<ジャワの民話> 前のお話 次のお話

ヤシの木ペリア・ポカク

テキスト提供:小澤俊夫さん

 


 焼けつくような太陽がかげりはじめた。南東からの夜風はあまり吹かなかった。水牛たちや牛たちは干上がった水田のなかを村の近くまでやって来て、太陽が寝床へ行くのを待っていた。羊飼いの少年たちは、広びろとした野原で楽しげに遊んでからっぽのおなかをまぎらわしていた。おなかを早く一杯にしてくれとせきたてていた。娘たちは歌に夢中になっていて、泣くのをなだめてやってくれとおかあさんから頼まれた小さなきょうだいのことをかまってはいなかった。あちこちを走り回っている水牛のうなり声と雌牛のモーという声は、その地方の繁栄と平和の象徴だった。どの家からも煙がモクモクと空へ登って行くのが見えた。それは古いお話の巨人のたばこの煙のようだった。そのお話を老人たちはくり返しくり返し語って聞かせた。そうでもしないとほかにすることがなかったのだ。

 あるあぜ道をひとりの若い娘が、やはり娘といったほうがよい年のおば七人と歩いていた。その若い娘はペリア・ポカクという名だった。まだ十八にもなっていなかった。ペリア・ポカクとおばたちは泉へ水をくみに行くところだった。娘の服は本当に普段着で、ひとがこれはひどいと思うよりもっとひどかった。服も上着もつぎはぎだらけだった。ペリア・ポカクはおばたちのうしろからついていった。ペリア・ポカクはやさしくて、まだ子どもっぽいところがあったが、おばたちはこの子を、まぬけで悪い子だと叱った。

 泉のところで女たちは順々に水浴びをし、ひとつの石でマッサージをした。そしてよく挽いた陶器のかけらで歯をみがいた。ペリア・ポカクも砕いたつぼの粉で歯をみがいた。けれどもおばたちにからかわれて、その粉を捨ててしまった。おばたちはこう言ってからかったのだ「どうして、あんた、歯をみがいたりするのよ。あんたにほれる男なんていやしないよ」。ペリアはおばたちにからかわれて、困ってしまい、おずおずとこう言った「歯をきれいにしたいからよ。おばさん」。

こういうからかいはもう何度も経験ずみだったから、ペリアはびっくりしたりはしなかった。おばたちにからかわれたり、あざげられたりずるのは、これが初めてではなかった。それだからペリアはそんな言葉もしまいには、いつものことと思うようになってしまった。ただ、すっかり娘らしくなったねとひとに話しかけられると、やはり恥ずかしがった。そして若い男たちの親切な言葉が自分に向けられていたりすると、ますます恥ずかしがった。

 一時間かかって女たちは水浴びをし、頭をきれいに洗った。着物を着て、髪にはよいにおいのするジャスミンの花輪をつけた。そして腰をふって歩いて、見ているひとみんなの心をうっとりさせた。羊飼いの少年たちはその姿にすっかりまいってしまった。ペリア・ポカクはおばたちのうしろから桶を持ってついて行った。

娘たちの行く道からあまり離れていない葉のしげった木の下で、ダトゥ・テルナがお供をひとり連れて座っていた。そのお供の名はカヤロデといった。ダトゥ・テルナは、通りかかる娘たちの美しさをよく見ようと、いつもそこに座っていた。娘たちをとっくり眺めるのが本当に好きだったのだ。ダトゥ・テルナはずっと娘たちを眺めていた。お供のカヤロデもやはり娘たちを眺めていた。

娘たちが通りかかるとダトゥ・テルナがたずねた「カヤロデ、どの娘がいちばんきれいかね?」「ちょうどまんなかの娘です、だんなさま。だんなさまがご覧になったところでは、どの娘がいちばんでしようか」。今度はカヤロデがダトゥ・テルナにたずねた。「わたしが見たところではペリア・ポカクがいちばんきれいだね、カヤロデ」とダトゥ・テルナは答えてペリア・ポカクを目で追った。

 おばたちにも、それからペリア・ポカクにもダトゥ・テルナとカヤロデの話は聞こえた。おぼたちはペリア・ポカクがほめられたのをねたましく聞いて、考えた「ペリア・ポカクはきっとダトゥ・テルナに選ばれていいなずけになるわ」。おばたちが夜も昼もいつもしっかと胸に抱いていたあこがれでもあり夢でもあった望みは一瞬のうちに消えてしまった。おばたちはダトゥ・テルナの恋人になりたくてたまらなかったのだ。しかし、ついさっきまでリズムに乗ってゆさぶっていた腰をふるのもやめてしまった。おばたちはとてもくやしく思ったので、腰までがすっかりだらっとしてしまった。そして顔も前のようにはもう輝かなかった。その表情も陰気くさくなってしまった。そしてくちびるはにわとりの尻のようだった。だらしなくみえたし、ふさぎこんでみえた。いらいらして落ち着きのないひとになってしまったのだ。そして夜のあひるみたいに、あわてて逃げて行ってしまった。ちょっとの間、左を見たり右を見たりうしろを見たりした。そのとき、ちっとも変わっていないペリア・ポカクの顔が見えた。するとおばたちの嫉妬心はますますふくれあがった。そして行儀よく歩いていくペリア・ポカクを悪く言った。

