教授
東京外国語大学
アジア・アフリカ言語文化研究所
〒183-8534 東京都府中市朝日町 3-11-1
Email: mmine[at]aa.tufs.ac.jp
個人ウェブサイト: http://www.aa.tufs.ac.jp/~mmine/index-j.html
研究テーマ:タイ語学,東南アジア諸言語,オーストロアジア語族
私は,これまで主として東南アジア大陸部から南アジアの諸言語についてフィールドワークを行い,そこで得られたデータと経験を基に,この地域の言語に共通して認められる特徴について研究を進めてきました。
東南アジアおよび南アジア地域の諸言語を調べてみると,地域ごとに特定のパターンが共有されていることがわかります。これを言語の「地域特徴」といいます。例えば,声の高さを変えることで単語の意味を表す「声調」言語は,中国語だけでなく,中国周辺の東アジアから,東南アジア大陸部,インド東北部(アッサム地方)にかけて,広く分布しています。一方,インドを中心とする南アジアには,声調言語はほとんどなく,「主語+目的語+述語」という日本語に似た語順の言語がほとんどです。
私インドでは,1990年代に調査を行ったインド東部(ビハール州,ジャールカンド州)のサンタル語についての語彙・文法記述をまとめて出版し,さらに過去の言語資料のコーパス化と分析を行ってきました。また,当時は入域が難しかった東北インドのアッサム地方,メガラヤ州のカシ語の調査を行いました。カシ語はインドにありながら,東南アジアのクメール語(カンボジア語)など,「モン・クメール語族」の特徴を持つ興味深い言語です。
グローバルCOEプログラム「コーパスに基づく言語学教育研究拠点」(2007年度~2011 年度)では拠点リーダーを務め,タイ語を中心とした電子辞書の整備・公開を行いました。電子辞書はタイ語の研究教育に役立つだけでなく,テキスト分析や自動翻訳ソフト開発の点でも大きな発展性を持っています。
タイ語やカンボジア語など,東南アジア大陸部の言語の多くは「孤立語」と呼ばれ,日本語の「てにをは」のような格標識や動詞の活用がありません。一見単純な言語に見えて,こういった言語の研究を近代的な言語学の手法で分析することは,実は簡単なことではありません。そこで最近は,タイ語を中心に語彙情報と文法分析との関係を見直しています。タイ語の分析を行うことは,ひるがえって日本語の,さらには言語一般の記述と分析のあり方を見直すことにつながります。
近年は,「コーパスに基づく言語研究」の拠点リーダーとしての経験を活かし,タイ語の話しことばコーパスの構築とその分析を,タイ人研究者と共同で進めています。話しことばの録音と文字起こししたデータを用いて語用論的な観点から談話分析を行うのですが,データからたくさんの貴重な発見があるので,この研究を発展させたいと考えています。
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