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ヤシの木七人の仲間が星になった話 

テキスト提供:小澤俊夫さん


 昔むかし、海の底から七人の若者が仕事を捜しに陸地へ上がってきた。若者たちは村から村へと歩きまわって、人びとに人手はいりませんかときいて歩いた。運のいい者はたきぎ拾いの仕事をさせてもらい、またある者はかもの番をさせてもらった。なにかの仕事にありついた若者たちは陸地に残ったが、仕事にありつけなかった若者たちは海へ帰っていった。

 地上に残った若者のうちのひとりがある王さまの家に住み込んで、牛飼いとして働いていた。この若者は勤勉で従順な若者だったので、王さまに非常に愛された。朝早く若者は王さまの牛をきちんと連れて放牧地へ出かけ、午後になると牛小屋へ連れもどした。

ところが、そのころ、海の中の人間と陸地の人間とのあいだには敵意があり、しまいにこの王さまの勤勉な牛飼いが海の人間であることが陸地の人びとのあいだに知られると、この若者を捕まえて殺してしまった。その死体は森の中へ投げすてられた。

王さまの宮殿のひとはだれもその若者がどこへ姿を消したのか知らなかった。ひょっとすると病気で死んだのかもしれないと言うひともあった。王さまは家来たちに、自分のお気に入りの牛飼いを捜すように命令した。けれどもむだだった。その若者を捜し出すことはだれにもできなかった。その肉体は野獣たちに食いつくされてしまっていて、ただ骨がいくつか散らばって残っているだけだった。

 六人の仲間たちはこの悲しい知らせを聞くと、そこへ来て牧童の死体を捜しまわった。六人は森やジャングルをかき分けて進み、川や広い平野を横切って捜しまわった。そして少しも疲れをみせなかった。

二、三日そうやって捜しまわったあげく、ほとんどあきらめかけたときに、ある森のなかで、あの仲間の骨が散らばっているのを見つけた。六人の仲間たちはその骨を集めて、ヴアリンギン樹の下に集めた。

それからいちばん年上の若者が言った「君たち海へ行って海の水をくんでここへ持ってきてくれ」。

五人の若者たちは海へ行き、まもなく海の水を持ってもどってきた。若者たちはその水を、積み上げた骨の上にかけた。するとその瞬間に骨は人間に変わった。つまりあの殺された牛飼いの若者に。けれどもその体はまだ弱く、歩くだけの力はなかった。

若者たちは、牛飼いがまた生き返ったのを見るとたいへん喜び、交替でその弱りきった男を背中に担いで海まで連れていった。その目的は海の中へ帰ることだった。なにしろ陸地の人間たちがこの若者の生き返りのことを知るのを恐れたのだ。

ところが、若者たちが海の中へ潜る前に海の底から人びとが現れて、こう言って七人の若者を追い払った「おれたちはおまえなんか知らないぞ。おまえたちは仕事を捜しに陸地へ行き、長いこと海を見捨てていたじゃないか。だからおれたちはおまえたちのことを陸地の人間だと思ってるんだ」。

七人はすっかり悲しくなってまた陸へ上がっていった。けれどもそこでも人びとに追われて殺されそうになった。それで仲間のうちの一番年上の者が言った「ぼくたちは海の中でも受け入れられないし、陸地へ来るといつも追いかけられてしまう。だからぼくらは天へ昇ったほうがいいんじゃなかろうか」。

六人の仲間はこの提案に賛成し、それからみんなで天へ昇っていった。天に着くと七人の若者は七つの星になって一列に並んだ。そしてみんなでその光を地上へ投げかけた。この七つの星のうちひとつの星の光は特別に弱い。それが陸地の人間たちに殺されたあの牛飼いからできた星なのだ。星になったときまだその牛飼いの体は弱かったので、その光は悲しそうで弱よわしいのだ。

 


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