 心には嫉妬と競争心が宿った。おばたちは協カしあって、ペリア・ポカクにいやがらせをしてやろうと思って、ひとつの策略を立てた。夕方、ペリア・ポカクが粘土でできたシチュー鍋とよごれた台所道具をちょうど洗い終えて、その手もかわかないうちに、ひとりのおばが呼びにきた。ペリアは急いで全部整頓すると、おばたちの家へ行った。

おばたちは小さな円陣をつくってすわり、シリーをかんでいた。ペリア・ポカクはベランダの上でおばたちの足元に腰をおろして足をブラブラさせていた。「シリーをお取り」とおばたちは言い皿に手をのばした。「このシリーは新鮮で、金色だよ」ひとりが言った。「くるみがいいにおいだ」ともうひとりが続けた。「うれしいね。おいしいね。わたしらは天国にいるみたいだ」と今度はみんながいっせいに言った。「おばさんありがとう」とペリア・ポカクは礼を言うとシリーをくるくるまいた。

「今じゃダトゥ・テルナのいいなずけさんだよ」とまんなかのおばがからかって言うと、「そんなことありえないわ」とはにかんでペリア・ポカクは答えた。「おばさんたちの勘ちがいよ。ダトゥ・テルナがきれいだって言ったのはおばさんたちのことよ。わたしみたいな卑しい者には、わたしにむいた卑しいことしか起きないのよ。そんなことありえないわ、おばさん。ダトゥ・テルナはまちがいなすったのよ。わたしなんかまだ結婚の年じゃないわ。わたしはまだほんの子どもですもの」。

「ああ、ぐずぐず言うのはいやだよ。あした、森へたきぎを取りに行くんだよ。食事がすんだら、いっしょに出発だ。おまえもわたしらといっしょに来てもらうよ」。おばたちはぺリア・ポカクの話をさえぎってそう言った。「いいわ、おばさん。でもまず、おかあさんにお許しをもらうわ。おかあさんは遠くへ行ってはいけないって言うの」。「ほう、この子は枝を取りに行くのも許されてないのかね。役に立つお仕事をするのも禁じられてるなんて、あんたはなんてねんねなんだろう」。「もしかしたら、もうすぐおきさきさまですものね」。「おう、この子は女主人さまになるんだったよ」とほかのおばがからかった。おばたちがどんなに笑ったことか。ペリア・ポカクはがまんして、おばたちを見ていた。「わたし、いっしょに行くわ、おばさん」。ペリア・ポカクのこの言葉でおばたちの笑いは止まった。

 ペリア・ポカクとおばたちが森へ出発するとき、ペリアのおかあさんは、義理の姉さんや妹たちに、くれぐれも娘を危ない目に合わせないでくれと注意した。そして森のなかではみんないつも近くにいて、別れわかれになることはなかった。けれどもペリア・ポカクは自分では何も集めることができなかった。ペリアが枝を取ろうとすると、おばたちは自分のものだと言い張るのだ。ペリアは悲しくなってしまい、おばたちのところからどんどん遠ざかって行った。

たったひとりで森の奥へはいって行って、とてもきれいな小枝ばかり拾い上げた。枝をまだ束ねないうちに、突然七人の妖精が目の前に現れた。ペリア・ポカクはびっくりして逃げ出そうとした。ところが七人の妖精はペリアを引き止めた。ペリアの顔色は死んだように青くなって、心臓は止まってしまいそうだった。

「おそれることはありません。妹よ。わたしたちは良い妖精なのです。おまえに不幸をもたらそうなどたくらんではいません。いらっしゃい。わたしたちの家までついておいで」と七人の妖精は言った。天国で妖精たちはペリア・ポカクに織り物を教えてくれた。ペリアはとてもとても早く覚え、妖精たちを楽しませた。ペリアのきれいな手は、揖を巧みに動かし、糸をしっかりと結び合わせた。あっというまに、織り物が一枚できあがった。

 天国で、わずかな間にペリアはいろいろな織り物の織り方を習った。そしてその日の午後、ペリアは以前の場所に送られて帰ってきた。妖精たちはおかあさんのところへ持っていくゆうにと、二枚のすばらしい織り物をくれた。その二枚の織り物を妖精は朽ちかけた竹の筒に入れた。そしてその竹の筒をほかの木の枝といっしょに結んでくれた。

