Top page of the Project MEIS at TUFS
 
研究セミナー >> 2006年度感想・報告 >> 森田豊子
2006(平成18)年度 前期
森田豊子(大阪外国語大学等非常勤講師)
 セミナー最終日にも言ったことであるが、私にとって「幸せな4日間」であった。これまでの参加者の指摘にもあるように、現在の日本で中東・イスラームについて日常的に議論をする場所はたいへん限られている。私のように鹿児島という地方に住むものにとっては、なおさらである。ほとんどが東京で開催される研究会やセミナーに参加することも難しい。IT技術の発達によってアクセスできる情報量は確実に増えたものの、同じ関心を持つ仲間と議論ができないということがこれほど孤独で苦痛だということを、その機会を失うまで私は気がつかなかった。一部の地域を除く日本のほとんどの地域はいまだにそのような状態におかれているのではないだろうか。今回、全国から集まった参加者たちと4日間議論できたことは、私にとっても非常に刺激になり、やる気を起こさせてくれるものであった。自分が関心を持っているからであろうか、中東・イスラームについてであれば、どのようなディシプリンであっても興味深く議論に参加できたと思う。多様なディシプリンの参加者がいて、多様な視点からの意見を聴くことができたこともたいへん良かったと思う。

  セミナーでは、発表時間が1時間に議論の時間が1時間。どの発表もあっという間に時間が過ぎてしまった。もっと議論を聞いていたい、議論をしたい、という間に時間が来てしまったという印象があった。参加されたどの先生方も参加者もとても熱心に発表を聞いてくださり、先を争って質問やコメントを下さっている姿を見て「研究者」のあり方についても学ばせていただいたような気がした。私自身の発表についても、やはり私のいちばん弱い部分だと自分でも感じている部分について、集中的にコメントをいただけてほんとうに良かったと思う。発表を聞き、その発表者に何が必要であるのかを即座に判断し、その必要な部分にについてきちんと気づかせてくれるようなコメントをし、将来にまでつながるように考えていただける方々に囲まれて、他ではほんとうに得られない経験ができたと思っている。また、基本的には一日につき一つから二つの発表という形は、集中力が途切れることがなくて良かったと思う。また堀井先生の博士論文取得をめぐるお話、まさに問題となっていたレバノンのお話をダーヘル先生から聴くこともできた。このセミナーならではの貴重なお話だった。

  ただ一つ心残りなのが、AA研や図書館にある資料を利用する時間がとれなかったことであった。中東・イスラームに関する資料がたいへん少ない地方にいるため、資料収集にはコストがかかる。セミナーがあまりに充実していたということもあり、そのセミナーを抜けてまで資料のコピーに行くことはできなかったというのが正直なところであったが、図書館などの開館時間内に少しお時間がいだだけるとありがたかった。

  最後に、このようなセミナーでの出会いがこの場だけで終わってしまうのは、ほんとうにもったいないと思う。何らかの形で参加者たちがこれからも関わっていくことのできるような何か、たとえば論文集のようなものを作るといったような、何か形に残るものができるといいのではないだろうか。日本でも数少ない中東・イスラーム研究者たちがこのセミナーを通してこれからもネットワークが広げられることを心から願っている。
 

 

back_to_Toppage
Copyright (C) 2005-2009 Tokyo University of Foreign Studies. All Rights Reserved.