Top page of the Project MEIS at TUFS
 
中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
  1. ホーム
  2. 海外研究拠点
  3. 中東研究日本センター(JaCMES)
  4. 研究活動
  5. Middle East and Multi-Cultural Studies in Japan: The State of the Art−報告
  6. トルコにおける公共圏とイスラーム主義女性

トルコにおける公共圏とイスラーム主義女性
The Public Sphere and Islamist Women in Turkey

澤江史子 (国立民族学博物館外来研究員)
Fumiko SAWAE, Visiting Researcher, National Museum of Ethnology

本報告では、トルコにおいてイスラームを女性の社会進出や自立という観点から再解釈し、イスラーム復興運動の一端を担う女性たちが、公共圏においてどのような言説や実践の活動を展開しているのかを論じた。理念的には市民的公共圏は、多様性を包摂する民主主義社会として成熟していく上で、多様性のダイナミズムを公共性に反映していくべき場といえる。それは、公の場での議論だけでなく、公共性に関わる意見が交わされる私的な会話の場面、国家の公共性理解と抵触するようなシンボルや「眼差し」を意識した態度や服装までも含む幅広い概念である。そして、自由化や民主化が十分でない国では権力掌握勢力が自身の公共性理解を社会に押しつけようとし、抑圧や統制を及ぼそうとする場でもある。その一方で、公共圏は国家権力と結びついていない宗教や文化が規律化作用を通じて権力を発揮しようとする場でもある。ムスリム多数派社会において世俗主義を国是とするトルコでは、国家権力を背景とした世俗主義と、社会的規律化効力を有するイスラームがせめぎ合う公共圏で諸勢力が活動しているといえる。本発表が研究対象とする女性たちは、その両者が押しつけようとする規範に異議を申し立てる位置関係にあり、両者から抑圧されてきた。しかし、彼女らはその規範を逆に利用しながら活動の正当化や機会拡大を実現してきた面もあり、結論として、多様な抑圧や既存の規範的拘束のある公共圏は、活動主体がその中でエイジェンシーを形成、発揮する場となっていることを述べた。

発表に対し、スカーフ着用とイスラーム主義を関連づける際により厳密な議論が必要であるとの意見や、トルコでイスラーム的な規範が拘束力を持つ人々の割合はかなり低いのではないかとの反対意見が出された。本発表に関する議論は、研究を発表する自分自身がトルコの公共圏に接合し、そのダイナミズムや拘束の中で主張し、挑戦され、説得し、インスピレーションを得、という作用を直接的に経験することでもあり、この経験を今後の研究活動に活かしていきたいと考えている。

back_to_Toppage
Copyright (C) 2005-2009 Tokyo University of Foreign Studies. All Rights Reserved.