Top page of the Project MEIS at TUFS
 
教育セミナー >> 2006年度感想・報告 >> 原田 恭介
2006(平成18)年度
原田 恭介(同志社大学神学研究科)

  このセミナーで最も評価したい点は、セミナーで講義された先生方が、それぞれの研究の背景や問題意識を踏まえながら、専門外の者たちができるだけ議論についていけるように話を進められたことである。その結果、門外漢ながら私は、先生たちが従事している研究の「面白さ」や「愛着」といったものを十分に感じることができた。ごく一例を挙げれば、永田先生は、明治維新変革を準備した豪農に対する関心がどのようにトルコのアーヤーン研究に繋がっていったのかということや、現地で資料を収集する際に得た経験などを主体的に話された。臼杵先生は「忘却のバグダード」を導入として、「東洋系」のユダヤ人の活動に光を当ることで、「イスラエルのユダヤ人=ヨーロッパ系」というパレスチナ‐イスラエル研究における固定観念の解体を丁寧に議論してくださった。学問をやる以上、専門分野の最先端の研究に取り組む必要性については言を俟たないが、研究者の対象に対しての基本的な姿勢や愛着といったことを知る機会は、私にとっては思いのほか少ない。どのような態度・心構えで研究に接するべきかについては、対象地域や方法論を超え、学生に共通する悩みだと私は思う。この意味においても、セミナーでは励まされ勇気づけられた参加者も多かったのではないだろうか。

  今回私は、修士論文の構想の一部を発表させていただいた。私の場合、宇山先生という専門家の意見を仰げたのは極めて幸運であったが、他の先生方や受講生からの意見・コメントなども、普段の研究科でのゼミなどからは得ることのできなかった非常に貴重な収穫であった。結論を言うと、本セミナーで発表すること自体は「百利あって一害なし」である。受講生には是非とも発表することを勧める。

  セミナーに対して二点ほど意見したい。一点目は、様々な地域・学問分野の専門家が集まっているにもかかわらず、イスラーム学プロパーの話しが全く聞けなかったのが残念だったことである。イスラームを真正面から見据えた伝統ある諸学問に全く触れることなしに「イスラーム研究とは何か?」と問うのは、やはり片手落ちではないのかと思った。もう一点は、受講生の幸加木さんが指摘された事と関連するが、小論や発表のレジメに添付を指示された「参考文献」について、どれだけの範囲のものをどのような様式で扱うのか(指定字数に含めるのかなど)を明示してもらうと、受講生としてはありがたかった。

  最後に言っておきたいのは、セミナーに参加し専門的な知識を得たこと以上に満足したのは、公式/非公式の懇親会が充実していたおかげで、先生方や受講生たちと実際に言葉を交わすことができ、それぞれのあいだで人的な繋がりが築けた事である。学問は対人的な教授によって伝達・発展していくものだということを、改めて認識することができた。私にとっては、非常に充実した四日間のセミナーであった。

 

 

back_to_Toppage
Copyright (C) 2005-2009 Tokyo University of Foreign Studies. All Rights Reserved.