1. 研修の概要 詳細
- ○研修期間:
- 2017年8月1日(火)~2017年8月25日(金)
- 午前9時00分 ~ 午後5時00分 (土日および8月11日~16日は休講)
- ○研修時間:
- 102時間
- ○研修会場:
- 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
本研修は2017年8月1日(火)から2017年8月25日(金)までの15日間,1日あたり7時間(前半4時間,後半3時間),合計102時間実施した。
会場は,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所マルチメディア会議室(304)を利用した。
2. 講師 詳細
- ○主任講師:
- 菅原由美(すがはら ゆみ)大阪大学大学院言語文化研究科 准教授
- ○ネイティブ講師:
- RAHAYU, Yosephin Apriastuti(ラハユ,ヨセフィン アプリアストゥティ)東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所外国人研究員/ Lecturer, Wisma Bahasa, Yogyakarta
- 文化講演者:
- 青山亨(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)
- 菅原由美(大阪大学大学院言語文化研究科准教授)
- 宮崎恒二(東京外国語大学名誉教授/同アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー)
3. 教材 詳細
- 『An introduction to Javanesev.1 grammar and reading』(菅原由美,Yosephin Apriastuti RAHAYU)
- 『An introduction to Javanesev.2 wordlists』(菅原由美,Yosephin Apriastuti RAHAYU)
v.1 はジャワ語文法解説に重点をおいた教材である。ジャワ語のスピーチレベルの説明をした後に,ンゴコ体(平常体)とクロモ体(尊敬体)の文を並置し,二つのスピーチレベルを同時に覚えてもらい,会話の相手に合わせて,レベルを変化させる訓練ができるように工夫した。ンゴコ体とクロモ体の変化系(ンゴコ・アルス,クロモ・マディヨ),上級敬語(クロモ・アルス)も適宜書き加えた。また,インドネシア語訳も記載し,インドネシア語との比較ができるように工夫した。v.2はv.1でスピーチレベルの使い分けが容易にできるように,2または3つのレベルを単語レベルで並置したリストを作成した。
4. 受講生詳細 詳細
受講生は12名。学部学生,大学院生,社会人,高齢者など様々な受講者が参加した。全員出席率はよく,12名中,11名が修了した。残りの1名は個人的な事情により,出席日数が不足したため,修了できなかったが,独自にテキストを使って,予習・復習をしていたため,最終的には非常に優秀な成績であった。
5. 文化講演 詳細
- 青山亨 8月4日(公開)「ジャワ語文学の歴史の概要」
- 古ジャワ語,現代ジャワ語文学の歴史についての講演。ジャワ語が9~15世紀の古ジャワ語と16世紀以降の現代ジャワ語に分かれる。古ジャワ語時代から文学が存在し,東南アジアで最も古く,厚い文学伝統をもつ。そのジャワ文学の主要なものについて,解説を行なった。多くの質問が出された。
- 菅原由美 8月18日「ジャワとイスラーム」(非公開)
- ジャワとイスラームの関わりの歴史について講義を行った。イスラームの流入から,マタラムとイスラームの関係,19世紀オランダ統治下におけるイスラーム,20世紀スハルト体制下のイスラームの様相について説明を行った。多くの質問が出された。
- 宮崎恒二8月22日「ジャワの暦と占い」(公開)
- ジャワの35日暦についての説明とその暦から生まれる運勢占いについての講演であった。また,そうした暦の生成と関わる神話についても解説があった。受講者は占いに大きな関心を寄せた。
6. 授業 詳細
8月1日〜8月18日まで文法解説及び文法問題練習をおこなっていた。8月21日〜22日は会話の練習をおこなった。自己紹介,買い物,知人の家への訪問などの場面において使われるジャワ語会話の練習をおこなった。自分に関する紹介文(10分程度)を宿題として作ってきてもらっていたので,23日に,それらを添削して返却し,各自に発表してもらい,読解と質疑応答を行った。24日は,午前にジャワ文字の練習をおこなった。午後にジャワ語文章読解として,まずは散文(ンゴコ体とクロモ体)の文章の読解に挑戦してもらった。25日は韻文読解として,まずジャワの韻文の種類について歴史を追って,説明し,韻文の一部を,辞書を引き,翻訳する練習をおこなった。最後に,それらの韻文の読誦の仕方をラハユ先生が実践して見せてくれた。
7. 研修の成果と課題 詳細
本研修は,ジャワ語の基礎文法習得を第一の目的とし,文法解説・練習の後に,いくつかの文章を読み,ジャワ語の辞書を引き,自分で読解を始めることができるようになるところまで導くことを最終到達点としていた。受講者は概ね,文法を理解し,スピーチレベルによる使い分けを理解し,辞書の使い方を覚えてくれたため,目標は達成できたように思う。まだ間違いも多く,使用できる語彙数に限りはあるが,受講生の学習意欲が非常に高かったので,予定通り,授業を進め,用意していた教材を全て終わらせることができた。
ジャワ語の教科書は,これまで日本においても,海外においても,十分なものが作られていないため,ネイティブの先生と議論をしながら,書いたが,まだよくわからないところも多々あった。そのことについては,受講者にも説明をした。
8. おわりに 詳細
インドネシア語がわかる人に,インドネシア語とジャワ語の比較をしてもらうために,テキストに,ジャワ語の文の横にインドネシア語文を書き添えた。また,日本人講師とネイティブ講師との会話はインドネシア語で行なっていた。そのため研修を終えた後に,受講者から,今回,ジャワ語とインドネシア語を一緒に勉強することができたと言われたのは,予想外のことであった。
(菅原由美)
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