海外学術調査フォーラム

2012(平成24)年度 海外学術調査フェスタ 出展者一覧

北海道大学「持続社会構築環境リーダー・マイスター育成」プログラムの紹介

研究代表者:田中 教幸

発表:田中 晋吾(北海道大学サステイナビリティ学教育研究センター)

アジアやアフリカの諸国で問題となっている環境や社会システムの破壊を解決し、環境に配慮した持続可能な産業の育成と社会システムの構築をリードする「環境リーダー」人材には、現場に関する深い知識と理解、そしてフィールドでの実践経験が求められます。北海道大学では、JICA等の研究プロジェクトや海外協定校との連携により、これらの研究成果やフィールド調査のノウハウの蓄積を利用して、実践力のある環境リーダーを育成しています。今回の発表では、インドネシア、台湾、中国、ブルキナファソの大学と共同で環境リーダーを育成する北海道大学の環境リーダー育成プログラムについてご紹介します。

経費名:科学技術戦略推進費
関連URL:http://www.census.hokudai.ac.jp/strass/

中国農用地汚染土壌における植物を用いた収益型修復技術の確立

研究代表者/発表:王 効挙(埼玉県環境科学国際センター)

近年、土壌汚染は世界共通の地球環境問題であり、その広範囲な汚染土壌の資源としての有効利用と効率的修復手法の確立は重要な課題となっている。そこで本研究では、今まで得られた知見を基に、大きな問題となっている中国農用地汚染土壌を対象として、東部、中西部、東北部の3つの地域で代表的汚染農地の調査と現場試験を行い、バイオ燃料用植物等の活用により、土壌の有効利用と植物修復を同時に実現する「収益型汚染土壌修復技術」を目指す。更に将来は、中国や日本を始めアジア地域の汚染地に、本修復技術をクリーンなオンサイト処理法として普及させ、地球環境保全、食糧確保、バイオ燃料事業の支援、持続可能な社会の構築に貢献する。

経費名:日本学術振興会 基盤研究B(海外学術調査)

境界国家・ラオスの生存と発展:政治・経済・社会のアクターと大メコン圏

研究代表者/発表:武石 礼司(東京国際大学)

2011年度採択の科研費基盤研究B(海外)「境界国家・ラオスの生存と発展:政治・経済・社会のアクターと大メコン圏」は3年間の研究を、東京国際大学、早稲田大学、國學院大学、富山大学、東洋英和女学院大学からの研究者の参加によりスタートさせている。その研究の成果につき発表を行う。

経費名:科研費基盤研究B(海外)

鼻咽頭リンパ腫のマクロファージと樹状細胞環境

研究代表者/発表:蓮井 和久 (鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)

海外学術共同研究(2007-2010)で収集した中国東北地方の鼻咽頭のリンパ腫の標本で、昨年度は酸化とニトロ化DNAの検索結果を紹介したが、今年度は癌微小環境の一つと考えられるマクロファージと樹状細胞の特徴を検索し、鼻型NK/T細胞リンパ腫の組織形成と特徴付けるCD204陽性マクロファージは鼻咽頭粘膜に見い出され、鼻咽頭粘膜の自然免疫に関与するマクロファージ環境がNKTCLでも保持され、鼻型NKTCLは鼻咽頭粘膜固有のリンパ腫であることを示唆することを紹介する。これらの研究成果は、海外のフィールドで症例収集し、国内での検索技術開発とそれによる検索の成果と考える。

経費名:科学研究費補助金(基盤研究(B) 海外学術)と奨学寄付金
関連URL:http://www.ab.auone-net.jp/~khasui/

キューバサパタ湿地において漁獲される移入ヒレナマズの利用

研究代表者/発表:久保田 賢(高知大学総合科学系黒潮圏科学部門)

キューバでは,食糧生産の目的で養殖用にヒレナマズを人為的に移入したが,2001年のハリケーンにより施設がダメージを受け,世界自然遺産候補であるサパタ湿地等の自然水域に流出した。本調査研究では,このヒレナマズの食利用により,資源保全の一端を担えるかどうか検討した。ヒレナマズはキューバ人にとって認知度は高いものの食料としての普及については十分といえない状況であった。サパタ湿地地区における加工の実態は,衛生面と作業効率の面から改善の余地が大きかった。現地でのヒレナマズ肉の製造実演を通じて,関係者の理解が高まるとともに,サパタ湿地地区の地域資源としての活用法について,自発的な検討が始まるに至った。

