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教育セミナー >> 2005年度感想・報告 >> 外山健二
2005(平成17)年度
外山健二(筑波大学大学院博士課程人文社会科学研究科)
 平成17年度中東・イスラーム研究セミナーを受講した際の感想、評価として、研究姿勢と知的・人的交流の重要性の再認識がある。このセミナーの形式は、研究発表とその後の質疑応答という研究会スタイルであり、研究者としての基本姿勢を築くことを主眼とするものであるように思えた。その基本姿勢から知的交流が生まれ、知的交流と同時に、人的交流の必要性をも痛感するセミナーとなった。

 四日間という日程において、受講生(大学院生中心)が研究発表・報告が前半を占め、後半では講義担当者(担当教員)が研究発表形式で、セミナーは進められた。初日において、講師と受講生から自己紹介があり、各自の問題意識・研究領域が提示され、セミナーへの意気込みを感じることができた。その問題意識から、研究発表においての質疑応答は活発に議論され、知的交流の場となった。以下、紙面の都合上、簡単に報告させていただき、感想を述べさせていただく。

 第一日目の大塚和夫先生(東京外国語大学教授)からは、中東・イスラームというフィールドに対し、さまざまなアプローチの布置状況が提示された。特に、ムスリムの多様性において、「生活の中で語られ、実践されるイスラームの微妙な差異への着目」は個人的・特殊的要因による差異への着目でもあり、社会(学)的要因を導入した分析を紹介した部分は刺激あるものであった。

 第二日目の大塚修氏(東京大学大学院)の研究発表に触れておきたい。タイトルは「『集史』から『選史』への歴史認識の変容」であり、『集史』から『選史』への変容をセルジューク王朝期を中心に議論された。「歴史」か「物語」かというニューヒストリシズムの視点を含んでおり、大変興味ある研究発表であった。また、イスラーム世界の参詣研究の第一人者である大稔哲也先生(九州大学助教授)の「歴史研究とフィールド」においては、カイロ「死者の街」が提示された。フィールドワークと文献研究の総合という問題提起は、文学・文化研究の問題提起とも連動する課題であった。

 第三日目の黒木英充先生(東京外国語大学教授)の「多面体としてのアラブ」は、「見えなかったものを見えるようにすること」が研究の一側面であることを踏まえ、ダンズィマート以前の「ジズヤ台帳」の徴収の実態を語られた。詳細な具体論であり、抽象論で終わることなく、研究のあり方を提示された。

 第一日目の終わりには、懇親会が開催され、知的交流に加え、人的交流の場となった。知的・人的ネットワークが研究において重要な位置を占めることを実感し、有意義なセミナーに参加させていただいた。最後になるが、所長の内堀先生や事務局の村上さんを初め、諸先生方、貴重なお時間をありがとうございました。
 

 

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