海外学術調査フォーラム

2017(平成29)年度 海外学術調査フェスタ 出展者一覧

ラオスにおけるエコヘルス教育導入のための調査研究と実践

研究代表者:朝倉 隆司(東京学芸大学)

研究分担者/共同研究者:友川 幸(信州大学)、國土 将平(神戸大学)

2009年から、ラオスの学校に学校保健活動とエコヘルス教育の導入を図るために、ラオス国立大学教育学部と協働して調査研究と教育実践を継続してきた。ラオスの健康課題は、感染症と生活習慣病による疾病の二重負担である。この課題に対応する手立てとして、社会開発、生態系・環境、人間の生活活動・ライフスタイル、健康の相互依存関係を理解し、持続可能な調和を実現するための健康と環境の統合教育としてエコヘルス教育を提案し、テキスト作成と教員養成大学の教員研修、授業研究を行っている。また、学校保健活動として簡易な身体計測の方法を導入し、教育実践の基礎データとして生活習慣や精神健康、発達資産等の調査研究を行ってきた。

経費名:日本学術振興会

ペルーにおける野生種トマト Solanum pimpinellifolium のAAL毒素に関する感受性調査とトマト進化の考察

研究代表者:有江 力(東京農工大学農学研究院)

研究分担者/共同研究者:児玉 基一朗、靖典 赤木(鳥取大学大学院連合農学研究科)

トマト(S. lycopersicum)の原産地であるペルーの野生種には、育種の過程で欠落した多様な遺伝子が存在する可能性がある。Alternaria alternata tomato pathotypeは、AAL毒素を生産、これに感受性のトマト品種特異的に茎枯病を引起す。本研究では、S. lycopersicumに遺伝的に近縁の野生種 S. pimpinellifoliumを採集、約100アクセションについて、小葉毒素検定およびPCRによって、AAL毒素に対する感受性を調査し、海岸部採集株および熱帯地域採集株どちらにも、茎枯病菌から生成されるAAL毒素に対して感受性が存在することを報告する。

経費名:基盤研究(B)(海外学術調査)

全面的集団化期の中央アジアにおける遊牧・農耕経済の研究

研究代表者:植田 暁(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター)

本研究は、3つの研究事項(「遊牧地域の集団化と遊牧的伝統」、「全面的集団化期における中央アジア農村の変容の解明」、「中央アジアにおける反集団化運動の展開」)に沿って全面的集団化によって中央アジア農村部がどのように変容したのかを解明することを目指す。本ポスター発表では,20世紀初頭までの中央アジアの一オアシスの空間的拡大において遊牧民の人口移動が果たした役割を、歴史地理情報システム(HGIS)を活用して明らかにしたい。本発表はオアシスの空間的発展モデルのひとつを示すとともに、集団化以降の大規模灌漑開発に伴う人口移動が集団化以前の発展経路と比較してどう異なっていたのかを示すための比較対象を準備するだろう。

経費名:科学研究費助成事業(特別研究員奨励費)(特別研究員)

過酷な乾燥環境における灌漑スキームの最適運用を目指した異分野協働

研究代表者:宇波 耕一(京都大学農学研究科)

ヨルダン渓谷の過酷な乾燥環境において,新奇的な雨水ハーベスト施設と除塩施設を含む灌漑スキームを構築して試験研究を行っている。これは,外国人招へい研究者,科研費基盤研究A(海外学術調査),基盤研究B(特設分野:連携探索型数理科学),挑戦的萌芽研究といった複数の学振事業の支援を受けたものであり,主に農業工学と数学の異分野協働によるところに特色がある。数値流体力学の知見を活かして設計,施工を行った施設が完成し,現在,偏微分方程式の粘性解にもとづく最適運用を試みている。また,土壌の水分,塩分と作物の相互作用のモデル化において,数学上の新たな課題が見出されてきている。

経費名:日本学術振興会

ケニア・ヴィクトリア湖島嶼における持続的マラリア撲滅を目指した集団投薬(MDA)の検討

研究代表者:金子 明(大阪市立大学)

