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教育セミナー >> 2007年度感想・報告 >> 竹村 和朗
2007(平成19)年度
竹村 和朗(平成17年6月カイロ・アメリカン大学人文社会科学部社会学・人類学・心理学・エジプト学科社会学・人類学専攻修士課程修了)
 2007年9月21日から四日間、本セミナーに参加させていただきました。中央線のダイヤの乱れがあったり、外語大キャンパスが遠くて朝がきつかったりと予想外のこともありましたが、有意義な時間を過ごさせていただきました。関係者の方々、どうもありがとうございました。以下、セミナー参加の報告です。
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  本セミナーの一番の特徴は、担当スタッフおよび受講生の学問的背景の多様さであろう。同じ「中東」とはいえ、地理的にはモロッコからトルコ、エジプトやパレスチナ、イランと幅広く、時間的にも現代研究から近代や中世などの歴史研究までを含む。また「イスラーム」を繋がりにして、東南アジアの研究者もみられた。分野も、歴史学や政治学、人類学や思想研究、イスラーム法学、文学など様々である。

  そこから得られるものは何だろうか。まず、他の学問分野、自分の研究対象ではない地域について改めて学ぶ機会となることが挙げられる。自分自身、現代エジプトを研究するためには近代史の理解が不可欠と思っていたところであったので、トルコやイランの近代史に関わる発表を改めて聞くことができよかった。エジプトについても、19世紀後半に起きた「法の近代化」を扱った堀井氏の発表では、通常の歴史叙述とは異なる法学独自の議論の組み立て方が興味深かった。また、特に立憲革命期イランのウラマーに関する先行研究をまとめた受講生の遠藤氏の発表からは、研究のオリジナリティは先行研究の丁寧なまとめから生まれるという、研究の基本姿勢を改めて教えられた。大塚氏の発表からは、他分野の専門家を前にしたときの人類学者の発表方法について学ぶことができた。政治学の見市氏、光成氏の発表では、現地の資料が広範に収集・整理されており、同じ現代研究として大変参考になった。

  セミナーで出会うのは知識だけでなくい。勿論そこには「人」がいる。学部や大学、ディシプリンの垣根を超えた、普段は交流する機会の少ない人たちとの出会いも貴重である。エジプトを研究対象にしている者にとって、イランやトルコ、パレスチナやマグレブ諸国の研究者・学生と知り合う機会は案外少ない。いわんや東南アジア、である。また本セミナーには、九州や京都など関東圏以外からの参加者もいて、修士から博士、あるいは現在は大学に所属していない者も参加している。出会いの意外さ、面白さは、確かにある。

  こうして他分野の知識に接し、他地域の専門家たちと交流する中で、自分の持っている知識や方法論の強みと限界について考えさせられた。自らの立ち位置の再確認を迫られた、ともいえるだろう。ある地域、ある国を研究する際に、まずは、自分が今まで考えてきたやり方だけでなく、他にも色々なアプローチがあることを認識する。その上で、自身の研究の利点や良さを主張し、磨き上げていく必要性を改めて感じた。

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  ということで、研究に踏み出したばかりの修士の方、修士論文をなんとかまとめたばかり博士の方にとって、とても有意義な時間・場になると思います。みなさん(企画が続いているうちに)、ぜひぜひ参加してみてください
 

 

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