海外学術調査フォーラム

2015(平成27)年度 海外学術調査フェスタ 出展者一覧

地球史海底断面復元プロジェクト

研究代表者:清川 昌一(九州大学地球惑星科学部門)

研究分担者:伊藤 孝(茨城大学)

地球環境を復元するときは,現在地球の7割をしめる海洋底の堆積物が有効である.我々は時代を超えた海洋底堆積物を探しだし,数十億年前の海底環境・地球表層環境の復元や変動を明らかにしようとしている.

経費名:科研A(海外)
関連URL:http://archean.jp/

スリランカ・農園地域の母子の栄養不良-潜在能力アプローチに基づく研究

研究代表者:磯邉 厚子(聖泉大学)

2014年8月スリランカの農園地域・ヌワラエリヤ県の農園で働く母親のために子どもを預かる託児所にて5歳未満児の身長及び体重を計測しWHO-CGSにて評価した。0-59ヵ月迄の子ども(n=225)のWFA(年齢相応の体重)では65人(29%)が低体重であった。HFA(年齢相応の身長〉では、87人(41%)が低身長であった。24ヵ月-59ヵ月迄の子ども(n=174)では、WFAは53人(30%)であり、HFAは58人(34%)が低身長であった。2歳を過ぎても3人に1人は低体重であった。WFA 及びHFA共に女児のほうが男児より低体重及び発育阻害性の栄養不良であった。71人(31%)が低出生体重児であり、そのうち低体重が32人(45%)おり、いまだに低体重が持続していた。WFH(消耗症)は18人(11%)で国の平均よりやや低いが、総合的には慢性的に蓄積した栄養障害がみられ早急な対策が必要である。科研費No.23401016の助成によるものである。

経費名:基盤B(海外)

表情認知は普遍的か文化依存的か:携帯タブレットを用いたフィールド実験による検証の試み

研究代表者:高橋 康介(東京大学)

研究分担者:大石 高典(地球研)・島田 将喜(帝京科学大学)

本発表ではカメルーンの狩猟採集民バカ人を対象に行ったタブレット端末による認知心理学実験について報告する。表情認知がユニバーサルか文化依存かという問題は古くから議論されている。本研究では本物の顔写真やエモティコン(顔文字)を呈示して、表情がどの程度Happy(Sad)に見えるかという表情判断課題を実施した。その結果、バカ人は本物の顔に対しては表情認知が容易であったが、エモティコンに対しては表情判断が困難であった。本物の顔とエモティコンでは表情判断過程に乖離があり、一部の表情認知の文化依存性が示唆された。またフィールド調査でのタブレット端末を用いた認知心理学実験の有効性が確認された。

経費名:JSPS科研費(25700013 to 高橋・26870297 to 大石・26284138 to 島田)

ガーナ共和国の野生動物・家畜におけるクラミジア分布調査とゲノム多様性

研究代表者:大屋 賢司(岐阜大学応用生物科学部)

研究分担者:福士 秀人・高島 康弘(岐阜大学), 中尾 亮(北海道大学), 村山 美穂(京都大学)など

我々は、ガーナ共和国の各種動物における病原微生物の分布調査を行っている。その中でも、クラミジアを主な調査対象としている。クラミジアは、鳥類・哺乳類・人まで多様な宿主域・病態を示し、医・獣医領域において重要な菌種が多い。人や家畜の感染症の原因となるクラミジアが、自然界においてどのような動物に保有されているかを把握することは、公衆衛生、家畜衛生上重要である。ガーナ内陸部の山麓において、野鳥、集落で飼育される家畜(鶏、羊、山羊)の調査を行い、いずれの動物からもクラミジアの高い陽性率が認められた。クラミジアが多様な宿主に適応する過程の一端を明らかすべく、詳細な解析を現在進行中である。

経費名:科学研究費補助金 基盤B

世界中の関心を持つ人々が参照できるデポジット制度の情報整備

研究代表者:沼田 大輔(福島大学)

