1. 期間 詳細
8月4日から9月5日までの五週間(土日は休講)行なわれた。毎日5時間の授業(午前中は2時間,午後は3時間)で, 合計125時間の研修である。会場として,AA研のマルチメディア会議室を使ったが,8月の11日から13日までの3日間は, 大学が一斉休暇に入ったため,府中市が生涯学習センターで授業を行なった。
2. 講師 詳細
今回の研修では,AA研教官の呉人徳司の主任講師として,また和光大学の非常勤講師の富川力道氏, 国際モンゴル学院長のKhunbish Delgermaa女史が講師を担当した。実は,今回の担当講師3人ともモンゴル人である。 呉人と富川氏は日本に帰化し,20年近く日本に住んでいるが,Khunbish Delgermaaさんは今年の3月末にモンゴル国の ウランバータル市から日本にきた方である。
3. 教材 詳細
教材の作成を呉人とKhunbish Delgermaaさんを担当し,2007年の冬から準備を始め, 2008年の5月から本格的に編集作業に入った。Khunbish Delgermaaさんがモンゴル国で出版したモンゴル語の 学習本を参考にしながら,モンゴル人が日常生活でよく使う表現を多く盛り込んだ,会話に重点を置いた内容の 教科書『モンゴル語で話そう』を仕上げた。また,教科書の末尾に「モンゴル語―日本語語彙リスト」として, 約1500の単語を載せた。この教科書の最大の特徴といえば,会話練習の内容を容易に理解するために, 多くのイラスト絵が描かれているところである。また,教科書の本文,会話と会話練習の内容,単語, 語句を吹き込んだ音声教材(CD2枚)を用意した。
4. 受講生 詳細
11名の受講者は,現役の大学生,博士課程の学生を初め大学の教官,大学の事務官,日本語の教師,会社員, 定年退職され,モンゴルなどで奉仕活動をして方までおり,モンゴル語を勉強する動機,目的もさまざまである。 来年にもモンゴル国に行き,ボランティアとして日本語を教えるためにモンゴル語を勉強したいという方が一人もいれば, 数年後大学を卒業してから,モンゴルに行き,モンゴルのことを色々勉強したいという学生もいた。また,大学の授業の実習に 参加するため,最終の一週間の授業に出られず,モンゴル国に飛んだ学生が一人いた。受講生の中に, 東京外国語大学の中国語課と朝鮮語課の学生2名も含まれている。
5. 文化講演 詳細
文化講演は8月15日と22日の二回に亘って行なわれた。8月15日の午後の二時間は,研修担当の富川さんが モンゴルの遊牧生活,伝統相撲について講演し,ご自身がモンゴルの各地で撮った画像,映像を見せながら分かりやすく 説明を行なった。8月22日の午後の二時間はモンゴル国の馬頭琴演奏家で,今は主に日本で演奏活動を行なっている Bat-Erdeneさんがモンゴルの民族衣装を身につけて登場し,馬頭琴の実物を見せながら馬頭琴の歴史,演奏法などについて説明した。 また,馬頭琴の美しい調べを披露し,モンゴルのさまざまな曲のほか, 日本の「荒城の月」を弾き,受講生たちに大きな感動を与えた。
6. 講義内容 詳細
モンゴル語はモンゴル国のほかに,中国の内モンゴル自治区,新疆ウイグル自治区,甘粛省,青海省, 吉林省などに居住するモンゴル人によって話されている。また,ロシア連邦のブリヤート共和国などで話されている ブリヤート語,カルメイク共和国で話されているカルメイク語も広い意味ではモンゴル語の方言に数えられる。 今回の研修では,モンゴル国で使われている「ハルハ・モンゴル語」を学習対象とした。 最初の2課はモンゴル語の実際の発音の練習を行なった。日本語にはoとu に対して,モンゴル語には4つの円唇母音があるので, その区別が学習者にとってなかなか難しく,講師の3人が繰り返し発音し,受講生を指導した。子音に関しては, rとlの違いについて,皆さんが頭では理解していたが,実際の発音には苦労する人が多かった。 午後からキリル文字を教え,母音,子音の発音を繰り返し,受講生に一人ずつ発音してもらい,また, いくつかの挨拶表現を教え最初の一日を終えた。最初の一週間はモンゴル語の正書法,母音調和,名詞の格など 一番基本的な内容を教え,また日常生活で使う挨拶表現など教え,第2課までしか進まなかった。 しかし,第二週からはペースが速くなり,午前中は文法を中心に教え,午後は講師の3人が受講生を三つのグループに分け, それぞれ一つのグループを担当し,会話練習を繰り返す方法をとった。また,ほぼ毎日宿題を出し,新しく覚えた単語, 語句を使った文を作ってもらい,次の日の最初の授業に自作を発表するというやり方で,少し緊張感を持たせ,短期間で モンゴル語の基本会話を身に着けることを目指した。五週間は,受講生たちの必死の努力と情熱に支えられ,本研修は成功裏に修了した。 研修の最後の日,受講生の中から,来年はモンゴル語の中級コースを開いてくれないかという要望も出され, 皆さんが授業の終了を惜しむ声が聞こえた。
(呉人徳司)
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