 遠くからおばたちは叱って言った「ずいぶん長いことわたしたちを待たせるじゃないの。今ごろ腐った枝なんか持ってもどって来て。そんなきたない枝は捨てて、わたしたちのきれいな枝を運んでおくれ。そんな枝を家へ持って帰ることはないよ。おまえはまったくわたしたちを手こずらせるね。ちっとも枝を集められないなんて。まぬけだね。その枝はみんな捨てておしまい」。

「いやよ、おばさん。わたしにその枝を背負わせてちょうだい。だってわたしが自分で集めてきたんですもの」。家に着くとおかあさんはうれしそうにペリアをむかえてくれた。そして娘の話を聞いて、どんなに驚いたことか。そして妖精たちがくれた布を見つめた。「これをおまえが織ったっていうのかい?」と半信半疑できいた。なにしろペリアは家では糸になじむことなど全然なかったのだから。織り物はむろん、服につぎをあてることすらまったくできなかったのだ。

 それからというもの、ふたりの暮らしはいっそう楽しくなった。そのときからは、血にまでしみ通る寒さが夜にやってきても、身を守ることができた。他のひとに布のことを知られてしまうのが心配で、眠るときにしかその布を使わなかった。ふたりは布どろぼうにはいられやしないかと恐れた。ペリア・ポカクの家からは夜遅くまでヒソヒソ声が聞こえた。それは新しい掛けぶとんを喜んでいるペリア・ポカクとおかあさんの声だった。

 一方、あまりよくは聞こえなかったが、おばたちの家からもヒソヒソ声が聞こえた。おばたちはラジャのダトゥ・テルナがペリア・ポカクをきらいになるようペリアを傷つけてやろうと相談していたのだ。朝早くあたりが明るくなるころ、おばたちがあいの染料を一生けんめい調合しているのが見えた。そしてペリア・ポカクがおばたちのところへやってくるやいなや、その体に染料を塗りつけた。

ペリア・ポカクが逃げようとするとおばたちはこう言った「逃げるんじゃないよ。わたしらみたいな女はおまえより平凡でつまらない人間だよ。領主さまの息子さんがおまえをほめたり、愛したりするなんて、いいことじゃないよ。そんなことわたしたちにはなんの得にもなりゃしない。それだけじゃない。おまえが耐えられないくらいの、どでかい不幸をあとでおまえにもたらすだろうよ。だからおまえの体を塗りたくってやるんだよ」。「でも寒いわ。ひとはお化けがやってきたと思って、逃げ出したりしないかしら」。「それでも、ダトゥ・テルナがこれからもおまえに心を引かれたりするよりはましだよ」

 けれども、おばたちの骨折りは失敗に終わった。ダトゥ・テルナはますますペリア・ポカクの美しさをほめたたえた。ダトゥ・テルナはカヤロデに言った「どうだい、わたしが言ったとおりだろう。おばさんたちは、ペリア・ボカクの美しさにはかなわない。国じゅうであの子より美しい子はいないよ」。

「本当ですね、だんなさま」とカヤロデは答えた。「わたしは今はじめて、あの美しさがわかりました。あいの染料をあんなに塗りたくっているので損われているだけです。それでもあのひとのまなざしは濁ったりしていません。雲におおわれた太陽と同じです」。「雲が厚ければ厚いほど、目には快適なんだ」ダトゥ・テルナは笑いながら答えた。さぞ、ペリア・ポカクのおばさんたちは気を悪くしただろう。

 ペリア・ポカクがおかあさんの待つ家に帰ると、おかあさんは自分の娘がすっかりあいの染料で塗られているのでとても驚いた。そして水をかけてくれて、それからこうきいた「これはいったいどういうこと? ペリア・ポカク」。「おばさんたちがこうしたがったのよ、おかあさん。おばさんたち、わたしがダトゥ・テルナに愛されないようにって言ったわ。それは、いいことじゃないって言うのよ」とペリア・ポカクは答えた。「ダトゥ・テルナに愛されるですって」とおかあさんは考えた。そして台所へ行った。「そんなこと、ありえないわ。ただからかっただけだわ。それなのにおばさんたちのからかい方はひどすぎる」

 食事の後、お昼にペリア・ポカクはまた森へ枝を集めに行った。そしてまたひとりできのうのあの場所へ行った。おばたちがペリアにあまりひどくいやがらせをするので。あいの染料を塗られているペリア・ポカクを見たとき、七人の妖精がどんなに驚いたことか。妖精たちはペリアを洗ってやり、また織り物を教えてくれた。

 ペリアの器用さはますますみがきがかかり、妖精たちにとてもほめられた。すぐにいろいろすてきな柄を織ることを覚えた。妖精たちはペリアを自分の血を分けた妹みたいに扱ってくれた。このようにして数年がたった。そしてペリア・ポカクの家には織り物がたまった。それでもぺリアはうぬぼれたりはしなかった。そのふるまいはほんの子どもだったころとまったく同じだった。服は裂けていたし、つぎはぎだらけだった。

