海外学術調査フォーラム
I 大陸部東南アジア
座長 | 床呂 郁哉(AA研) 澤田 英夫(AA研) |
話題提供者 | 野中 健一(立教大学文学部) |
タイトル | 「ラオスの村落共同調査の運営とフィールドワークの安心安全」 |
平成23年度海外学術調査総括班フォーラム・地域分科会「I大陸部東南アジア」には話題提供者の野中健一氏をはじめとする19名が参加した。
まず野中氏が「ラオス農村における住み込み型協働調査とフィールドワークの安心安全構築」と題して話題提供を行った。
話題提供の前半部において、野中氏は総合地球環境学研究所プロジェクト課題「ビエンチャン平野を生態史的にとらえる」(2003~2008年度)において実施したラオス・ビエンチャン平野における住み込み型協働調査を事例として、海外における長期調査の実施プロセスおよび調査成果の還元について解説した。まず野中氏は調査地域の選定・調査許可の取得・カウンターパートの選定・調査村選定のための予備調査といった調査村の決定に至るまでの一連のプロセス、調査村における衣食住の確保・通信設備の整備・調査村の住人との友好関係の構築といった調査環境の整備、そして資材等の移譲など調査終了後の諸手続きについて報告した。次いで野中氏はフィールドワークによって得られた成果の還元の事例として、調査村の写真集の作成、博物館作り、現地における人材育成の取り組みを紹介した。
話題提供の後半部において、野中氏は「超域文化学専攻におけるフィールドワーク教育の体系化―危機管理とアシスト体制づくり―」(立教大学GP研究 2009~2011年度)に基づき、大学院生の主体的フィールドワークを実現するための支援体制構築の試みについて報告した。まず野中氏はフィールドワーク教育に取りくんできた大学院におけるフィールドワークの実施状況・大学院生のフィールドワークに対する意識・危機管理体制・普及広報活動に関する調査に基づいて、関係者の安全管理の意識が不足していること、フィールドワークの技法や危機への対処方法が体系的に伝達・蓄積されていない事実を指摘し、フィールドワークの実施内容・調査手順・危機管理について調査実施前の大学院生に記入させてその問題点を検討するトレーニングブック、およびフィールドワークにおける調査者の安全を確保するための携帯電話・PCを利用したフィールドワーク・アシストシステムの導入によってフィールドワークの安全性を向上させる試みについて紹介した。
質疑応答においては、聞き取り調査における質問内容の吟味など円滑なフィールドワークを実現するための試み、住み込み型協働調査における科学研究費補助金の使用方法、海外調査における医療体制と感染症の予防方法、フィールドワーク・トレーニングブックおよびフィールドワーク・アシストシステムの使用方法などについて質問が寄せられ、野中氏と出席者との間で議論が交わされた。
(報告:石川博樹(AA研))