海外学術調査フォーラム

III 東アジア

座長窪田 順平(総合地球環境学研究所)
蓮井 和久(鹿児島大学)
情報提供講師北川 秀樹(龍谷大学政策学部)
タイトル「中国における環境研究―フィールド調査、インタビュー、ワークショップ―」

 本分科会は話題提供者1名、座長2名、書記1名を含む11名が参加して行われた。本分科会ではまず参加者の間で簡単な自己紹介 (10分) が行われた後、話題提供として、北川秀樹氏(龍谷大学)により「中国における環境研究-フィールド調査―インタビュー、ワークショップ―」という題目での研究発表 (70分) がなされ、質疑と参加者全体での情報交換が20分程度、さらに科研費の運用等についての質問事項のとりまとめが10分程度で行われた。

 北川氏の研究発表では、大きく同氏が中国の諸地域で行っている環境ガバナンスに関する調査研究、NPO法人として行っている植樹活動についての紹介と、中国での調査研究上の問題が報告された。調査研究とNPO法人として行っている活動については、中国における環境問題の概要と、その対策として2000年代から本格的に開始された、環境保護法をはじめとした一連の法整備、環境アセスメント実施の厳格化、市民やメディアによる監督の重視と情報公開の進展、法律の拘束力強化と厳罰化といった施策が紹介され、市民の監視と機密保持という中国政府の環境保護政策の二面性が論じられた。中国の法、とりわけ行政法規、政策、内部文書等は、その内容と解釈を確認することが報告者の専門である法律の面からも難しい場合もあると云うことは少なからず驚きであった。

 また、中国での調査研究上の問題としては、氏がこれまでに行ってきた調査研究にあたり直面してきた問題と、氏が調査研究を円滑に進めるために行ってきた対応策、具体的には、中国側に連携先となる研究者ないし研究機関を求め、共同研究の形式をとること、調査に当たっては事前に連携先となる研究者・研究機関を通じて関係政府機関に調査許可をとること、調査は日本側でなく、連携先の研究者ないし研究機関を主体として実施するよう委託し、事後にデータを共有する形式をとること、成果公開に当たっては中国側の機密情報に配慮すべきである、といった対応策が紹介された。

 北川氏の報告に続いて行われた参加者全体による情報交換では、専門領域、調査地域の異なる参加者のそれぞれから、自身の調査研究の遂行にあたっての問題と、調査研究を円滑に進めるための方策、成果公開にあたり注意すべき事柄が紹介され、参加者全体での情報交換が行われた。

 本分科会で討論された、調査研究に当たっての問題は中国で調査研究をする研究者が分野を問わず共通して直面する問題であり、調査研究を巡る状況は常に変化するため、円滑かつ安全な調査研究を行うためには常に最新の状況を知っておく必要がある。本分科会は参加者全員が問題意識を共有し、活発な情報交換が行われた点で十分に意義のあるものであったといえる。


(報告: 児倉 徳和(AA研))