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中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
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18世紀末から19世紀初頭におけるカピテュラシオンと関税問題
Capitulations and Tariff Question in the Late Eighteenth and Early Nineteenth Centuries

松井真子 (慶応大学非常勤講師)
Masako Matsui, Lecturer, Keio University, Tokyo

本報告では、19世紀半ばにおける自由貿易体制の前史として、18世紀末以降におけるオスマン帝国のカピテュラシオンの機能変化を、アジア諸国の事例と比較しつつ検討した。イギリスに牽引された自由貿易体制の根幹、自由貿易条約の「不平等」性は、治外法権、関税自主権の剥奪、片務的最恵国条項に代表される。本報告ではこのうちの関税自主権の問題に焦点をあて、オスマン帝国のカピテュラシオンがスルタンによる一方的な恩恵から、締結国間の合意による国際条約に組み込まれることにより片務的義務に変化していく過程をたどった。その際、カピテュラシオンにおける暗黙の互恵性や友好国以外との通商条約にみられる互恵条約の役割に注意した。さらにカピテュラシオンを補足する形で、1780年代より導入された、オスマン帝国と諸外国との間で取り決められるようになった関税表が重要な役割を演じた点を指摘し、特にその導入に先鞭をつけたロシアの役割に注目した。そして、その後諸外国との間で関税表の定期的交渉・更改が既成事実化する形で、オスマン帝国の関税自主権が侵害されてゆき、19世紀における一連の自由貿易条約につながっていく過程を分析した。

本報告に対しては、報告者が取上げた時代がオスマン帝国にとって経済史のみならずあらゆる側面において非常に大きな転換点であったこと、同時にイギリスにおいても重商主義から自由貿易主義への転換があったことを強調するコメントが得られた。またアジア地域と対照しつつ上記問題を考察した点には好意的コメントが寄せられた。一方通商条約締結以降のオスマン帝国の従属化問題を特に帝国内の地域差(アラブとアナトリアの違いなど)を考慮しつつどう捉えるか、同時代の治外法権問題、特にロシアとギリシア正教徒保護問題との関連などが質問・討議され、議論の幅が広がるとともに今後の課題が提示された。

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