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教育セミナー >> 2005年度感想・報告 >> 黒木英充
2005(平成17)年度
黒木英充
「多面体としてのアラブ−研究方法自体の多様化と深化のために」

 「アラブ研究」は、その空間的・時間的広がりの巨大さゆえに、「問題を設定することにより対象の地域が設定される」という、地域研究の伸縮自在性がまさに前提となる場である。また、単に対象を均質な要素に分解して分析を加える方法ではなく、複合的・重層的・多元的な総体として把握するべく様々な研究領域を越境する、という方法が意味を持つ場でもある。

 以上を確認したうえで、オスマン帝国期シリアの都市アレッポにおける非ムスリムを素材とした研究の事例3点、1)「教会合同」をめぐるキリスト教徒間の紛争、2)人頭税台帳分析をめぐるデータベース利用と解釈、3)ヨーロッパ外交団の現地人通訳をめぐる戦略的問題、について概説した。

 最後に、研究者の通訳的性格を指摘し、往々にしてその仕事が政治的な磁場の中でなされるがゆえに、無色透明な中立性を確保していると錯覚するのではなく、その主体性に関して常に意識的であるべきだ、と述べた。
 

 

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