 ある夜、ダトゥ・テルナはよく眠っているときに夢で満月を見た。そして満月に見入っていると、突然月が自分のひざの上へ落ちてきた。ダトゥ・テルナは驚いて目をさまし、思いに沈みながら朝までそこに座っていた。

その朝ペリア・ポカクとおばたちは井戸へ水をくみに行った。ペリアの体にはおばたちが泥を塗りたくっていたので、目しか見ることができなかった。ペリアはきたならしく、みすぼらしかった。けれどもその朝ダトゥ・テルナは現れなかった。こんなペリアをダトゥ・テルナに見せてやれるかも知れないという期待ははずれてしまい、おばたちはとてもがっかりした。おばたちが待っていたダトゥ・テルナは、その日は現れなかった。彼は思いに沈んで日が高くなるまで部屋に座っていた。

 太陽がもうすっかり頭の上まであがってきたころ、カヤロデがダトゥ・テルナを捜しにきた。カヤロデは庭を捜してみたがそこにはいなかった。そこでダトゥ・テルナの寝室を見にいくと、ダトゥ・テルナがあごを両手にのせて座っていた。悲しそうな顔だったし、とても青ざめて見えた。カヤロデは入っていってダトゥ・テルナの隣に座った。それから頭をたれてご主人がしゃべるのを待っていた。

ふたりは長いことそこに座っていたが、しばらくしてダトゥ・テルナがはじめてしゃべった「カヤロデ、ぼくは夜、夢で満月を見たんだよ。そしてね、それがぼくのひざの上に落っこちたんだ。昨夜からそれがなんの前兆なのか考えているんだが、さっぱりわからないんだ。よくない意味があるんじゃないかと思うと、どうも気がめいって不安になる。なあ、もしかしておまえこの夢を占えるか」。

「わたしにはそれはできません。その意味は領主さまにおたずねになったほうがいいですよ。あの方はお年寄りで、たくさんのことを経験なさっているし、聞いて知ってもいらっしゃる」とカヤロデは答えた。「よし、それなら、ぼくの父のところへおまえ自分で行って報告してくれ」

 謁見の広間に急いでやってきたカヤロデを見て、領主はおだやかに話しかけ、どうしてここに来たのかとたずねた。そしてカヤロデのていねいな報告を聞くと、笑いながらこう言った「行って集合の太鼓を打て。民を呼び集めて、主人のその夢の意味をたずねるのだ」

 宮殿には人びとがドッとやって来た。領主の息子の夢を占おうと占い師や星占い師が集まってきた。ダトゥ・テルナの夢はとてもよいことの前兆であるということで占い師たちの意見は一致した。ダトゥ・テルナがすることはなんでも成功するだろう。釣りに行ったり鳥のわなをかけに行けば、満足できる結果になるだろう。すべての人々はこれを聞いて喜んだ。ダトゥ・テルナとカヤロデはじゅずかけばとを捜しに出発し、ほかのひとたちは魚釣りに行った。お弁当にダトゥ・テルナはごはんの包みを持っていった。

 ふたりは森に入ったり、森を抜けたり、山に登ったりまた降りたりして進んでいった。いくつもの平野を横断したが動物には出会わなかった。昼間はとても暑かった。ふたりののどはすっかりからからになってしまった。なにしろ道中ずっと何も飲めなかったから。井戸や川のある谷間などひとつもなかった。汗はますます激しく流れた。あまりにのどがかわいたので、完全にカラカラの小川でも水を飲みたいと思った。ふたりの体は言葉では表せないほど弱ってしまった。一歩、歩みを進めるたびに、ちょっと立ち止まらなくてはならなかった。カヤロデは帰ろうと言い張った。しかしダトゥ・テルナはなにかの鳥を見つけないうちに帰ることには賛成しなかった。

そうするうちに夕方から夜になり、ふたりは葉の繁った木の下で眠ろうと横になった。シーツの代わりにその木の緑の葉を摘んだ。もう幾日もふたりは深い森のなかを歩き回っていた。朝になるとふたりはまた旅を続けた。ふたりが食べたものは若葉だけだった。

家ではダトゥ・テルナのおかあさんがとても心配していた。魚釣りに行った人たちはみんなもうたくさんの獲物を持って帰ってきていた。帰ってこないのはあのふたりだけだった。ダトゥ・テルナのおかあさんは昼も夜も泣き続けた。そして領主は森のなかを捜せとたくさんの家来に命じた。けれどもだれもふたりには出会わなかった。そこで領主の心には息子の身の上に何かが起こったのではという不安がひろがった。

 森のまっただなかでのふたりのようすを知るものはふたり以外はだれもなかった。ふたりは多くの山を越え、たくさんの森を通り抜け、ついにきれいな谷間にたどりついた。そこにはとても高い木が立っていた。あんまり高いのでふたりはその木に「天の始まり」という名をつけた。「カヤロデ、たのむよ。おまえ、この木に登ってどの方向に水のある場所があるか見てくれないか」とダトゥ・テルナが言った。

