海外学術調査フォーラム

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  • IV 南アジア・西アジア・中央アジア・北アフリカ
  • IV 南アジア・西アジア・中央アジア・北アフリカ

    座長近藤 信彰(AA研)
    錦田 愛子(AA研)
    情報提供講師地田 徹朗(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター)
    タイトル「中央アジア・アラル海の過去・現在・未来」

     南・西アジア・北アフリカ分科会は、近藤信彰教授・錦田愛子准教授(ともにAA研)を座長として開催された。AA研所員も含めて参加者19名がまず自己紹介を行い、その後北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの地田徹朗助教により、話題提供が行われた。

     「中央アジア・アラル海の過去・現在・未来」と題する報告において、ソ連史を専攻している話題提供者がアラル海問題という環境(史)にかかわる分野に取り組むようになった経緯から始まって、「災害」を引き起こしているアラル海の容量激減の歴史的背景、フィールドワークに基づくアラル海問題の現状、さらに今後の展望まで密度の濃い内容が語られた。

     情報提供者のアプローチは史資料の分析に加え、現地調査で得られたオーラルヒストリーをもあつかっているところに特徴がある。報告の要点として、アラル海問題発生のプロセスを考察する上でグローバルな視点が必要であること、アラル海縮小の根本的な原因はソ連期の灌漑農地拡大・非効率な水資源利用にあること、ソ連期のいくつかのミスフィット(時間的、機能的(行政機関間の管掌のずれ)、空間的(上流と下流の意識の違い))により問題解決への取り組みが遅れてしまったことが挙げられる。

     さらに報告タイトルに即した形で、アラル海問題の過去(ソ連期の「自然改造」理念とその実践)、現在(とくに北部(カザフスタン側)における漁業復活の現状を現地調査)、未来(当該地域の持続可能な発展、災害復興に向けて)それぞれに対する情報提供者自身の取り組みについて解説があった。また自らの2013年以降のフィールドワーク(カザフスタン、ウズベキスタン)について、カウンターパートとの関係構築、現地での苦労なども含め、貴重な体験を聞くことができ、興味深い報告となった。

     報告に対しては、流量確保のための技術、国際関係上の利害対立、国際社会の支援、現地調査の方法などについて質問が寄せられ、文理を問わず活発な質疑応答が行われた。さらに、報告を呼び水として、参加者各自のフィールドワークにおける苦労・障害(治安状況)などについてそれぞれの体験を共有して、今後の海外調査の参考とすることができ、終了時間まで議論は尽きることがなかった。


    (報告:野田 仁(AA研))