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研究セミナー >> 2005年度感想・報告 >> 久志本裕子
2005(平成17)年度 前期
久志本裕子(東京外国語大学大学院地域文化研究科)
  私は今回、研究セミナーと教育セミナーの双方に参加する機会を得た。以下では二つのセミナーの比較も織り交ぜながら感想を述べたい。

  研究セミナーは研究会への参加と、中三日の参加者による研究発表で構成されている。研究発表には発表に一時間、議論に一時間が与えられ、一日二〜三人の発表が組まれている。定員が少なかったこともあり、参加者および先生方全員と十分に話をする時間を取ることができた。議論の時間には双方から均等に質問が出された。会議形式に正方形の席が作られていたので、先生方、学生双方の顔が良く見え、発言がしやすい雰囲気であったことも要因かもしれない。また、昼休みや終了後の食事の時間などには、研究内容についてはもちろんのこと、これから研究をしていくということについていろいろな話を伺うことができた。こうしたことは、通常の一日だけの研究会とは異なり、五日間という時間をかけてこそ得られた経験であろう。

  面白かったのは、セミナーの時間外に話をしてみると、「本当はこういうことが言いたかったのだ」という発言がしばしば聞かれたことだ。 私自身がそのように後から弁解してまわった一人であるのは言うまでもない。一人二時間という時間配分は学会発表などに比べてはるかに長いと思うが、おそらく逆に全部伝えようと余分なことを盛り込んでしまうのだろう。自分の発表に関しても、もう少しでもわかりやすい発表ができればよかったと後悔することばかりであったが、一時間の質疑応答の中で自分が気付かぬうちにとらわれていたいくつかの思い込みに気付くことができたのは大きな収穫であった。

  だが最後まで気になっていたのは、博士論文の完成が目前の方々と、全く道が見えない状態の私とが同じ場で発表することが、セミナー全体にとって良いのだろうかということであった。わざわざ遠方からいらしている方の時間を無駄にするだけではないかと心苦しさを感じずにはいられなかった。だが最後にセミナーについて話し合った場で、研究をはじめたばかりの頃の感覚を思い出せたり、また今後の指導の勉強にもなったという意見が出された。気持ちが楽になると共に、研究の進度が異なる人々が集まって議論することの意味について考え直すことができた。

  また、研究をはじめたばかりの今では言われなければわからなかったであろう意見を伺えたのは、セミナーについて参加者が批判的に発言を求められる場が用意されていたからである。セミナー自体が初めてであったためフィードバックが必要であったということもあるのだろうが、このような場が用意されていたことに、参加者を一学生というよりもセミナーを共に創る人々として位置付ける、このセミナーのユニークな面が現れているように思う。この点は、参加者の人数が倍以上の教育セミナーにも共通する。

  「研究・教育セミナー」の募集が出たとき、博士一年次に入ったばかりで研究テーマも固まっていなかったこともあり、教育セミナーへすぐに申し込んだものの、研究セミナーへの応募はかなりためらったのが本音である。だが、濃密な議論な議論に参加でき、積極的に参加してよかったとつくづく感じている。 異なる対象地域、研究領域の方々はもちろん、同じ地域を対象としていても遠方の大学の学生と交流する機会は少ない。そうした日常では会わない人々が十分に話し合う時間を提供する今回のセミナーのような企画が、より多く開催されることを願うのは、企画してくださった方々の労を考慮しない贅沢な望みであろうか。
 

 

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