リユース(再利用)やリサイクル(再資源化)を促すための、使用済み製品の回収のための仕組みの一つとして、デポジット制度と呼ばれる仕組みがある。この制度の導入例は世界各国に様々にあるが、それらの導入の具体的な仕組みなどの情報は共有されているとはいいがたい。一方、発表者はこれまでこのデポジット制度の具体的な仕組みについて、日本を起点に、ヨーロッパ11カ国と北米の様々な州で、関係者にヒアリングを重ねてきた。本発表は、これらの調査で得た成果の例を紹介する。そして、デポジット制度について、世界中の関心を持つ人々が参照できる情報を整備しようとするものである。

経費名:科学研究費補助金(若手研究B)

ポスター

農業開発に有効な社会経済的仕組みの解明:モザンビークのケースについて

研究代表者:新海 尚子(名古屋大学大学院国際開発研究科)

研究分担者:浅川 晃広(名古屋大学大学院国際開発研究科), 光安アパレシアダ光江(浜松学院大学)

平成26年度は、もう一つの研究対象国であるモザンビークで関連省庁、JICAモザンビーク事務所などの主要国際協力機関、コミュニティ、農家に対して現地調査を行なった。2010年度に実施されたJICA研究所でのモザンビーク北部小規模農家調査も参考にしながら、実施した調査の第一次的結果につき報告する。その結果、北部モザンビーク4州においては多次元貧困指標でみると2000年以降やや減少傾向にあるが、住民のほとんどが小規模の自給的農家でありサブサハラアフリカ平均値や国内平均値と比較すると貧困の度合いは大きく、特に指標の構成要素のうち、教育、および生活水準構成要素の電気のアクセスが阻まれている度合いが大きいことが明示された。

経費名:科学研究費補助金、基盤研究B、海外学術調査

タイのラヨーン地域に日本の健康教育を導入した成果について

研究代表者:寺沢 宏次(信州大学)

研究分担者:藤森 聡美(信州大学)小林 敏枝(清泉女学院短期大学), 張 勇(長野県短期大学), 中島 弘毅(松本大学), 中出 敬介(信州大学), 村田 祐基(信州大学), Suchinda Maruo Jarupat(Mahidol University)

日本の長野地域で行っている健康教育をタイのマヒドン大学と共同研究としてタイのサラヤ地域及びラヨーン地域に導入してきた。本健康教育は、地域行政と大学機関の連携により、若年シニアの育成を目的とした健康教育プログラムに認知症予防を取り入れ、取り組みの様子・結果を図表化し “見える化”している。我々は、このような根拠に基づいた包括的な健康教育プログラムを実践し、対象者のお互いが思いやりを持ちながら健康教育に取り組んでいけるようにな仕組み作りを行ってきた。また本健康教育は2014年10月にISO9001を取得したことより、今後は高齢化問題に直面するアジア諸国にISOとしての健康教育を普及し、国際貢献していくことを目的としている。

経費名:日本学術振興会

東南アジアにおける水銀利用による環境汚染の回復と持続的産業発展に関する研究

研究代表者:高樋 さち子(秋田大学教育文化学部)

研究分担者:王 効挙(埼玉県環境科学国際センター)

In South East Asia, there are many artisanal and small-scale gold mining (ASGM) conducted by local people who do not have sufficient knowledge and awareness on the hazard of mercury use to the environment and human health. These ASGM use large amount of mercury, and all of the mercury used was usually directly release to the environment, causing serious environmental pollution of mercury. The objectives of this research are to reduce the environmental pollution of mercury and promote the sustainable development in the ASGM areas of South East Asia through education to the miners and application of low cost, low risk and eco-friendly technologies.