カヤロデは登っていき、上から、遠くに、水蒸気が雲になって空へ立ち登っているのを見つけた。けれどもその場所とふたりとの間には高くて大きな山が五つもあった。そこへ行きたければ、その大きな山やまを越して行かなくてはならなかった。猛烈なのどの乾きに追い立てられてふたりは先へ先へと行った。そしてまもなく、食べ物や飲み物がもらえる美しい村が近くにあることはだれも知らなかった。

やっとの思いでふたりは四番めの山にたどりつき、そこで体を休めるために休憩した。ほとばしり出る汗をぬぐっていると、突然ふたりには機織りの澄んでよくひびく音が聞こえてきた。ふたりは休みなくくり返されるそのひびきに同時に気づいた。若者は神に感謝した。カヤロデはためらわずに言った「行きましょう。あのサラサラいう音を捜してみるんです。確かにこの山の裏です」。ふたりは五番めの山のまわりをぐるりと捜した。しかし村がある気配などまったくなかった。寂しさがのしかかってきた。サラサラ鳴る機織りの音以外なにもしなかった。

 ふたりがそんなふうに捜していたとき、一生けんめい織り物をしていたペリア・ポカクはひとの声を聞いてびっくりした。そして声のする方へ耳を傾けた。それがダトゥ・テルナとカヤロデだとわかったとき、ペリアの驚きはもっと大きくなった。ペリアは七人の妖精を呼んで早くかくまってくれとたのんだ。

 びくびくしなからペリアは言った「おねえさまたち、わたしをおうちに連れてって。見て、あのひとたち。もうすぐ近くにいるのよ。もうちょっとでここに来てしまうわ。あのひとたちわたしたちのことがわかってしまうわ。ああ、わたしがここにいることがひとに知れてしまったら、わたしの運命はだめになってしまうわ。きっとわたしたちの秘密は見つけられてしまうわ。来て! おねえさま方」。「心配いらないわ。織り物はここにそのままにしておきなさい」と七人の妖精は言った。そしてペリア・ポカクを急いで家へ連れて帰った。

 すぐそのあと、ダトゥ・テルナとカヤロデが七人の妖精の泉の近くの池にやってきた。ふたりは見つけた水を、きれいかどうか前もって確かめもせずにきれいだと思ってのどの乾きがおさまるまで飲んだ。飲んでしまってからはじめて、水が流れているのに気がついた。そこでふたりは流れの源のほうへさかのぼって行った。すると泉にたどりついた。そこの水はオリーブ油のように澄んでいた。泉のへりには水くみ用の金のたらいがあった。

ふたりはびっくりしてそれを眺め、そして心の中で言った「だれも住んでいない森のまんなかでこんなきれいな泉をいったいだれが持ってるんだろう」。ふたりはさっき泥水を飲んでしまったことに気づいた。鳥かごを大きな木につるすと心ゆくまで水浴びをした。体はさわやかになった。そして空腹は忘れてしまった。それからふたりは泉のへりに腰をおろしたが、ふたりに文句を言いに来るひともなかった。

 やがて、ふたりが家路につこうとしたとき、ダトゥ・テルナのナイフの柄がひっかかった。押したり、引いたりしたがナイフはとれない。「あれ、これはなんだい、カヤロデ?」  「糸ですよ、だんなさま。なんて細いんだ」。「おや、これは糸じゃないぜ。ひょっとしたらくもの糸だ」。 「信じられないことだ、だんなさま。ちょっと見てください。あそこに建て物がある。おや、小屋だ。だれのだろう。きれいだ。あすこには反物もありますぜ。ありゃいったいだれのでしょうね?」  「本当だ! すぐに登っていってみよう!」

 カヤロデは急いで登ろうとしたが、小屋の柵がすべりやすかったので登れなかった。そこでカヤロデは竹ざおを捜してきて、ダトゥ・テルナにしっかり押さえてもらってその竹によじ登った。上に着くとカヤロデは口をあんぐりあけてびっくりした。そこではよい香りがして、織り糸がキラキラ光っていた。そのうえもっとカヤロデを驚かせたのは、風変わりでむずかしいその糸のより合わせだった。こんなものは今までに見たこともなかった。

カヤロデはその織り物を丸めて下へ持って降りた。ダトゥ・テルナはびっくりした。ダトゥ・テルナだってそんな模様を見たことはなかった。「家へ帰ったほうがいいね、カヤロデ。こんな布を手に入れて、ぼくは満足だよ。ぼくらは鳥はしとめなかったけれど、きれいな布を手に入れた。この掘り出し物だけ持って家へ帰ったって、恥ずかしくなんかないさ。ぼくはこれでたくさんだ」

