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教育セミナー >> 2007年度感想・報告 >> 田中 知樹
2007(平成19)年度
田中 知樹(慶應義塾大学文学研究科東洋史専攻前期博士課程)
 セミナーに参加させていただき、この四日間は自分にとって大変刺激になった貴重な時間となった。そのいくつかをここに記すことで、今一度セミナーの総括として振り返りたいと思う。

  まず講師の先生方の講義に関して、それぞれの先生方のお話は地域、時代ともに多岐にわたっており、受講生の興味や研究範囲に可能な限り応えようという配慮がなされていた。お話が多岐にわたっていた故に、私の知識不足もあいまって、自分の研究範囲と異なる分野の先生方のお話はやはり少々難解に思われ、ついていくのが精一杯という状況にもしばしば陥った。しかしながら、一方で異なる分野であるからこそ、初めて見た先生方の研究の手法は私にとって斬新で、自分の研究に何かを結びつけようという視点で聴講しようと努めたことで、今後自分の研究にも新しい風を呼び込むことができるのではないかと感じている。

  このセミナーにおいて私が最も考えさせられた問題は、地域や時代という枠を超えて私達全員が常に心の中に置いておかなければならないであろう、すなわち言葉の使い方という問題に関してであった。受講生の発表において、何の気なしに便利であるから、あるいはもっともそうであるからと使われたタームに対しての先生方のご指摘は、私には何が誤っているかすらも気づくことができなかったという反省と、今後自分の修論で使うであろう言葉には、否が応でも多大な責任がつきまとっていくのだという自覚とを、荒々しく覚醒させることとなった(例えば、「大衆」などがそうであった)。その語の成立に関する歴史的な背景を知っていなければおよそ使いこなすことができないようなタームと、歴史学を志すすべての者は向かい合っていかなければならない。そして、おそらく自分の研究範囲外の書物を読んでいるだけではこのような語を使いこなせるようにはならないのである。言葉には必ず成立するにあたってその背景がある。私は、このような責任を伴う言葉を使う代わりに、他の言葉を回りくどく使って表現したいことの焦点をあやふやにするような論文は書きたくはない。幅広い知識を身につけ、言葉を正確に用いることの重要性を自覚して、常に推敲を怠ることなく修論にとり組んでいきたいと、このセミナーでは自分の決意を新たにすることができた。
 

 

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