海外学術調査フォーラム

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    野生動物の動きをはかるバイオロギング

    塩見 こずえ
    (国立極地研究所/動物行動学)

    講演2

     野生動物は、餌取り、繁殖、捕食者回避など、様々な目的のために様々な時空間スケールで移動を繰り返しながら生きている。つまり移動という行動は、動物の生存や進化における基盤とも言える位置付けにある。このことから近年、動物の移動メカニズムを包括的に理解することを目指した大型プロジェクトが世界各地で立ち上げられるなど、移動生態に対する関心は急速に高まっている。

     私自身、動物の行動の中でも、特に移動に注目して研究を進めてきた。これまでに研究した動物は、ペンギン類、ミズナギドリ類、アジサシ類などの海鳥である。彼らは餌を外洋や沿岸の水域で獲る一方、巣は陸に作るため、繁殖期は海と陸との往復を繰り返さなければならない。さらに、ペンギン類のように水中に深く潜って餌を獲る場合、餌のある深度と水面との鉛直移動も必要となる。これらの移動は、運動能力、ナビゲーション能力、エネルギー要求量といった内的要因に加えて、餌環境の季節的変化、風環境などの気象条件、捕食者など他種の行動といった外的要因にも左右される。私は、野生の海鳥の移動パターンの形成や移動の意思決定に、どのような要因が関わっているかを明らかにすることを目指している。

     そのためにはまず、彼らが実際に生息している自然環境下での行動パターンを計測、分析しなければならない。そこで用いているのが、バイオロギング(bio-logging)という手法である。これは、各種センサを内蔵した記録計を動物の体に直接取り付けることによって、野外で自由に動き回る動物の運動や移動経路、経験した環境パラメータを記録するアプローチである。1960年代に初めての試みがなされて以来、バイオロギングに用いられる記録計は、小型軽量化、多チャンネル化、長期記録の実現など、日進月歩の発展を遂げている。その恩恵を受けて、現在では小さな渡り鳥から大きな鯨類までサイズも分類群も多種多様な動物を“追いかける”ことが可能となった。外洋を広範囲にわたって移動する海鳥の行動も、高精度かつ高分解能で記録し、精査することができる。

     しかしこのように記録計は洗練されていく一方で、野生動物を相手にした調査では泥くさい作業がいまだ盛りだくさんである。私のこれまでの研究では、北欧、南極、亜南極、岩手県の無人島、でフィールドワークをしてきた。本発表では、各調査地での経験とそこで得られた研究成果について紹介する。