海外学術調査フォーラム

2016(平成28)年度 海外学術調査フェスタ 出展者一覧

カメルーン熱帯雨林地域の森林保全と農業開発の融合モデル

研究代表者:荒木 茂(京都大学アフリカ地域研究資料センター)

研究分担者/共同研究者:市川 光雄、舟川 晋也、平井 將公、塩谷 暁代、パパ・サリオウ(京都大学)、戸田 美佳子(国立民族学博物館)

カメルーン南部・東南部の森林地帯では、炭素源確保、生物多様性保護のために土地の囲い込みが行われ農耕民、狩猟採集民は、これまでの慣習的な土地利用が制限されつつある。その一方で、サバンナ・森林境界地域では、民間の投資を促進する大規模農業開発が計画されている。この相反する土地利用政策が内包する矛盾を解決するために、土壌植生物質循環、非木材森林産物の利用、小農をベースにしたキャッサバ改良品種の導入の観点から総合的に解析し、国際的非難の矢面に立たされている焼畑移動耕作の集約化と森林保全の両立を可能とするモデルを提案する。

経費名:JST/JICA・SATREPS

スリランカの農園地域の母子保健の向上 A.Senの潜在能力アプローチに基づく研究

研究代表者:磯邉 厚子(聖泉大学)

研究分担者/共同研究者:植村 小夜子(佛教大学)

潜在能力アプローチは本人が価値をおく生を生きるうえで不可欠な諸機能(行い、在りよう)の達成可能性に着目する。スリランカの農園地域での調査では妊婦のやせや低出生体重児、5歳未満児の低体重や発育阻害が高率にみられた。同時に教育やインフラの低水準、地域資源の分配の偏在等がみられ、母子の福祉(well-being)の機能が乏しかった。母子の課題解決には、最低限保障されなくてはならない人の基本的能力と積極的、自立的に関与していく政治や社会参加、保健や教育、雇用アクセス等、母子の諸資源を確保する機会の保障(自由)が必要である。即ち母子の自立的な機能を含めた公共政策と社会的環境が母子の機能の達成に必要である。

経費名:文科省日本学術振興会

発生源地域におけるアジアダストと環境レジームシフトの国際共同研究

研究代表者:甲斐 憲次(名古屋大学・大学院環境学研究科)

研究分担者/共同研究者:杉本 伸夫(国立環境研究所)、牧 輝弥(金沢大学)、星野 仏方(酪農学園大学)、竹見 哲也(京都大学)

近年、アジア内陸部の砂漠化とアジアダスト(黄砂)の発生、それらと共に飛来するバイオエアロゾルやPM2.5 などが国際的な環境問題を引き起こしている。本研究の目的は、モンゴルと中国の研究機関と共同して、アジアダストの発生とそれに関わる環境レジームシフトのメカニズムを解明することである。本研究では、大気圏・土壌圏・水圏・生態系の準不可逆的な変化を環境レジームシフトと呼ぶ。新たな試みとして、バイオエアロゾルを環境レジームシフトのマーカーとして用いる。現在進行中のJSPS 研究拠点形成事業の研究拠点ネットワークを活用し、発生源地域のモンゴルと中国および風下側の北海道・能登半島等で集中観測を実施する。

経費名:科研費・基盤研究(A)(海外学術調査)

関連URL:http://env728.env.nagoya-u.ac.jp/asiandust-ERS/

アジア諸国で分離される薬剤耐性グラム陰性細菌の分子疫学

研究代表者:切替 照雄(国立国際医療研究センター)

多剤耐性菌の新興が地球規模で医療の安全を脅かしている(WHO, 2014)。ミャンマーの医療施設では多剤耐性菌の蔓延が危惧されているが、その実態は全く明らかになっていない。多剤耐性菌の監視および解析のための研究拠点を構築することは、ミャンマーの感染対策の最重要課題の一つである。本研究ではその第一歩として、ミャンマーの国立衛生研究所(National Health Laboratory)およびヤンゴン総合病院(Yangon General Hospital)と共同で多剤耐性グラム陰性細菌の分子疫学解析を実施する。本発表ではこれまで、本研究者らがベトナム、ネパールでの分子疫学調査の結果及びミャンマーでの研究活動状況の進捗を報告する。

経費名:科学研究費補助金 基盤研究(B)

日本人睡眠時無呼吸症の顕在化の真相:コーカソイドとの比較による実証的研究

研究代表者:對木 悟(公益財団法人神経研究所)

研究分担者/共同研究者:田賀 仁(昭和大学医学部)

閉塞性睡眠時無呼吸症(Obstructive Sleep Apnea; OSA)患者では健常者に比較し、上気道の解剖学的バランス(上下顎の大きさに対する舌の大きさ)が崩れ、上下顎の大きさに対し舌の大きさが相対的に大きい状態を呈している。言い換えると、OSA患者では「口の中が窮屈な状態」となっている。本研究では、日本人OSAでは白人OSAに比較し、小下顎が主因で解剖学的バランスが崩れているという仮説を設定した。両人種のレントゲン写真を用いた現在までの解析結果では、当初の仮説と異なり、日本人OSAが白人OSAに比較して小下顎傾向を有するというエビデンスは得られず、さらに両人種の解剖学的バランスに有意差はみられていない。これはOSAの解剖学的バランスが崩れている点は人種を問わず一致してみられる現象であり、さらにこのバランスが同程度崩れている点は、OSA発症率が両人種でほぼ同じである理由を一部説明しているのかもしれない。現在、両人種の歯列模型(歯型)を用いて引き続き仮説を検証している。