経費名:科学研究費補助金基盤(B) 海外学術調査
関連URL:http://www.cc.kochi-u.ac.jp/~kubota/cuba.html

法定アマゾン域内の熱帯雨林面積減少に関する経済分析

研究代表者/発表:大瀧 正子(龍谷大学アフラシア多文化社会研究センター)

ブラジル法定アマゾン域内の伐採面積は、ブラジル国立宇宙研究所(INPE)の測定によると、1970年から2008年までに、政府、企業(国内・多国籍企業)、及び農民による農地・牧場地への土地利用形態の変化を通じて、約70万の消失が報告されている。域内の過剰な森林伐採において問題となるのは、森林の多様な機能・サービスが消失し、先住民の伝統的な生活を脅かすのみならず、低所得層の農民の経済活動が制約され、時間を通じて社会的な厚生水準の低下が予測されていることである。本報告では、法定アマゾン域内の森林面積減少の経路について、ブラジルの政治経済政策による影響と、また企業・農民の森林伐採と土地利用の転換の決定についてアマゾナス州マナウス市郊外での聞取り結果も用いて経済的観点から分析する。

経費名:
 2012年度 科学研究費助成事業(科学研究費補助金 研究活動スタート支援)の応募予定。
 2012年度 公益財団法人日本環境教育機構奨学金。
 2012年度 科学研究費補助金 基盤研究(B) 研究分担者。

リモートセンシング技術のREDD+への利用

研究代表者/発表:広瀬 和世(財団法人宇宙システム開発利用推進機構)

途上国の森林減少・劣化による二酸化炭素排出量を削減しようとする“REDD+”メカニズムでは、リモートセンシングの役割、特にMRV(測定・報告・検証)への利用が鍵となっている。そのため、COP15の決議文では、森林のモニタリングについてリモートセンシングと地上部インベントリー情報を組み合わせた手法を用いることと明記された。財団法人宇宙システム開発利用推進機構では、これまでにASTER及びPALSARによるREDD+に活用できる多くの情報を取得しており、現在開発中のHISUIハイパーセンサーでは、さらに詳細な情報が得られると期待されている。

関連URL:http://www.jspacesystems.or.jp/

中国黒龍江省におけるモンゴル人コミュニティーの言語維持・言語継承現状報告

研究代表者/発表:包 聯群(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・フェロー)

本発表は、『中国黒龍江省におけるモンゴル族コミュニティーの言語維持保存や継承復興への取り組み」(課題番号:23401023)の中間報告①となる。即ち、今まで取り組んできた実践活動をまとめたものである。 黒龍江省には凡そ15万人のモンゴル人が居住しているが、日常用語としては、彼らはモンゴル語ではなく、モンゴル語の文法をベースとし、中国語語彙・文法要素を大量に取り入れたコミュニティー言語(混合言語Mixed Language)を使用している。しかし、もし、学校教育でのモンゴル語教育を強化しなければ、以上のようなコミュニティー言語さえ維持できなくなる恐れがでてきている。というのは、多くのモンゴル人(特に若い世代)がすでに言語シフトをし、中国語を母語とするようになっているからである。以上のように、モンゴル人コミュニティー言語さえも危機にさらされており、至急の対応が必要であると考えられる。 本研究は継承言語概念の発信を含め、言語の維持、継承や復興に取り組んできた。本研究においては、「三位一体」(研究教育者、コミュニティー、政府およびその他)の活動が欠かせないことを、ウンドルモンゴル族小学校の事例を通して紹介する。また、本活動を通して、当地域のモンゴル語教育に新たな展開をもたらした成果についても紹介する。

経費名:日本学術振興会基盤B(海外学術調査)

タイ王国における電子商取引の発展モデルに関する研究

研究代表者/発表:岡田 仁志(国立情報学研究所)

