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教育セミナー >> 2006年度感想・報告 >> 飯塚 正人
2006(平成18)年度
飯塚 正人
「イスラームとムスリム――地域研究でイスラームを扱う困難について」

 ムスリムの信仰の強さは本人以外の誰にも測れないし、考えようによっては本人にすら測り得ない。地域研究でイスラームを扱うときに直面する困難は、何よりもこの点に由来する。ムスリムの歴史や政治経済がどこまでイスラームと関係しているのか、研究者には容易に判断できない。にもかかわらず、地域研究者はイスラームについて語らざるを得ない。なぜなら、研究対象であるムスリム自身がそれをイスラームに基づく行為だと主張するからである。当事者の主張を肯定するにせよ否定するにせよ、研究者には一定の論拠が必要になる。
  だが残念なことに、この困難を克服する特効薬は存在しない。地域研究者にできることは、こうした困難を自覚したうえで、研究対象となるムスリムの様々な行為をどこまでイスラームで説明できるか、説明すべきか、常に問題設定そのものの妥当性にまで立ち返って考え続けることでしかないだろう。本発表では、イスラーム世界の紛争やムスリムによる「テロ」をイスラームの教義から説明しようとする試みへの疑問(「テロ」をイスラームの教義と直接結びつける根拠・前提はどこにあるのか)やイスラームの政治利用を論証する難しさなど、いくつかの具体例を挙げながら、こうした困難を克服する方策を受講生とともに考えた。

 

 

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