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研究セミナー >> 2005年度感想・報告 >> 兼川千春
2005(平成17)年度 前期
兼川千春(立教大学大学院社会学研究科)
 私の専攻は社会学、フィールドはイエメンで、研究対象はイエメン社会におけるマイノリティ、なかでも「アフダーム」(akhdam)という蔑称で呼ばれ、長い歴史を通じて社会の最下層に位置づけられてきた人々です。「イエメン人」でありながら「エチオピア人の子孫」といわれ続け、人々が忌避する清掃や芸能を生業とし、他階層との通婚はほとんどなく、「二級市民」としてアフリカ出身の奴隷(abid)よりも低い地位に甘んじてきた彼らは、1980年以降「エスニック・マイノリティ」と名づけられ国際開発援助の対象となりました。このことが「アフダーム」、および彼らを取り巻く人々の意識や行為にどのような変化や影響をもたらしたのか、それが目下博士論文に取り組んでいる私の研究テーマです。

 所属する研究室では、さまざまなマイノリティ研究に勤しむ仲間に恵まれていますが、あいにく中東・イスラームを専門とする同志はおらず、その意味で私は研究科のなかのマイノリティ、常に「私の理解/解釈は正しいのか」という疑問を抱きながら研究を続けてまいりました。したがって今回のセミナーは、普段なかなか接する機会のない中東・イスラームを専門とする諸先生方に指導を仰ぐ好機と捉え、迷わず応募いたしました。実際にこのような試みは初めてということで、諸先生方のコメントは温かいものに終始していた感はありますが、期待に違わず有益なコメントをいただいたと感謝しております。

 個人的には反省する点ばかりですが、これまで20〜30分のプレゼンテーションしか経験のない私には、1時間のプレゼンテーションは大変勉強になりました。さらに、定員10名のところ今回の受講生は7名ということで、プレゼンテーション後のコメントやディスカッションの時間も十分あり、せいぜい10分程度の時間しかいただけない学会報告などと比べれば、大変「贅沢な企画」だったと思います。もちろん、他の受講生の方々からも報告内容およびプレゼンテーションの両面において、刺激を受けました。

 セミナー中、受講生はAA研の図書室を利用させていただいたり、先生方との交流の機会をふんだんに(しかも美味しいお食事つきで)設けていただいたり、至るところに事務局の配慮が感じられました。私事と恐縮しながら授乳室の相談をしたところ、大変温かくかつ迅速に便宜を図っていただき、心から感謝しております。ありがとうございました。

 今後は、セミナーを終えるにあたって総評の時間が設けられるとよいのではないかと思います。たとえば、研究セミナーの目的として、プレゼンテーションおよびディスカッション・スキルの向上が掲げられていましたが、全体的にそれらに関するコメントは少なかったように思います。各報告者に対してそれぞれコメントするのが難しければ、最後に総評の時間を設け、全体的なコメントをするというのはいかがでしょうか。また、受講生は諸先生方の質疑応答からスキルを「盗む」だけでなく、それぞれのスキルの極意も拝聴できれば、さらに充実したセミナーになると思いました。振り返ってみますと、国内で日本人同士で行う場合とは異なるであろう海外でのプレゼンテーションやディスカッション・スキルについても、経験豊富な諸先生方からお話を伺えれば、大変有意義だったのではと思います。

 いずれにしても、諸先生方はじめ、非常勤研究員の方々、受講生の方々、事務局の方と知己を得られたことを今後の研究の糧とし、研究を深めてまいりたいと存じます。貴重な機会をどうもありがとうございました。
 

 

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