研究分担者/共同研究者:Stephen Munga(ケニア中央医学研究所)、Jesse Gitaka(マウントケニア大学)、加賀谷 渉(大阪市立大学)、一瀬 休生(長崎大学)、Chim Chan(カロリンスカ研究所)他

三大感染症のひとつであるマラリアの流行は、世界的に減少傾向にあり、その撲滅可能性が新たに提起されている。しかし、サハラ以南アフリカをはじめとし、高度流行地は依然として残されており、撲滅のための具体的な方策も明らかではない。撲滅に向けた戦略のひとつとして、対象集団住民に一斉投薬を行う集団投薬(MDA)が注目されている。我々は、中~高度のマラリア流行が続くケニア・ヴィクトリア湖内のンゴデ島において、島民500人を対象としたMDAによる介入試験を実施し、MDAによる持続的なマラリア撲滅の可能性、および治療標的として想定される無症候性顕微鏡検出限界以下の低い濃度の原虫感染への効果について検証を行った。

経費名:基盤(A), 研究拠点形成事業(B)アジア・アフリカ学術基盤形成

継続する暴力としての「平和」―虐殺後のルワンダにおけるセキュリティの追求をめぐる社会関係―

研究代表者:近藤 有希子(日本学術振興会/同志社大学)

ルワンダ共和国では1994年の虐殺後、強権的な統治を敷くことで「平和」的秩序を維持してきた。そこでは、国民を分断する恐れのある者は厳しい処罰の対象となっている。このような国家のセキュリティの追求に呼応して、地域の人びとも「スパイ」の存在を内面化するなど、みずから規律に従う主体を生成している。本発表では、長期間の現地調査をおこなうなかで、発表者が次第に知覚してきた困難の経験―発表者に向けられた注意事項や人びとの他者への身構え等―をもとに、国家が地域社会を統治する仕方と、それが規定する人びとの関係性の諸相を明らかにする。そして、地域の人びとが現在の「平和」をいかなる状態として構成しているのかを検討する。

経費名:日本学術振興会科学研究費補助金(特別研究員奨励費)、公益財団法人村田学術振興財団研究助成

イスラームのトランスナショナル・ネットワークとバングラデシュ村落社会の変動

研究代表者:杉江 あい(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

本研究は、バングラデシュ村落社会における宗教的教義に基づく空間-社会の規律の強化が、どのようなメカニズムによって生じているのか、また、世界的なイスラーム復興の潮流といかなる接点や共通性/相違性を持つのかを明らかにすることを目的とする。バングラデシュ、および当国からの出稼ぎ者が多い中東諸国においてフィールドワークを実施し、(1)中東地域への出稼ぎ者が、渡航先でいかなる経験をし、それが彼(女)ら自身の信仰生活や、その出身地域にどのような変化をもたらしているのか、(2)(宗教)教育が住民の間でどのように受容され、個人および集団レベルの宗教的実践にいかなる影響を与えているのかを検討する。

経費名:日本学術振興会特別研究員奨励費

名古屋議定書締結! 海外からの動物植物微生物を研究に使う時の注意点

研究代表者:鈴木 睦昭(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所)

今回、名古屋議定書の日本の批准にあたり、海外からの植物・動物・微生物を利用し研究を行う時には、従来よりも、注意が必要となります。今回、研究者および大学が守らなければいけない要点についてご説明します。
例えば、こんな場合には注意が必要です。
1) 海外での生物サンプルの採取、2)海外の生物サンプルの持ち込み、3)外国人留学生による生物サンプルの持ち込み、4)海外の生物サンプルの購入や受け取りのときには ABSに関する手続きが必要となります。ABSに関する手続きは提供国によって異なりますが、事前の同意をとる、相互に合意する条件を交わすことが基本となります。

経費名:文科省

モーリシャスサンゴ礁海水中に存在する天然ホルモン活性物質の同定

研究代表者:徳元 俊伸(静岡大学学術院理学領域)

研究分担者/共同研究者:小谷 真也(静岡大学学術院農学領域)

