海外学術調査フォーラム

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    座長伊藤 元己(東京大学大学院総合文化研究科)
    西井 凉子(AA研)
    情報提供講師田中 伸幸 (国立科学博物館)
    タイトル「ミャンマーにおける生物多様性調査」

    参加者の自己紹介に続き、田中伸幸氏(国立科学博物館)に「ミャンマーにおける生物多様性調査」と題して情報提供を頂いた。要旨は以下の通りである。


    ミャンマーは、東南アジア大陸部で最も生物調査が遅れている地域の一つである。国立科学博物館ではミャンマー天然資源環境保全省と5年間の研究協定を締結し、18名の館内研究者と複数の館外共同研究者とともに同国の遅れている動植物相の解明を行うこととなった。生物調査が困難な同国において、研究協定書の締結にいたる過程、実際の調査を行うロジスティックを中心に、主として(1)ミャンマーの自然環境、(2)手続きの手順と方法、(3)カウンターパートについて情報提供を行った。南北に長い国土とそれ故の多様な自然環境について簡単に全体像を紹介した。政府との間で国際協定を結ぶための必要な手続きとその手順について、実際の科博の協定を例にして、時系列にミャンマー国内での決裁の流れを説明した。また、研究締結後の調査のロジスティックについて説明した他、標本の輸出許可の申請の方法、同国政府から要求される報告書の作成についても実例とともに示した。調査実例として、6月に実施した半島部のタニンタリ国立公園予定地やレニヤ国立公園予定地での第1回目の調査の様子をスライドで紹介した。タニンタリ地方は、英領時代にここを基準産地として多くの種が記載されたが、その後入域ができなくなったため、その多くが実態不明のままである。植物では、花木の女王と呼ばれるマメ科のAmherstia nobilisは、約190年前にこの地域から発見されたが、これまで2回しか自生が見つかっていない。半島南部は、長い間KUN(カイン民族同盟)の管理下にあり、中央政権との対立時に埋められた地雷が数多く残存しており、それが森林内での調査を困難にさせていた。最後に、共同研究のカウンターパートとなる研究所と重複標本を所蔵する現地の国立の標本館とその状況について紹介し、ABS(生物資源アクセスと利益配分)に則った生物資源の国際研究における研究面での支援の体制(資材、旅費、人材育成など)と必要性を示した。


    (報告:塩原 朝子(AA研))