海外学術調査フォーラム

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  • II 島嶼部東南アジア・太平洋
  • II 島嶼部東南アジア・太平洋

    座長岡本 正明(京都大学東南アジア研究所)
    髙樋 さち子(秋田大学教育文化学部)
    情報提供講師太田 寛行(茨城大学農学部)
    タイトル「インドネシア・火山噴火被災地での微生物生態調査」

     情報提供者である茨城大学の太田寛行氏は「インドネシア・火山噴火被災地での微生物生態調査」と題して、発表を行った。インドネシアのムラピ山を事例に、噴火によって一度リセットされた状態になる土壌から、緑の大地が生まれるまでのプロセスの中で、どのような微生物がどのような働きをしているのかを明らかにする研究が紹介された。これは、火山周辺のエリアのうち、まだ植物がないところ、すこし植物が出始めているところ、森林がある個所など、様々な異なる状態にある土壌のサンプルを分析することで、どの時点でどのような微生物が多く含まれているのかを調査するものである。

     なお、この調査は、インドネシアのガジャマダ大学と共同で行われている。研究内容の発表に加え、調査の過程で行われる学生間の交流の事例、特にガジャマダ大学と茨城大学の間に開設されたダブル・ディグリーのプログラムの詳細も報告された。これは、学生が一年ずつ相手の大学に留学し、二年間で両方の大学に修士論文を提出するプログラムである。時間的にかなり厳しいものの、無事修了した学生も多くいる。

     また、研究資料として土壌をインドネシア国外に持ち出す上での、具体的な手続きのプロセスや、直面する困難についても紹介された。一か月前には申請書を提出し、インドネシア側の大学の証明書も添付する必要があり、帰国後の処理の状態も検査される。

     ディスカッションでは、報告された留学プログラムにも活用できそうな、インドネシアへの留学で日本人学生が応募できるINPEXの奨学金の情報が寄せられた。INPEXの方からも是非応募をとの呼びかけがあったとのことである。

     また、土壌の持ち出しに関しては、名古屋議定書が制定されて以来、特に厳しくなっており、現在ではさらなる対策が必要となる可能性が参加者から指摘された。インドネシア国内の大学に依頼して解析しているという事例や、DNAを抽出してから帰国するといった対策の情報も寄せられた。

     またディスカッションの後半では、東南アジア地域の懸念事項である、テロによる治安の悪化が話題にのぼった。参加者たちの発言からは、渡航是非に関する、大学側の規則も多様であることがわかった。互いに現地で感じている治安の状況などを話し、情報共有が行われた。


    (報告:吉田 ゆか子(AA研))