海外学術調査フォーラム

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    座長伊藤 元己(東京大学大学院総合文化研究科)
    梅崎 昌裕(東京大学大学院医学系研究科)
    情報提供講師仲上 健一(立命館大学/東京大学)
    タイトルメコン河の流域開発とベトナムの持続的発展

     情報提供者の仲上健一氏は「メコン河の流域開発とベトナム持続的発展」と題して、土木工学的手法でサステナビリティ、気候変動、水資源、環境政策などにアプローチしてきた調査研究からの知見について述べた。

     おもにベトナムにおける共同研究について、これまでの長年にわたる調査経験から、人的交流の重要性や、現地の人との付き合い方の秘訣などについての貴重な報告であった。大規模な水資源の調査は、国家戦略ゆえに調査も困難を伴い、長期にわたる関係が必要であるとされた。

     また、メコン流域開発の系譜について1957年メコン委員会(カンボジア、ラオス、タイ、南ベトナム4か国)からはじまり、1990年代に入って冷戦が終結し、カンボジア和平が実現した後、1995年「メコン河流域の持続可能な開発のための協力協定」が調印されて、メコン河委員会(Mekong River Commission)が発足した経緯について概観した。そのなかで、徐々に日本のプレゼンスが落ち、中国が台頭する現実について報告があった。

     2009年に「日本・メコン諸地域国首脳会議」において、日本とメコン地域諸国(カンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス)の6か国の首脳によるはじめての首脳会議が開催され、「東京宣言」と「行動計画」が発表された。今後の日本の役割について、いかに持続可能な経済発展を導くことができるのかが課題であるとした。

     また、調査にあたっての私見として、ベトナムではケチは許されないとして、ベトナムのことわざ「バカは許されるけど、ケチは許されない」を紹介した。調査許可をとることも、半年前から準備、メール1日20通くらい出すと、やっと本気だなと思って、出発3日くらい前にやっと許可が届くなどの苦労話が披露された。その中でも、2-3年ではなく10年、20年というタイムスパンでネットワークを築くことの重要性が強調された。

     仲上氏の発表をうけて、質疑応答も活発に行われ、どんなお土産をもっていけばいいのかなど、参加者同士の情報交換も有意義であった。ちなみに、これまでで喜ばれたお土産として、温度計(1400円くらい)、傘(500円くらい)、100円ショップで手に入る扇子や眼鏡などがあげられた。

    以上。 


    (報告:西井 凉子(AA研))