験等が紹介された。出席者は25名を超えていたが、個別の体験談や感想が交換されることとなり、有意義な情報共有の機会となった。


(報告: 熊倉 和歌子(AA研))