 うちに着くとふたりは領主に喜んで迎えられた。とくにおきさきは息子が元気なのを見てことのほか喜んだ。さてそれからダトゥ・テルナは父親に森のなかで見つけたあの織り物を仕上げることができる女の人と結婚させてくださいと許しを乞うた。そのひとがどんなひとであろうと、そのひとに会わないでも結婚すると約束した。もしそれが犬だったとしても喜んで結婚すると言った。

 領主は、まだ亭主のない女は全員来て、この織り物を仕上げられるか試してみよというお触れを出した。若い娘たちや未亡人たちまでみんなやってきて試してよろしいということだった。そのお触れは、それが出された日からずっと制限なく有効だということだった。その日からというもの女たちは群れをなして領主の宮殿に殺到し、そのふしぎな織り物に挑戦した。けれども娘たちは織り機にすわるやいなやすぐなげだした。多くの娘があきらめた。

 その模様には、挑戦者が克服しなくてはならないむずかしいところがたくさんあった。そして挑戦者が織り機を見すてるたびにいつもふしぎなことが起こった。失敗した糸の結び目が自然とまたほどけるのだ。そのうわさは国じゅうに広まり、ますますたくさんの人びとがやってきた。まあちょっと見てみようと思ってくるひともいたし、もちろん挑戦してみようと思ってくるひともあった。何千人もの女たちが試してみた。けれどもみんなことごとく失敗した。人びとの驚きはますます大きくなった。そして頭はこのふしぎな糸のことでいっぱいになった。

 ペリア・ポカクの七人のおばたちもふしぎな糸を試しにやってきた。――だができなかった。それでも七人はあきらめなかった。おばたちは糸のそばを離れようとしなかった。そして今すぐにではないにしても、近いうちにきっとなんとかしてやろうと思った。

 何か月か競技は続き、とうとう志願してきた女みんなに順番がまわった。そこでダトゥ・テルナはすべての人びとに協力を求め、だれがまだ運だめしをしていないか知らせてくれと言った。人びとは、ほとんど全員やってみましたと答えた。「もっと捜せ。きっとまだ試していない者がいるんだろう。この織り物を仕上げられる者がいないなどとは信じられん。おまえたちの協力をたよりにしているぞ!」とダトゥ・テルナは言って近くにいる女たちを見た。

 ペリア・ポカクのおばたちはダトゥ・テルナのまなざしが向けられたのを感じた。おばたちは、お互いに見合った。そしてひとりが言った「わたしたちのところではペリア・ポカクだけが来てないのよ。でもあの子は、ここへ来ることなんてできないわ。なにしろ織り物なんてできないのよ。織り物なんて! 服のほころびだって全然縫えないんですもの!」

 今度はべつのおばが口をゆがめて言った「まあ、あの子を呼んでごらんあそばせ。一度は試させてみてください」――「むだなことですわ。領主さま!」 l「そんなことを言うな、おまえらは偏見を持っておるぞ。その子はまだ試しておらん、それなのにおまえたちおばはあたまから無理だと言っている」――「わたしどもはいつもいっしょにおりますが、今まであの子が織り物をするところなんぞ見たことがありません。あの子のただひとつの仕事はつくろいものがせいぜいです。それは母親から教わったものでできるのです」。それでもダトゥ・テルナはペリア・ポカクを呼び寄せるように命じた。

 二、三人の女がペリアを迎えに家へ向かって行った。女たちは着くとすぐにペリア・ポカクに迎えられた。急いで娘を迎えにやってきた女たちは、自分たちが来たわけをすぐさま伝えた。「おばさんたちがそういうことを望むんなら、わたし、いやだわ。王子さまがおばさんたちにそう命令なさったんでもわたしは従いません。わたし、織り物はできないんです。そのうえ服も持ってないんです」――「できるかできないか、領主さまと王子さまのご前でやってみせなくてはならないのよ。領主さまのお望みをことわったりするとあなたひどく罰せられるんじゃないかと思うわ」――「ええ。だけど、このわたしの服のありさまを見てくださいな。見て、こんなに裂けてるし、つぎもこんなにたくさん。どんなにきたないか見てくださいな。そこへ行くの、わたし恥ずかしいわ」。迎えにいった人びとはびくびくしながら帰ってきた。「もし服を持っていないのなら、その子にこれを着るよう持っていってやれ」とダトゥ・テルナは命令した。

 馬で早く走れる二、三人の男たちがペリア・ポカクに着せる服を持っていった。が、ペリア・ポカクは喜ばなかった。そして服を持っていないなどと言わなければよかったと思った。「前に言ったことは、もう通用しないわ。服はもう足りなくないんですもの」。ペリアはこう考えて、それから言った「上着を持ってないのに、わたし、服一枚でどうしましょう。上着なしで行くなんて、わたし、恥ずかしいわ。それじゃあまりお行儀がよくない感じですもの。ええ、わたし、上着がないから行かないわ」

