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研究セミナー >> 2006年度感想・報告 >> 塩崎悠輝
2006(平成18)年度 後期
塩崎悠輝(同志社大学神学研究科)
 ふだん京都住まいであった私は、京都大学などの東南アジア研究者に接する機会が多い。このことは、マレーシアをはじめとする東南アジアのイスラームについて研究する私が恵まれた環境にある、ということである。東南アジアの政治、社会、歴史等を研究する同年代の研究者たちとの意見交換を通して、示唆を得たこと、研究の糸口を得たことは数知れない。

 イスラーム研究者である私は、京都において同年代のイスラーム研究者と意見交換する機会は必ずしも多くない。また、同じイスラーム研究者であっても神学や政治の側面について研究する人々と話を交わす機会が多い。とにかく、研究会や読書会のような場で、あるいは懇親会の場や日頃のつきあいの中で、意見を交わし、自分の研究への批判を得ること、人のやっている研究について聞くこと、新たな情報を得ることが、自分の研究において有力な原動力となっていると考えている。

 2006年度後期中東・イスラーム研究セミナーに参加して、私は、同じイスラーム研究者であっても人類学を主要なディシプリンとする研究者などから、ふだん京都で意見を交わす研究者とは異なる視点からの助言を様々にいただき、以後の研究を方向づけるために極めて有用な示唆を多々得ることができた。私の発表は現代マレーシアのイスラーム主義者、とりわけウラマーのネットワークに関するものであったが、そもそも「ネットワーク」とは何か、近年の人類学等におけるネットワーク研究を踏まえることなく安易にこの語を使っていた私は、批判を得ることによって「ネットワーク」について考えを深め、文献を渉猟していく必要に迫られ、自分の研究をさらに発展させていく契機を与えられたと思う。「イスラーム主義」という語についても同様で、この語の定義について議論を交わしたことにより、自分の研究を補強することにつなげられた。他にも、いろいろと得ることのできた示唆の多くは、ふだん京都で得ることができているものとは若干ちがっていたと思う。

 私の場合、AA研の中でも私と同じくマレーシアをフィールドとする左右田直視氏が、フィールドワークのために今次セミナーに参加しておられなかったことは残念であった。しかし、中東研究者、東南アジア研究者を問わず、様々な地域のイスラームを様々な角度から研究者たちから次々に浴びせられる指摘、批判は今後の研究のために有用極まりないと思った。

 今次セミナーでは、関西あるいは他の遠隔地からの参加者があまりいなかったようだが、交通費・宿泊費が支給されるとはいえ、やはり距離の壁は大きく、遠隔地からの参加は必ずしも容易でないことは否めない。もし、同様のセミナーを関西で開催すれば、東京で開催するのとはまた異なった面々が数多く参加するのではないかとも思う。しかし、AA研の全国的な共同利用研究所、という位置づけは、研究者にとって需要のあるものであり、共同利用研究所の充実は、今後さらに日本の地域研究・イスラーム研究において有用かつ必要なものである。中東・イスラーム研究セミナーにかぎらず、AA研が今後ますます研究者にとって相互に刺激し合い、多くの示唆を得る場となることを希望する。
 

 

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