経費名:日本学術振興会 基盤B(海外学術調査)

キルギス共和国における溶連菌感染ならびにその合併症であるリウマチ性心疾患/リウマチ熱の現状-9年間のフィールド調査の経過について

研究代表者:中島 利博(東京医科大学 医学総合研究所)

研究分担者:Nazgul A.Omurzakova(Senior Research Assistant of Rheumatology Department of NCCIM,PhD), 八木下 尚子(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター 病因 病態解析部門), 三浦 直樹(鹿児島大学学術研究院農水獣医学域獣医学系), 川原 幸一(大阪工業大学工学部 教授), 西 順一郎(鹿児島大学 医歯(薬)学総合研究科 教授)

キルギス共和国では我が国では発症率が人口10万人当たり0.5人以下とほとんど診ることのなくなったリウマチ熱がペレストロイカ後、急増し未だに猛威を奮っていることを見出した。さらに、顕在化しないリウマチ性心疾患が、その他の要因とともに当該地域での死因の過半数を占める心不全の潜在的リスクファクターであることを報告した。この状況を改善するため、2006年より小児リウマチ医の留学受け入れ、4度の現地調査と800人を超えるA群β溶連菌感染の細菌学的検査、論文化・国際シンポジウムの開催など情報発信、さらに迅速診断キットの許可の法整備、母子手帳、医師向けプロトコールの作成と頒布などこの問題に対する主導的役割を担ってきている。

経費名:日本学術振興会

危機言語:満洲語の復興実態-中国遼寧省本溪市本溪満族自治県に関する調査報告-

研究代表者:包 聯群(大分大学 経済学部 経済学研究科)

本研究は、満洲人が最も集中し居住する地域でありながら、満洲語母語話者がいない中国遼寧省本溪市本溪満族自治県を研究対象とする。当地域の満洲語(「書き言葉」)の習得プロセスを観察し、学校教育における中国語の音表記(例えば、字母の「bū」を「bao」(苞)と教え、間違った発音が継承されている実態)を基準とする満洲語教育を改善し、至急現場指導を行い、教材の開発に携わる必要がある。また、政府が満洲語の再活性化運動に取り組んでおり、それが満洲語の復興にどのように繋がっていくかについて追跡調査を行い、報告する。そしてFishman(1991)が提唱した「逆行的言語シフト諸段階」の理論枠組の適応性を検討し、日本を含むアジアの危機言語の継承や復興に貢献する。

経費名:応募予定(基盤研究B 海外学術調査)

アジアの市場経済移行国における資源開発ガバナンスの諸問題

研究代表者:中野 亜里(大東文化大学)

研究分担者:村尾 智(産業技術総合研究所)

報告者らは、2011~2013年度および2014~2016年度の文科省科研費補助金を得て、国家計画経済から市場経済に移行したアジア諸国の資源開発について、良きガバナンスのあり方を追求している。具体的事例として、ベトナム中南部高原におけるボーキサイト開発について、現地住民や有識者の意見を聴取し、また関係省庁のスタンスを検証してきた。ガバナンスとは元来、西洋諸国で形成された概念だが、アジアの市場経済移行国に適切なガバナンス・モデルというものがあるだろうか。このような問題意識に立ち、これまでの事例研究の報告を通して、ベトナムをはじめとするアジア諸国の資源開発の諸問題を明らかにする。

経費名:文部科学省科学研究費

3次元映像による記録と表現-ヒマラヤをめぐり展開された密教工芸の造形と表現の研究-

研究代表者:服部 等作(広島市立大学)

研究分担者:中野 照男(成城大学), 奥山 直司(高野山大学), 森 雅秀(金沢大学), 柴田 隆史(東京福祉大学)

本研究は、ヒマラヤ山系周縁各地の宗教と文化的基層をフィールド調査により解明することを目的としている。調査対象は、信仰の場となる点(拠点の寺・聖地)-線(巡礼路)-面(文化圏)であり、2015年2月の調査は、チベット寺院と村人の新年祈願祭(モンラム)における造形(伽藍と美術)と表現(祭祀儀礼-芸能)を対象とした。本発表は、中国青海省黄南蔵族自治州同仁県のモンラムの宗教行事、仏画開帳、法舞、民間信仰の様子を、3次元映像でデジタルアーカイブ化して再現するための検討の一部である。情報量と臨場感が豊かな3次元映像は、少数民族の文化伝統と現状の保存に有効であると考えられる。

経費名:科学研究費・基盤研究(B)海外学術調査(課題番号:26300017)


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