申請者らはモーリシャスサンゴ礁海水中に含まれる新規ステロイド膜受容体作用性の天然ホルモン活性物質の存在を始めて検出することに成功した。さらに、そのホルモン作用を細胞レベルで検出できるセルベースアッセイ法を世界に先駆けて開発した。そのアッセイ法を基盤として天然ホルモン活性物質の同定を行うことを目的とする。2015年度は天然ホルモン活性物質の季節変動を調べるためモーリシャスの冬季にあたる7月から8月にかけて、夏季となる3月にサンプリングを実施した。さらに2016年度には2015年に活性の検出された3月に大量のサンプリングを実施し、持ち帰った試料をHPLCおよびESI-MSによって分析したので、その成果を報告する。

経費名:科学研究費補助金 基盤研究B 海外学術

太平洋地域に出現したタイワンカブトムシ新規バイオタイプのウイルス抵抗性要因の探索

研究代表者:仲井 まどか(東京農工大学)

研究分担者/共同研究者:浅野 眞一郎(北海道大学)

タイワンカブトムシ(別名サイカブトムシ:Oryctes rhinoceros)はヤシ類の害虫である。本種は、1980年代より太平洋州に分布を拡大したが、天敵ウイルスを用いた防除が実施され成功をおさめその被害が抑えられていた。しかし、2007年よりグアム(アメリカ合衆国)を中心に従来のウイルスに抵抗性のバイオタイプ(グアムのGをとってバイオタイプG)が出現した。バイオタイプGが分布する地域には、甚大なヤシ類の被害が拡大し太平洋州を中心に大きな問題になっている。本研究は、「バイオタイプGのウイルス抵抗性に関する要因の探索」を目的とし、2017年度より本研究を開始したので研究計画を発表する。

経費名:基盤B(海外)

関連URL:http://web.tuat.ac.jp/~insect/

内モンゴルの地下水水質の特徴とそのヒトへの健康リスク

研究代表者:永淵 修(福岡工業大学)

 地下水は、乾燥地で生活する人々にとって重要な飲料水源である。内モンゴル自治区は政府の定住化政策によって、完全遊牧型の生活形態ではなくなっている。そのため飲料水として河川水、雪解け水の利用はできなくなり地下水に頼るようになった。
 2015年と2016年に民俗学者と環境科学者が共同で内モンゴル自治区にて地下水の採取、生活様式、地下水摂取量等のフィールド調査を行った。これらのフィールドデータを用いて飲料水由来のヒトへの健康リスク解析を行った。結果をもとに早急に対策すべき水質項目(フッ素等)について議論する。また、羊骨炭を用いた、簡易なフッ素浄化装置の作成についても検討を始めたので紹介する。

経費名:文科省 科研費 基盤A(海外)

パレオアジア文化史学 ―― 新人文化形成プロセス総合的研究にむけた海外学術調査の統合の試み

研究代表者:西秋 良宏(東京大学)

研究分担者/共同研究者:西秋 良宏(東京大学)、赤司 千恵(東京大学)、門脇 誠二(名古屋大学)、北川 浩之(名古屋大学)、野林 厚志(国立民族学博物館)、若野 友一郎(明治大学)

 本研究は、パレオアジアPaleoAsiaにおいて約20万年前のアフリカに起源する新人がいつ、どのように拡散し定着したかを文化史的観点から解明する。それをもって生物学・ヨーロッパ偏向の研究動向に一石を投じ、より総合的な人類史を構築することを目的とする。
 そのため、アジア各地で関連する実地データを入手し、理論的解釈を加える計画である。しかしながら、アジア大陸は広大であり、所定の期間内に網羅的現地調査を実施することなど不可能である。そこで、日本の研究者がかつて実施した、あるいは現在実施している各地の関連現地調査の連絡網を構築し、そこから得られたデータ、知見を最大限に活用ないし再活用できる環境を整えることを提案する。

経費名:文部科学省新学術領域研究領域提案型2016-2020

関連URL:http://paleoasia.jp


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