経費名:科学研究費補助金 基盤研究(B)海外

ネオ・リベラリズムの進展とアジア化するオーストラリア社会に関する人文地理学的研究学

研究代表者:堤 純(筑波大学生命環境系)

研究分担者/共同研究者:吉田 道代(和歌山大学観光学部)、葉倩瑋(茨城大学人文学部)、筒井 由起乃(追手門学院大学国際教養学部)、松井 圭介(筑波大学生命環境系)

本研究は,現代オーストラリアを理解するため,ネオ・リベラリズムの進展に伴い急速に多様化する都市社会形成のプロセスを実証的に解明することを主眼とした。移民の増加やエスニックグループの住み分けの進展は当初の予想以上に進んでいることが明らかとなった。また,中国を強く意識した貿易の構造変容についても,とくに西オーストラリア州における資源輸出産業を事例に明らかにした。観光化の進展についても重要な切り口であり,都市観光のほかウルルを目指す観光客の属性やその特徴の分析から,観光産業の持続性と脆弱性について明らかにした他,その考察の過程において,観光の推進と抑制の相克についても学術的な問題を投げかけた。

経費名:日本学術振興会科学研究費基盤研究B(海外学術)

津波被災後の高齢者の外傷後成長と認知症に関する学際的研究-老いの成熟を目指して

研究代表者:野村 亜由美(首都大学東京)

研究分担者/共同研究者:増田 研(長崎大学)

2004年スマトラ島沖地震による津波被害を受けたスリランカ南東部において、60歳以上の男女200名を対象に、被災によるPTSD/PTGI(外傷後成長)と認知症の関連について調査を行っている。現在までに明らかになったことは、津波が原因となる体調不良はなく、糖尿病や高血圧、眼疾患、膝痛など非感染性疾患の訴えが多いこと。津波被災地域の人々は、被災しなかった地域の人々よりPTSDの割合が高い(不良)こと。認知症の簡易テストMMSEでは当該地区の高齢者の1/4に疑いがあるものの、医師から診断を受けたことがないこと。MMSEの得点が高い(良好)人はPTGIの得点が高いことである。今後、地域の中で高齢者がどのような生活を送っているのか、聞き取り調査を行っていく。

経費名:日本学術振興会

関連URL:https://kaken.nii.ac.jp/en/grant/KAKENHI-PROJECT-25305025/

海外学術研究「中国東北地方の悪性腫瘍の発症要因の学術調査(H13-22)」の研究成果の展開と次なる研究計画

研究代表者:蓮井 和久(鹿児島大学)

研究分担者/共同研究者:原 博満、金蔵 拓郎、河野 嘉文、久保田 龍二、出雲 周二(鹿児島大学)

我々の海外学術調査では、中国東北地方の鼻悪性リンパ腫の検索を、細胞死の解析する免疫組織化学を開発確立して、実施した。その確立し特許化した方法の一つは、腫瘍細胞の標識するSurvivinの免疫組織化学であり、現在、近年、関東にて多くの発症を見ている成人T細胞白血病の早期診断方法の確立に導入している。また、その解析した悪性リンパ腫の組織構成から腫瘍細胞と間質細胞の相互関係から近年実用化されている次世代シーケンサーを用いた解析研究を計画している。この計画は、組織細胞レベルで解析遺伝子を対比的に解析するもので、未だ報告のないものであり、有意義な成果が期待できると思っている。

経費名:日本学術振興会(応募予定)

関連URL:http://www.ab.auone-net.jp/~khasui/

日本-アフリカ大学連携ネットワーク:大学間ネットワーク構築によるアフリカ諸国との組織的学術交流推進に向けた取組

研究代表者:森尾 貴広(筑波大学)

日本・アフリカ大学連携ネットワークは、アフリカ諸国との双方向学生交流を含む学術交流支援の拡大を目的とした、当該諸国との学術交流に関心を持つ日本の大学が自由に参加できるオープンなネットワークであり、以下の活動を進めている。

  • アフリカにおける各参加大学の現地拠点および人的ネットワークの相互利用の促進による、参加大学の学生・教職員の現地における活動の便宜の拡大。
  • 学術交流に関するアフリカ側のニーズおよび日本側が持つ教育研究資源の共有とマッチングの協働による学術交流の機会の拡大。
  • 学術交流を通したアフリカの発展への貢献のための施策に関わる機関に対する提案と実施。

経費名:大学経費

関連URL:https://jpafacadnet.wordpress.com

第三の極における強太陽光照射が有害物質長距離輸送に与える影響評価研究

研究代表者:山下 信義(産業技術総合研究所)

中東、インド、ヒマラヤ、チベット、中国、韓国、台湾から日本まで、、「第三の極」を含む「アジアベルト地帯」での有害物質の大気経由長距離輸送現象を明らかにするための多国間国際共同研究を行っている。特にPM2.5の本当の起源である中東・インド砂漠地帯とヒマラヤ・チベット高山での困難な現地調査を可能にし、一般に東アジアしか研究対象としていないPM2.5研究領域に一石を投じる研究成果を達成した。また薬剤耐性菌パンデミックに関する調査等、多数の研究成果・国際誌報告が得られている。本研究遂行のために大きく貢献したISO25101・大気中全マトリクス捕集装置等の新規調査技術や現地研究体制に関して、国内外に広く共同研究申し込みを受け付けている。

経費名:科研費海外学術A

関連URL:https://unit.aist.go.jp/emri/



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