 「ペリア・ポカクはなんと言った?」とダトゥ・テルナはたずねた。「あの娘は、上着を持ってないので来たくないと言っています、だんなさま」。「あの娘にこの上着を持っていってやれ」――「わたしは腰巻きを持っていないのにどうやってそこへ行けるかしら。腰巻きがないために服が脱げてしまったら、わたし、それは恥ずかしい思いをしなくちゃならないわ」――「ペリア・ポカクは腰巻きがないので、うんと言いません、だんなさま!」――「腰巻きを持っていってやれ!」――「あなた方はわたしに腰巻きを持って来てくだすった。でも、わたし、ショールを持ってないんです。ショールがなくちゃ行けないわ」――「ペリア、おまえはずいぶん欲しいものが多いな。それもみんなただの言い逃れみたいだぞ」――「そんなはずはないじゃないですか。わたしは本当のことしか言いません。わたしはありのまましか言いません。わたしは貧しい娘です。みなさんの作法を乱すよりは行かないほうがいいんです。わたしみたいな身分の低い者が宮殿へ入るには礼儀正しくしなきゃなりませんもの。わたし、いきあたりばったりにはできないわ。無作法だと知っているのにどうしてその無作法なことをしなくちゃならないんです」

 「あの娘はショールを持っていないのです。だんなさま!」――「ショールを持っていってやれ。それから早くここへ来るように言いなさい」――「本当に恥知らずな女だわ。器用に織ることなんてできないくせに、そのたびに新しいものを欲しがったりして」とおばたちは言った。

 「今度はあなた方はわたしにショールを持ってきてくださったわね。でも、わたし、ベルトを持ってないの。ベルトなしでおもてに出るなんてできないことよ。ベルトなしじゃ、女の身だしなみとして完全じゃないわ。わたしは行かない。そこへ行っても恥をかくだけだわ。わたし、織り物はできません。そういう理由でわたしは行きませんって領主さまに言ってくださいな」。 「よし、すぐ領主さまに知らせよう」

 二、三分たつと使いのひとたちはもうベルトを持ってもどって来た。「ああ、ベルトだけ。わたしはそこへ行くにはまだ用意が整ってないわ。服、上着、腰巻き、ショールそれからベルトはそろったけど、まだ何か足りないわ。わたし、頭につける飾りを持ってないの。そのことを領主さまに言ってくださいな」

 「あの娘は髪飾りを持ってないのです。だんなさま!」――よし、足飾りも腕飾りも持っていってやれ。急げ、途中でぐずぐずするんじゃないぞ。早く馬に拍車をかけろ。もう昼になる」――「ご命令どおりにいたします、だんなさま」と使いは言って急いで馬に拍車をかけた。

 「わたしは貧しい人間だと、もうさっき言いましたね。きれいな服を持っていても、体がきれいでなかったらどうなるでしょう。わたしは髪を洗うココやしの油を持ってません。それに髪をとかすものも何も持ってないんです」。「ずいぶんと逃げ口上の多い女だな」。迎えに来させられたひとのひとりが言った。「まあ、いいさ。だがこの娘があとで織り物ができなげれば、この娘を殺してしまうように領主さまに申し上げよう。何度もあちこち行ったりもどったりし続けて、わしやもう疲れたよ」と今度はべつのひとが言った。

 「ペリア・ポカクはどうした。あの娘はまだ来ないのか」とダトゥ・テルナがたずねた。「あの娘はココやしの油と、それから櫛も持っていません」。「よし、あの娘が望むものはなんでも持っていってやれ」

 「これで着るものもそろったし、体もさっぱりしました。でもわたしを乗せて行ってくれるものが何もないのでは、わたし、行きません。わたしをそこまで連れていってくれるものがないと、わたしは領主さまの前へお行儀よく出ていかれませんもの」

 しばらくすると、ひとりの男が馬を連れてきた。ひずめの音といななきが響きわたった。その馬はまだ庭には入っていなかったがペリア・ポカクは恐ろしくて叫ぶように言った「わたしは馬を乗り回せないんです。おわかりでしょう、わたしにはそんな勇気はありません。領主さまがわたしが来るのを望んでいらっしゃるといったって、どうしてこんなに早い馬で連れていかれなきゃならないんですか。領主さまのところへ行って、かごとお供のひとを全部そろえてわたしを迎えに来るように言ってくださいな。何千人ものびとを左や右や前、うしろに。それからお供のうしろでは楽隊が太鼓を打ってなくちゃいけないわ」

 つぎの朝早く、ペリア・ポカクの家へたくさん人びとが楽隊を従えたかごを運んできた。男や女、おとなから子どもまでみんながやってきて、その群集は数え切れないくらいだった。みんなペリア・ポカクの顔を見てやろうとやってきたのだ。その叫び声とどよめきは止むことがなかった。

