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教育セミナー >> 2005年度感想・報告 >> 幸加木 文
2006(平成18)年度
幸加木 文(東京外国語大学大学院地域文化研究科)

 本年度の中東・イスラーム教育セミナーは、私にとって2度目の受講となった。昨年と違う点は、今回は研究報告をする機会をいただいたことであった。修士論文の中間報告という形で構想も内容も不十分な段階での報告となったが、今後論文の目標と論旨を明確にし、まがりなりにも執筆していく際の指針となるコメントや指摘をいただくことができ、個人としては非常に意味ある得難い経験となった。

  本セミナーでは、学術的な発表をする際に最も基本的なルールである「規定の時間を厳守する」ことをまず教わり、かつそれを可能にするための要領を学んだ。また、考え抜けず保留にしていた問題点や論文上の鍵となる用語の定義などについて、多様な専門的観点から指摘を受け、再度曖昧な理解をただしその特色を捉えなおす必要を痛感し、比較の視座に耐えうる内容理解とその説明ができる力の修得という課題にも気づかされた。研究対象へのアプローチ、方法論上の迷いについては、逡巡はむしろ当然とのコメントに安堵するとともに、自己の課題を相対化し改めて取り組む方向性を確認することができたように思う。

  さらに、他の受講生の発表と質疑応答、および多忙なスケジュールを縫って行われた先生方による講義は、昨年以上に、修論に取り組む現段階で抱えていた大小様々な疑問、問題に対し、大変示唆的であった。地域のコンテクストによる名称表記の処理法や、効果的なプレゼンの構成など、技術的に有益な数々の助言に教えられ、また、詳細かつ具体的な事例によるご自身の研究史に関する講義からは、手法と対象を見る眼差しについて深く考えさせられた。そして、無論それぞれの研究分野・時代にもよるであろうが、これから中東・イスラームに関する研究に取り組む上で避けて通れないと思われる、提起された難しい諸課題は、大変刺激的であると同時に、容易には解けない宿題をいただいたようでもあった。総じて、多くの先生が異口同音に強調されていた、根本的な問題意識を常に問い直し、時系列、領域、一論文それぞれにおいて細部と全体の連関を意識しながら、自己の研究・勉強を進めることの大切さを改めて認識した次第である。

  初日に本セミナーの趣旨は「知的向上のために活用すること」との説明がなされ、拙くとも積極的に参加することを自らに課したが、果たして私はセミナー全体の有意義な議論に関与し、知的に向上し得ただろうか。少なくとも、この場で得た様々な示唆や知見を今後に活かせるよう蝸牛の歩みで精進したいと思う。

  末筆ながら、今回も先生方、スタッフの皆さまによる落ち着いた運営・進行と、変わらず行き届いた配慮のおかげで、とても楽しく充実した4日間となり、貴重な勉強の機会を与えてくださったことに深く感謝申し上げたい。 

 

 

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