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研究セミナー >> 2005年度感想・報告 >> 辻上奈美江
2005(平成17)年度 後期
辻上奈美江(神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程)
 この度、2005年12月19日〜22日の4日間の日程で行われた中東・イスラーム研究セミナーに参加する機会を得た。同セミナーは、初日は、公開シンポジウム、残りの三日間が参加者の発表及び博士論文執筆のためのアドバイスにあてられた。セミナーは、全体としては、主催者、参加者が共に多様なディシプリンで構成されていたため、新鮮な議論と交流を図る有意義なものであった。しかし、同セミナーの一層の発展のためにも、評価すべき点、改善の余地が残される点について述べておきたい。

  まず、評価すべき点は、最終日に新井さんにご発表いただいた博士論文執筆のプロセスである。多くの日本の大学でも、近年では博士論文にかける時間が短くなっているように、一昔前の博士論文と現代のそれとでは、調査・研究・執筆のプロセスが異なるように思われる。我々のような博士課程の院生にとっては、博論に向けていかに時間を配分するか、資料の収集をどのようにするかなどは貴重な情報である。今後のセミナーでは、複数の方にご自身の経験をご紹介いただくことも効果があるだろう。

  評価すべき点のもうひとつは、ロジスティックな面である。同セミナーでは、首都圏外の参加者には交通費・宿泊費が支給されたため、わたくしのような遠方からの参加者も経済的な負担を負うことなく参加することができた。結果的にはこういった配慮が、幅広く参加者を募るのに役立っていたのではないだろうか。

  改善の余地が残される点は以下の二点である。セミナーでは、各発表者に1時間、質疑応答と討論に1時間が与えられ、通常の学会発表などと比べればかなり余裕のある時間配分をしていただいた。しかしながら、時間に余裕があったからこそ、プレゼンテーションを通じてどこに議論のポイントを設定すべきかは参加者全員にとって難しい選択となったように思われる。特にわたくしの発表では、博論構想全体にかかわる論点の多いプレゼンテーションとなったため、また中東地域の民主化や市民社会というホットトピックと関連していたため、活発な議論となったことは発表者冥利に尽きるが、同時に時間内では収拾のつかないほど多様な論点が寄せられた。今後のセミナーでは、発表者にあらかじめいくつか論点を挙げるよう指定しておくなどの方法も効果的かもしれない。

  第二の改善点は、主催者の先生方のほとんどが人類学と歴史学で占められていたため、討論内容やアドバイスなどが、結果的には参加者ごとに偏りが生じた可能性があることである。たとえば、宇野陽子さんの発表の際には、専門分野が近い先生が特別にご出席されていたが、こういった柔軟性が増せば、参加者にとってより有意義なセミナーとなるだろう。

  とはいえ、ご主催頂いたAA研の先生方及び事務方でご尽力いただいた村上さんのきめ細かいご配慮のおかげで、先生方や参加者と研究の枠を超えた交流を図ることができたことは得がたい機会であった。この場をお借りして感謝申し上げたい。

 

 

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