ペリア・ポカクはもう支度をして家の中に座っていた。ペリアは七人の妖精たちにそれはそれは美しく着付けしてもらっていた。天国の一番よい香りの香水をふりかけ、金色に輝く服もやはり天国のものだった。王子がくれた服はひとつも身につけなかった。頭には金ときらめくダイヤモンドで作られた花をたくさん付けていた。七人の妖精の姉さんたちはペリアの髪を結いあげると姿を隠した。妖精たちはペリア・ポカクのその姿を見てとても喜んだ。そして、あとでペリアが織り物を完威させるときに、すこしまちがいをすると、それを見つけて教えてくれたのも、この妖精のお姉さんたちだった。

ペリア・ポカクの乗ったかごは肩にかつがれて家を出た。人びとがどんなに叫び、どんなに騒々しかったことか。人びとはペリア・ポカクの美しさを見てとても驚いた。驚かない者などひとりもいなかった。ただおばたちだけは口をゆがめた。そしてりっぱになったペリア・ポカクのことをひどく憎らしく思った。

 宮殿でかごから降りると、ペリア・ポカクばまっすぐ織り物のところへ行った。人びとが幾重にもとりまいて眺めていた。「おばさんたち、どうするかわたしに教えてくださいな。わたしにはできないわ」。「まず、こまのひもを結んで、それから糸通しをお取り」。にっこりして、ペリア・ポカクはおばたちに言われたとおりにした。「なんてこったね。とても危なっかしい手つきじゃないか」。ひとりのおばが姉や妹を横目で見て言った。けれどおばたちはペリア・ポカクが織り物を仕上げられるかも知れないと心配して、内心は不安でガタガタしていた。

 ペリア・ポカクは熱心な、それでいて外見上は途方にくれたふりをして、解けていた糸を結び合わせた。そして見ているたくさんの人びとの注意を引きつけるために、解けないでいた糸を解いたりした。見物人はかたずを飲んだ。ペリア・ポカクはその魔法の織り物を仕上げられるのだろうか。ペリア・ポカクは「みんなここを見てよ」とひとり言を言うように左右に目を向けた。すべてのまなざしがペリアのほうへ向けられた。

そのときペリアは織りはじめた。あっというまに織り物は仕上がった。それを見て人びとがどんなに驚いたことか。ダトゥ・テルナもびっくりした。それから突然、緊張していた空気が喜びのどよめきに変わった。それは最高の喜びの表現だった。人びとは満足と歓喜の気持ちを表したのだ。ただペリア・ポカクの七人のおばたちだけはとても恥ずかしかった。黙って七人は姿を消した。

 急いでダトゥ・テルナは宮殿の中へ入って自分もふさわしく見えるように着替えをした。領主とおきさきはペリア・ポカクに自分たちの息子と結婚させようと言った。いろいろな口実をつけてペリア・ポカクはそれを断った。けれどもそんな逃げ口上は領主にはひとつも通用しなかった。領主はそれをみんなはねつけてしまった。ふたりは結婚することになった。領主は生まれや財産でひとをはかったりしなかった。たいせつなのはそのひとの能力とよい性格だった。

七人の妖精たちはペリア・ポカクに領主の結婚の申し込みを受け入れるように勧めた。七人の妖精たちは言った「これはあなたに与えられる名誉です。あなたはおきさきさまとあがめられるのよ」。とうとうペリア・ポカクは領主の願いに従った。そして七人の妖精たちはペリア・ポカクに天国に帰ってもよいかときいた。七人はペリア・ポカクのもとから去っていった。ペリアは妖精たちから受けた恩を思って胸がいっぱいだった。妖精たちに感謝しなからペリアは今日、きさきと呼ばれるようになった。

 ペリア・ポカクは領主に、おかあさんと腐った竹のように見える物をみんな宮殿に持ってこさせてくださいとたのんだ。人びとが腐った竹を運ぶためおおぜいペリア・ポカクの家へ向かった。そしてそれを特別の建物の中に積み上げた。多くのひとは、何も役にも立たない腐った竹を森からひろって来るなんて、ペリアはどうかしているよと言った。それは、たき木にもならなければ、犬に投げてやるのにも役に立たなそうだった。そんなにも朽ちて、腐って見えたのだ。人びとは竹をたくさん積み上げた。

そして積み総えた時、ベリア・ボカクから竹を割るように命令ざれた人びとがやってきた。どの筒にも、それはすばらしい織り物がはいっていた。その色は太陽の光のように輝いていた。これを見たひとは、またいっそう驚いた。そこには、ペリア・ポカクがついさっき仕上げたものとまったく同じ織り物があった。どの織り物もペリア・ポカクのものであることを人びとははっきり知った。そして、ペリアがふしぎな妖精たちのところでそれを教わってきたことを疑う者はひとりもいなかった。

 ダトゥ・テルナとペリアの結婚式はたいそうはなやかにおこなわれた。そしてふたりの家庭はますます幸せいっぱいになっていった。

 


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