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教育セミナー >> 2006年度感想・報告 >> 林 芳哉
2006(平成18)年度
林 芳哉(日本福祉大学大学院国際社会開発研究科)

 今回、中東・イスラームを中心に研究に取り組んでいる方々の話を直接聞くことができる絶好の機会だと思い、参加させていただきました。4日間のプログラムは、受講生の発表と研究者の先生方の発表で構成されており、連日いろいろな研究について、見て聞いて考えることができ、大変充実した時間になりました。発表後には質疑応答の時間がかなり余裕をもってとられており、疑問を持った点や興味のある部分についてさらに聞くことができました。私にとって未知の領域の話が大半を占めましたが、大いに刺激を受けた4日間でした。

  私は2年間シリアのダマスカス歴史文書館にて歴史資料の保存・修復の指導をしていました。文書の長期保存の観点から、シリアの行政文書、とりわけオスマン帝国期のシャーリア法廷台帳・証書群などを中心に、劣化状態を見たりして文書を保存すべき「紙」として観察してきましたが、これらの文書がテキストを研究する方にとってみたらどのような価値を持つものなのだろうか、という素朴な疑問を持っておりました。そして中東・イスラームに関する歴史資料は、現在の地域研究においてはどのように扱われているのだろうかというのを、今回のセミナーの発表や講義を通して自分なりに考えてみたいと思っていました。

  セミナーを通して様々な方の話を聞きながら、地域研究の対象となる資料についてあれこれ考えをめぐらすことができました。永田先生が語られた、トルコ地方博物館の文書をノートに書き写したものから研究を展開された話は、現在においても文献が語ってくれることの可能性の大きさを少し垣間見ることができた気がいたしました。また、地域研究の資料として新聞やインターネットなどのメディアも研究の手段として使用されうることを知り、それらの資料価値についても考えていく必要性を感じました。

  一番考えさせられたのは、研究の方法についてです。研究対象に向かう切り口の違いから見方が変わってくることは、今回の教育セミナーの発表や質疑応答時の議論の中で強く意識させられました。それと同時にいくつかの研究方法の中で自分の立場として選んで築いていくことも議論に参加していくには大切なことなのではないかと感じました。

  私は自分の拠りどころとなるのは、物としての「紙」「資料」なので、いろいろな視点の違いにも関心を広げつつ、「紙」であるところの歴史資料を通してこれからも中東・イスラームを見つめていきたいと思っています。

  通信制の大学院にて勉強している自分にとって、受講生の皆さんと顔をつき合わせて時間を共有できたことは、もうひとつ嬉しいものでした。先生方、事務局の方々、受講生の皆さん、本当に貴重な機会をありがとうございました。


 

 

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