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  • VII サハラ以南アフリカ
  • VII サハラ以南アフリカ

    座長曽我 亨(弘前大学人文学部)
    河合 香吏(AA研)
    情報提供講師藤岡 悠一郎 (東北大学学際科学フロンティア研究所)
    タイトル「ナミビア北部における気象災害と農業」

     サハラ以南アフリカ分科会では、地理学を専門とする藤岡悠一郎氏(東北大学)から情報提供を受けつつ、生態人類学、文化人類学、社会人類学、財政・公共経済学、言語学、歴史学、民話研究などを専門とする10名の参加者により、多岐にわたる議論が行われた。

     まず藤岡氏から「ナミビア北部における気象災害と農業」というタイトルの報告が行われた。アフリカ大陸では、一方では干ばつ、他方では大雨・洪水という極端な気象災害が頻発している。藤岡氏が参加する研究プロジェクトの目的は、ナミビアをはじめとする半乾燥地において安定的な食料生産を可能にする農法を開発・導入することである。とりわけ国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機構(JICA)の支援を受けて実施されている地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム「半乾燥地の水環境保全を目指した洪水-干ばつ対応農法の提案」においては、「洪水と干ばつが頻発する不安定な水環境でも、あるがままの水環境を最大限に利用することにより、一定の穀物生産が常に得られる新農法を提案」するという目的のもと、「季節湿地を活用し、在来作物であるトウジンビエと新規導入作物であるイネとの混作による新しい農法」を開発するという取り組みが進められている。本報告においては、調査地ナミビア北部の概要、調査実施のために必要な手続きと注意点、具体的調査手法とその成果などについて詳しい紹介が行われた。

     つぎに参加者から質問・コメントが提出された。主要な論点のひとつは、トウジンビエとイネの混作という新たな農法にたいし地元住民がいかなる反応をしめしたかという点である。新農法の導入に積極的な篤農家の役割の重要性が指摘される一方で、農法普及のためにワークショップを開催した場合、女性の方が継続的に参加する傾向があること、これは男が牧畜を担い女が農業を担うという性別分業に由来していることなどが論じられた。ほかにも、新たな農法が導入される小湿地が従来どのような用途に使われていたかという点(飲み水等の確保や家畜の放牧などに用いられていた)や、新たな農法に先行する在来農法がいかなるものだったかという点(ソルガムとの混作などが行われてきた)、カウンターパートである地元の大学に対する住民の認識は本プロジェクトを通じて変化したかという点(幅広く認識されるようになったが大学と地元住民の距離が今後どうなるかは未知数である)などをめぐり、活発な意見交換が行われた。


    (報告: 佐久間 寛(AA研))