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研究セミナー >> 2006年度感想・報告 >> 宮澤栄司
2006(平成18)年度 前期
宮澤栄司(上智大学アジア文化研究所客員研究員)
 今回、中東・イスラーム研究セミナーへの参加をとおして、論文を書くにあたる自分の問題点を理解できたことに加えて、同じ地域に関心を持つ研究者の方々と交流できたことは、有益な経験となった。昼に夜にお世話になったAA研の教職員、そして他の受講生のみなさんに、心からのお礼を述べておきたい。また、今回のセミナーは、イスラエルによるレバノン攻撃のさなかに緊迫した雰囲気の中で開講され、日本において中東研究者が果たすべき役割の重要性を再認識する機会にもなったことも報告しておく。

  私は、六月の文化人類学会で大塚先生より声をかけていただき、欠員募集に応募した。すでにPhDを取得してはいたが、「PDもしくはこれに相当する研究暦を持つ者」という参加資格に当てはまると判断いただけ、受講できたことに感謝している。

  私が本セミナーの受講を希望したのには、留学からの帰国後、学術論文を書くことができないでいたことと、孤立感を強めていたこととがあった。今回、博論の材料を新しい学問的文脈に置いて、組み直すために、自分を鞭打つことができたことがありがたかった。ラフスケッチの状態で発表に臨まざるをえなかったが、有用なコメントをいただけ、さらに必要な作業が意識できた。とくに、歴史を専門とする先生方からは、言葉をうかつに使ってしまうことについて厳しい指摘を受けたが、学際的なセミナーでこそ得られた貴重な経験であった。また、自分が研究の世界につながっていることを確認できたことが、今後も研究を続けていくための大きな励ましとなった。

  私なりに気づいたことをいくつか述べたい。本セミナーは、「研究のいっそうの深化」と「討論スキルの向上」とを目的としているが、それら二つを、同一形式のセッションで達成することは難しいのではないかという印象を持った。発表にたいする議論では、担当教員が中心的な役割を果たした。もちろん、発表者とすれば、よりよい論文を書くためにもっとも欲しいのは専門家のコメントである。しかし、他の受講生が聞き手となってしまったことも否定できない。スタッフの講義にたいして、受講者に積極的に議論を促すセッションが持たれてもよかった。

  「研究の深化」という点からは、セミナーのテーマを設定して、受講生を募ることも有効だろう。関心領域が重なっていれば、他の受講者による発表から、より多くを得ることができるだろう。また、事前に読んでおくべきテキストを配布し、議論の土台作りをしておくことも可能になる。「現代中東社会における権力」など、テーマを広くしておけば、学生に声をかけたり、指導教官から紹介を受けたりすることも容易である。今回の中東・イスラーム研究セミナーは、五年間のプロジェクトということであるが、こうした試みが定着することを願う。
 

 

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