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教育セミナー >> 2005年度感想・報告 >> 近藤洋平
2005(平成17)年度
近藤洋平(東京大学大学院人文社会系研究科)
 去る7月26日から4日間、東京外国語大学アジア・アフリカ研究所が主催する「中東・イスラーム教育セミナー」に参加した。

 予想したとおり、参加者の多くはいわゆる地域研究の枠組みで研究をする学生であった。前近代の思想研究という、ともすれば地域研究とは相容れない分野で活動をしている筆者は、はじめはこのセミナーに場違いな気がした。しかしながら、逆にとても貴重な時間を過ごすことができた、と今は考えている。

 本セミナーを通して筆者が痛感したのは、文献研究の限界と、文献研究を補完するためのフィールドの必要性(あるいは、フィールドの限界と、フィールドを補完するための文献研究)である。思想研究は文献が主要な資料であり、文献をもとにして思想は究明される。しかし、思想研究の課題の一つとして、その思想が人びとにどのような影響を及ぼしたか、あるいは及ぼしているか、換言すれば書かれたイスラームがどのように生きられるイスラームとなるのか、を明らかにすることが挙げられる。この問題を解明するためには、文献のみでは不十分である。その不十分さを補うのが、フィールドでの活動であると思う。つまり、文献を用いた研究とフィールドを主とした研究は相容れないものではなく、補完的な関係であり、一方は他方の研究を決して無視することはできないのである。基本的ではあるが極めて重要なこのことを本セミナーで気づかされ、非常にいい機会をもてたと感じている。

 先生方の講義は、そのどれもが最新の研究成果をまとめたものであり、きわめてレベルの高い内容であったようにみえる。またフロアからの質問に対しても懇切丁寧に答え、参加した学生にできるだけ多くのことを理解してもらいたい、という姿勢が見てとれた。

 セミナーに参加したことによって得られた貴重な経験として、中東・イスラームに関心を持つ同世代の学生と知り合い、意見を交換することができたということを挙げておく。たとえ関心や方法論が異なっていても、同じ地域を研究する人と接し、意見を交換することは自分の研究に大いに役立つ。中東・イスラームを研究している他大学の学生と接する機会は、普段の生活では少ないので、その機会を提供してくれた本セミナーに感謝している。

 運営方法に関してはさまざまな問題があるだろうが、それらが解決され、この教育セミナーが中東・イスラームを研究しようとする学生を支援する場として、数年後も開催されていることを祈念する。
 

 

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