1. 期間・時間と場所 詳細
- ●期間: 2012年8月6日(月)~8月31日(金),4週間 計20日(土・日は休み)
- ●時間数:1日あたり5時間(午前2時間,午後3時間),計100時間
- ●会場: 東京外国語大学AA研マルチメディアセミナー室(306室)
※8月13日~15日の3日間のみ,ルミエール府中(府中市市民会館・中央図書館 複合施設)
2. 講師 詳細
- ●日本人講師:
- 澤田 英夫(AA研准教授):文法(32時間)・講読言語編(30時間)
- 斎藤 紋子(東京外国語大学非常勤講師):講読文化編(30時間)・読解力試験(2時間)
- ●ネイティブ講師:
- トゥザライン(東京外国語大学大学院修士課程在籍):文法・講読言語編・文化編・読解力試験(94時間)
- ●文化講演講師:
- 寺井 淳一(東京外国語大学大学院博士後期課程)
- 井上 さゆり(大阪大学大学院言語文化研究科准教授)
- 根本 敬(上智大学外国語学部教授)
3. 受講生 詳細
本学学部生3名,本学大学院生1名,他大学学生1名, 他大学科目等履修生1名,社会人1名 計7名
時々欠席する受講生もいたが,全員が最後まで受講し,修了証書を授与された。
4. 文化講演 詳細
- ●寺井講師「パガン遺跡の楽しみ方」8月10日(金)14:20-16:30 ※一般にも公開(AA研フォーラムと共催)
- パガン遺跡をより深く楽しむのに役立つ知識として,寺院・仏塔を彩る壁画やレリーフなどの題材にどのようなものがあるかを概観し,その表す意味を考察した。
- ●井上講師「ビルマの古典芸能」8月17日(金)14:20-16:30
- 現代に伝わる古典芸能の種類(舞踊,糸あやつり人形劇,音楽など),伝承の行われる場(文化大学と民間での伝承),伝承の方法(直伝と記譜)など,現代ビルマにおける芸能の営みについて概説した。
- ●根本講師「現代ビルマの政治状況―歴史的視点から昨今の情勢を読み解く」8月24日(金)14:20-16:30 ※一般にも公開(AA研フォーラムと共催)
- 2011年3月の「民政」移管以来この国に起こった前向きの変化の実態とその理由,中心人物であるアウンサンスーチーの思想と彼女の果たし得る役割についての問を軸に,歴史的視点からこの国の現代政治を読み解いた。
5. 講義内容 詳細
●文法
各週の月~木に2時間ずつ実施し,全23課をあますところなく学習した。最初の7課「書き換え編」では,口語体と文語体の文法形式の対応関係を示し,口語体の文章を文語体に書き換える実習を通して理解を深めた。続く16課「解説編」では,文章に多く見られる複文構造を形成する文法形式を中心に,文法事項の用例を和訳することを通じて,文語体の文法への理解を深めるようにした。
文法形式の意味・機能の解説が最大公約数的なものであったため,受講生が実際の文章への適用にやや手こずっていたふしがある。今後より柔軟に適用できるようになることを期待したい。
●講読(言語編)
1週目と2週目の毎日3時間ずつ実施した。
現代の著名な言語学者・文筆家であるマウンキンミン・ダヌビューのビルマ語に関するエッセイ9編を読んだ。初頭音有声化の条件と原因,複合語,移動動詞といった文法的なトピックの文章だけでなく,呼びかけ語としての親族・職業名称,言語の性差・地域差,パーリ語借用語に起こった音変化,文章におけるコノテーション(含意)など,文法の授業ではカバーできないトピックの文章も選び,読解力の向上と合わせて広範囲なビルマ語の知識が得られるよう心がけた。
「文法」の項で述べた,実際の読解への文法知識の適用に関する所見は,講読においても等しく当てはまる。同様に,この段階では,辞書に書かれた語義からテキスト内の実例に適合する「こなれた」語訳を導き出すことが,ともすれば十分にできていなかった。この傾向は,むしろ専攻語の学生に顕著であったように思う。語学学習以外の「経験値」の差であろうか。とは言え,決して易しいとは言えないテキスト計9編をほとんど飛ばすことなく読み切ったことは,研修の前半という時期を考えれば,十分健闘したと言えるだろう。
●講読(文化編)
3週目と4週目の毎日3時間ずつ実施した。
テイッパン・マウンワのビルマ文化に関するエッセイ計6章と,ミャンマーのムスリム著述家列伝から2人分を選び,ある程度のスピードで文章を読んでいくことに重点をおいた。講読文献がビルマ植民地時代の内容であったので,背景説明を何度か加えるようにした。また,文章を読んでいくことに偏らないよう,文章内に出て来た語句を用いて,毎日最後に作文の時間を設けた。受講生の作った文章を皆の前でトゥザ先生に添削してもらうことで,自ら作った文章のみならず他の受講生の作文からもビルマ語らしい表現を学べるようにした。
通常の3・4年生の授業に比べても,テキストの内容は所々普通のネイティブも知らない事柄を含むものであり,進度も早かった。かなりタフであっただろうと推察されるが,受講生は毎日予習を欠かさず熱心であった。研修開始最初にビルマ語専攻の受講生と学外の受講生との間に見られた日本語訳のレベルのばらつきも,文化編に入った3週間目くらいには殆ど差がなくなったように思う。作文に関しても,最後の頃には各受講生が自分の言いたいことをそれなりにビルマ語の文章で述べられるようになった。
(澤田英夫)
Copyright © 2010 Research Institute for Languages and Cultures of Asia and Africa. All Rights Reserved.