海外学術調査フォーラム

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  • VI サハラ以南アフリカ
  • VI サハラ以南アフリカ

    座長曽我 亨(弘前大学人文学部)
    深澤 秀夫(AA研)
    話題提供者花渕 馨也(北海道医療大学)
    タイトル「移動のフィールドワーク―コモロ諸島とマルセイユの調査から」

     サハラ以南アフリカ分科会には13名が参加し、話題提供者の花渕馨也氏を中心に議論が行われた。

     会の前半では、花渕氏が「移動のフィールドワーク:コモロ諸島~マルセイユ調査から」と題して話題提供を行った。その内容は大きく4つに分かれ、まず「1. コモロ諸島の調査 classical fieldwork」では、コモロ諸島での調査に関連する基礎的な情報(治安、調査許可、ビザ、カウンターパート、健康管理、調査費用など)と、花渕氏の研究の原点であるムワリ島(コモロ諸島の一島)における精霊憑依儀礼に関する調査の概要が紹介された。次に、2002年から2006年までの調査活動に焦点を絞った「2.周辺地域の調査 transit fieldwork」では、憑依霊のマルチエスニックな世界に着目した花渕氏が、憑依霊のネットワークを辿るという新たな調査テーマに取り組むため、コモロ諸島のみならず周辺のレユニオンやマダガスカル、ザンジバルへと調査地域を広げていった過程が説明された。そして、この周辺地域における調査がそれまでの調査で経験していたような「充実感」を伴わなかったことから、何故そのような事態に至ったのかという原因の分析がなされ、同時に、複数の調査地を対象とする人類学的研究の難しさが論じられた。続いて「3.コモロ~マルセイユ調査 mobile fieldwork」では、フランス・マルセイユのコモロ人移民を主たる調査対象とした2006年から現在までの活動が紹介された。統計資料などを駆使してマルセイユのコモロ人移民の全体像を把握しようとしていた当初の調査が、特定の個人や家族のライフヒストリーおよび現在の生活に焦点を絞った調査へと変化していった点、そして、ムワリ島の同郷組合長との出会いをきっかけに、マルセイユのコモロ人移民と故郷コモロ諸島との繋がりが新たな調査テーマとなっていった点が詳細に説明された。まとめとなる「4.移動のフィールドワークの可能性」では、グローバル化の中のコモロ人社会やアフリカ社会の変化、移民と故郷とのトランスナショナルな関係、フィールドの境界の変容と向き合うためには、複数の調査地にではなく、「移動の中」に生成するアフリカの「文化」や「社会」を再想像しなければならない点が論じられた。

     会の後半では、コモロ人の精霊憑依儀礼、精霊憑依と関連する病気、生活環境の変化と病気との関係性、マルセイユにおけるコモロ人の生活状況、クーデタが頻繁に起こるコモロの政治状況、個人のライフヒストリーを対象とする研究手法、マラリアとその治療薬に関する諸問題、アフリカのごみ問題などについて、参加者の間で活発な議論・意見交換がなされた。


    (報告:苅谷 康太(AA研))