1. 研修の概要 詳細
研修期間: 2015年8月3日(月)~2015年9月4日(金)(土曜日・日曜日は休講) 研修時間: 125時間 研修会場: 貸し会議室 大阪研修センター 十三 本研修は2015年8月3日(月)から2015年9月4日(金)までの25日間,1日あたり5時間(午前2時間,午後3時間),合計125時間実施した。
会場は,貸し会議室 大阪研修センター 十三 研修室Eおよび会議室Aを利用した。
2. 講師 詳細
- 主任講師:
- 橋本勝(大阪外国語大学名誉教授)(65時間担当)
- 講師:
- 中嶋善輝(大阪大学大学院言語文化研究科准教授)(60時間担当)
- 外国人講師:
- Myagmarsuren UUGANBAYAR(大阪大学大学院言語文化研究科特任准教授)(125時間担当)
- 文化講演者:なし
3. 教材 詳細
- テキスト1.『モンゴル語会話・講読 Mongolian Conversation and Reader』(橋本 勝,M.オーガンバヤル著,140p.)
- テキスト2.『明解モンゴル語文法 Comprehensive Grammar of the Mongolian Language』(中嶋 善輝著,125p.)
おもな教材は,今回の研修のために準備した上記2篇であるが,他に『モンゴル文語入門Introduction to Literary Mongolian』1996,大阪外国語大学(橋本勝,E.プレブジャブ著,162p.)を使用した。また『モンゴル語会話・講読』に基づき文字と発音及び第1課~第20課の会話の部分についてオーガンバヤル講師の吹き込みで受講生用に音声教材CDを作成した。録音と編集は大阪大学箕面キャンパス内のスタジオで行われた。なお,この言語研修 モンゴル語音声教材CD第1課~第20課は研修開始日に各受講生に配布された。会話・講読篇は先ず導入において現代モンゴル語(モンゴル国の標準語)の発音と文字のセクションを設けその後に第1課(知り合う)~第20課(ナーダム)を置いた。各課ごとに会話の部と講読(テキスト)の部に分け,そこに現われる語彙と日本語訳をつけそれぞれ語句(1),語句(2)とした。また各課に,内容の理解を確かめ深めるために練習問題(1)~(3)を加えた。モンゴル本来の伝統文化や民主化以降,さまざま変化してきた近年の日常生活の実情を反映するような内容をできるだけ盛り込むように努めた。
文法篇ではモンゴル語の根本構成原理である3品詞分類(名詞類,動詞類,不変化詞類)に基づいて章立て(第1部~第5部)をした。キリル文字正書法では接尾辞の付加,除去の際には音節構造を変化させ表記する体系であるためテキストでは出来る限り活用例を表にして載せるなど,語形変化に留意して記述した。
4. 受講生詳細 詳細
受講生は社会人1名,大学院博士後期課程学生1名,大学学部学生1名の構成で,人数は3名であった。2名は東京在住,他の1名は大阪在住のものであった。出席状況は極めてよく,うち2名は全125時間,皆勤であった。受講生全員,修了した。受講動機については1名は,博士後期課程で朝鮮語の文法を研究し独学で既にモンゴル語の学習経験がありアルタイ型の言語を研究の対象にしたいとするもの。1名は大学学部生であるが,本研修で学んだことを在籍の大学で継続してさらに発展的な学習も行える環境にあり専攻言語に匹敵する十分な学習を行いたいとするもの。残る1名は東洋学専門の研究図書館で司書として勤務し主として中国語図書を担当するが,傍ら東北アジア諸語としてはモンゴル語,満洲語を担当するもレファランスの対応で自力で書誌を判読することが出来ず苦慮してきた。さらにチンギス・カン時代より使用されてきたモンゴル文字の読解を学べるとするもの。受講生はそれぞれ,具体的な動機を持ち各自の目標をしっかり持っていることがよく感じとれた。
5. 授業 詳細
受講生が少人数ということで会場もそれに合わせてこじんまりした研修室E(1日だけ会議室A使用)が用意された。外国人講師,日本人講師が黒板(ホワイトボード)を背景に受講生と間近で相対面して授業が行なえる形をとった。第1週の初日には発音と文字(キリル文字)の説明をし,テキストに沿っておもに橋本が会話と講読を担当し,(最後の週はチンギス・カン以降使用されてきた伝統的なモンゴル文字とモンゴル文語の概説をしローマ字転写及び文語文の読解の手ほどきをした)中嶋が文法を担当する形で進めた。オーガンバヤル講師とのペアーで毎日,橋本と中嶋は連携しつつそれぞれ授業に当たった。
文法の授業ではテキスト上の例文を逐一板書し分析しながら,ネイティブ講師とのやり取りを交えつつ急がず丁寧な解説に努めた。単元ごとに受講生に質問の有無を確認した後,ネイティブに発音指導をしてもらう要領で進めた。授業最終日にはちょうどテキスト全てを解説し終え,最終試験で締めくくった(最終試験の1週間前に模擬問題を配布し通知した)。
6. 研修の成果と課題 詳細
連日の猛暑の中で受講生3名は,皆モンゴル語の研修に終始,意欲的に取り組み研修内容をこなし,この研修を無事に終えて修了証書を手にしたことは一つの成果といえる。橋本は第4週の最終日に会話・講読のテキストを終了したところで書き取りテストを行った。4つの円唇母音の聞き分け,実際の発音と正書法上とのズレなどに不正確な点も見られヒアリングの理解度は十分とはいえず課題は残ったが,ある程度止むを得ないこととも思われた。最終の1週間は受講生の要望でもあったが,『モンゴル文語入門』を受講生に配布しテキストとして使用し伝統的なモンゴル文字の読解とモンゴル文語の文法の簡潔な概説をしつつ受講生にモンゴル文字及び文語文の例文を板書させ習得出来るように努めた。時間は限られていたが,伝統的モンゴル文字・文語の読解の手ほどきが出来たのは幸いであった。
文法の面で成果としては,受講生が最終試験に全員合格点(60点以上)を得るレベルに達したこと。最終試験の内容は,テキストの中から(p.1~79(命令形)まで)からランダムに抽出した10の例文を読解するもの。
今後の課題として会場にはなるべく固定されたボードのある部屋を選ぶべき点があげられる(今回は白板がキャスター付きのもので,ぐらつき書きにくかった)。
会場は,交通の便の良い大阪市内の十三での開催であったため,苦情はなかった(2013年ウズベク語研修(於 大阪大学箕面キャンパス)では受講生からアクセスが大変だとの声を聞いた)。
7. おわりに 詳細
夏の暑い最中の5週間の研修,お蔭様で受講生,講師ともに支障なく無事に終えることが出来き,一定の達成感を得たように思う。研修以前より研修期間を通じてお世話になったAA研,事務担当の木本真弓さんに厚く感謝の意を表します。また教材の校正段階でお世話になったAA研の山越康裕准教授にも謝意を表したい。
(橋本勝)
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