海外学術調査フォーラム

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    座長岡本 正明(京都大学東南アジア地域研究研究所)
    髙樋 さち子(秋田大学教育文化学部)
    情報提供講師石川 隆二(弘前大学農学生命科学部)
    タイトル「熱帯島嶼地帯における植物調査と研究サンプルの輸入などの取り扱いについて」

     情報提供者である弘前大学の石川隆三氏は「熱帯島嶼地帯における植物調査と研究サンプルの輸入などの取り扱いについて」発表を行った。近年名古屋議定書締結に伴い、遺伝資源(生物サンプル)の持ち出しや持込みが厳しく禁止されるなかで、国外の研究機関といかに協働しながら、研究を続けてゆくことが可能かを、具体的な経験談を交えながら紹介した。

     現地では何の価値も無いと思われていた植物が、欧米で研究されることで、多くの利益を生む資源であることがわかる事例もある。マダガスカルの植物を用い米国で開発された抗がん剤もその一例であるが、その利益をマダガスカルに還元していないことが問題となる。そうやって各国共通のルール作りが進んだが、互いに利益がでるようなやり方をとることが課題となる。なお役所の手続きも煩雑となるが、相手国にカウンターパートの研究者をたてて、その人を通じて現地の役所の手続きをやってもらうことが現実的には最も良い方法であることも指摘された。

     また、植物の移動の禁止は、病気や害虫の流入を防ぐという目的もある。発表では、実際に植物を持ち込んだときには、日本でどのような手続きを要求され、また研究環境にどのような制限が加えられるのか具体的な事例から説明があった。

     植物の持ち出しや持込みは、多くの参加者が関心を寄せていた話題であり、質疑応答も活発に行われた。インドネシア、マレーシアなど隣国でも異なる役所の手続きの特徴や条件の厳しさの違いなどの情報が持ち寄られた。また、DNAだけを持ち帰るという研究方法も可能であるものの、持ち出さずに、現地の研究所で研究することの利点も様々に指摘された。現地に人を派遣するか、研究を一部委託するのか、現地で研究室を借り上げるか、といった協働のありかたや、現地の機械を使用させてもらうか日本から持ち込むのか等について、参加者それぞれが意見や助言を述べ国際共同研究のよりよいあり方についての活発な議論がなされた。


    (報告: 吉田 ゆか子(AA研))