本研究は、インターネットの発展が著しいタイ王国を対象として、電子商取引の成長決定要因を実証的に分析しています。チュラーロンコーン大学の学生を対象として、タイ語版のアンケート調査を実施しました。一般的な行動様式を問うための前半部分と、電子商取引に対する利用動向を問うための後半部分から構成され、実際にホテル予約サイトのモックサイトを提示して、電子商取引を利用する際のリスクと利便性について調査しました。タイ王国ではスマートフォンを介したSNSコマースが急速に拡大しているため、スマートフォンの決済方法、およびSNSコマースにおける利用者の技術受容行動についてもヒアリング調査を実施しました。

経費名:科学研究費 基盤研究(B)

短距離無線技術を活用した高度道路交通システムの研究

研究代表者:行松 健一

発表:ラジ・イクバル (Razi Iqbal)(秋田大学大学院工学資源学研究科情報工学専攻 行松研究室)

小型で安価・低消費電力な短距離無線技術を活用して、道路交通システムを高度化する研究を行っている。一つは、気象条件等によって視認性が低下した道路標識や道路状況を、道路の随所に設けた短距離無線アンテナから走行中の車両に伝達するシステムであり、もう一つは赤字路線の廃止が続く路線バスの利便性と効率向上を図る「フレキシブルバスシステム」である。後者は、利用者がバス停で希望する行き先を入力するインターフェースを設け、そのデマンドに応じてバスを運行するものである。移動中のバスとの通信に短距離無線技術を用いる。これらのシステムは、日本国内のみならず、発展途上国を含めた諸外国への適用も視野に入れて検討している。

経費名:総務省 戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)

インターナショナルペレットウォッチ:アフリカの環境汚染調査への応用

研究代表者/発表:高田 秀重(東京農工大学)

International Pellet Watch(IPW)とは、レジンペレットというプラスチックの粒を用いた、有害化学物質による海洋汚染の地球規模モニタリングです。レジンペレットは直径3mm程度のプラスチック粒で、世界中の海岸に漂着しています。レジンペレットは海水中から百万倍程度の倍率で有害化学物質を濃縮しています。そこで世界中の市民、NGOに呼びかけてレジンペレットを東京農工大学へ送ってもらい、分析し、分析結果をwebで公開しています。アフリカ沿岸のレジンペレットの送付はまだ、限られています。アフリカではe-wasteなどの環境汚染が懸念されていますので、アフリカや中近東への調査で海岸に寄ることがあれば、是非、レジンペレットを採取し、私たちの研究室にお送り下さい。

経費名:科研費、三井物産財団環境基金
関連URL:http://www.pelletwatch.org/

トマトの病原菌は宿主植物の栽培化の過程で出現したのか?

研究代表者:有江 力

発表:柏 毅(東京農工大学大学院連合農学研究科)

Fusarium oxysporum (FO)は、普遍的な糸状菌であるが、その中に植物病原性の株が存在する。本研究では、トマト萎凋病菌(f. sp. lycopersici: FOL)をモデルとして、『FOLがトマトの伝播・育種の過程で非病原性FOから出現した』との仮説を立て、検証している。トマトの原産地であるアンデス、栽培化の地であるメキシコ、近世以降の栽培地であるイタリアや日本等で、野生種、移行期および栽培種の健全トマトの組織と根圏土壌からFOを分離した。分子系統解析の結果、ペルーの野生種とメキシコの移行期トマトからFOLに近縁の非病原性FOが見出された。これらは、FOLの病原性に関わる因子を保持していなかった。

経費名:科学研究費基盤研究B

氷河減少に対する水資源管理適応策モデルの開発

研究代表者:田中 仁

発表:朝岡 良浩(東北大学大学院工学研究科土木工学専攻)

南米アンデス高地に位置するボリビアの首都ラパスとその隣接都市エルアルトは人口流入に伴い水需要が増加する一方で,この地域は古くから水資源を氷河からの融解水に依存しており,氷河縮小による水資源枯渇が懸念され,水資源適応策の立案に迫られている.氷河減少に対する水資源管理適応策の支援というボリビア国からの要請に対して,東北大学はJST/JICA地球規模課題対応国際科学技術協力の一環として,氷河後退による水資源影響を評価するモデルの開発を目的とした研究をボリビア国立サンアンドレス大学と共同実施している.さらにはボリビア国が持続的に気候変動問題に取り組むめに,共同研究を通じた人材育成にも重点を置いている.

経費名:JST/JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力
関連URL:http://grande.civil.tohoku.ac.jp


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