Top page of the Project MEIS at TUFS
 
研究セミナー >> 2006年度感想・報告 >> 細谷幸子
2006(平成18)年度 後期
細谷幸子(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程)
 私が現在、博士論文のテーマとして取り組んでいるのは、イランの介護福祉施設における入浴介助ボランティアの活動を通して、イラン社会におけるイスラームと福祉の関係を、実際の介護の場面からとらえるということです。

 私の専門領域は、イラン地域研究ということになりますが、もともと私は病院に勤務する臨床看護師でした。そのため、私の興味の対象は、イランやイスラームというよりは、むしろ看護や介護、特に人間の身体とその生理に直接触れる身体(直接)ケアにありました。博士課程進学後は、イランでの現地調査の合間を縫うように、このプロジェクトのリーダーでいらっしゃる大塚先生のイスラーム人類学の勉強会や、基礎看護学、社会福祉学、介護の社会学など、さまざまな分野のゼミや研究会に参加していました。

 そうしたゼミや研究会で発表をさせていただくたびに、専門領域がはっきりしない立場で研究発表をすることの難しさを感じていました。自分自身の勉強不足が最大の原因ですが、発表時間の多くを基礎的な情報の説明に費やさなければならず、議論したい部分に十分な時間がとれなかったり、どうしても部分的で単純化された結論になってしまったり、概念のとらえ方に齟齬があるために議論にならなかったりと、自分の研究内容をきちんと伝えられないことに、もどかしさを感じていました。

 中東イスラーム研究プロジェクトのセミナーでは、さまざまな領域の専門家である先生方の前で発表できるという点、イスラームの基礎的な概念などに関しては説明する必要がないという点、そして2時間という大きな時間枠で発表できるという点から、より踏み込んだ議論をさせていただける機会だと思い、応募を決めました。

 発表の場では、必要な情報が十分に提示できていないこと、概念や表現の一つ一つが丁寧に吟味できていないこと、結論が先にあって、そこから推論した議論の進め方をしてしまっている部分が多いことなどに気づかされました。

 しかし同時に、イスラーム共和国であるイランで、イスラーム的でない言動がどこまで可能なのか、何をイスラーム的とするのか、その判断に迷っていたところについて、先生方のご意見を聞くことができ、自信をもっていい部分も見つけることができました。

 セミナー期間中は、体調不良で吉田さんのご発表を聞くことができず、事務局の方々にもご迷惑をおかけしました。しかし、勉強不足でわからないところが多いながらも、王先生の聖廟巡礼に関するご研究から、岡戸さん、塩崎さんのご発表を通して聞くことで、自分自身の論文のまとめ方について再考することができました。また、プログラム終了後の交流会で先生方とお話させていただいた内容や、大先輩である渡部さんの博士論文に関するご発表は、研究を続けることに対する個人的な悩みに、たくさんの示唆と希望を与えてくださいました。ありがとうございました。

 

 

back_to_Toppage
Copyright (C) 2005-2009 Tokyo University of Foreign Studies. All Rights Reserved.