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中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
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"The Meccan Sharifate and the Red Sea Trade: The Rise of Jidda as an Entrepot Port and the Policy of the Mamluk Dynasty toward Hijaz"


Keiko Ota (Research Fellow, Ochanomizu University)
太田 啓子(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科)

報告内容

 本報告会においては2008年にお茶の水女子大学に提出した博士論文(「メッカ・シャリーフ政権と紅海貿易−中継港ジッダの興隆とマムルーク朝の対ヒジャーズ政策−」お茶の水女子大学大学院人間文化研究科比較社会文化学専攻、2008年3月提出)の概要を報告した。
 10世紀末にメッカに成立したシャリーフ(預言者ムハンマドの子孫)による政権は20世紀初頭まで1000年以上も存続し、メッカを中心とするアラビア半島西岸地域(ヒジャーズ地方)の地域支配を担ってきた。本報告においては主に13-15世紀を対象時期に設定し、政治・外交面からの分析として、シャリーフ政権による地域支配の実態および外部諸勢力との外交関係を検討した。さらに政治・外交面と商業・経済面を結びつけた分析を行ない、国際商業ルートの変遷がメッカおよびシャリーフ政権の経済的基盤に与えた影響を検証した。また、商業中継港としてのジッダの興隆がマムルーク朝の対ヒジャーズ政策およびシャリーフ政権の支配に与えた影響を明らかにするため、ジッダのトポグラフィーおよびその機能の歴史的変遷について考察した。以上の分析から、メッカ・シャリーフ政権がメッカの聖地性を権威の源泉として利用するとともに、預言者ムハンマドの子孫としてのシャラフsharaf(高貴さ)に依拠するという二元的な権威を持つ王権であったこと、外部諸勢力との国際的なパワーバランスの上に存立し、外部諸勢力とシャリーフ政権の間には相互依存関係が構築されていたことを明らかにした。

ディスカッションの概要

 コメンテーターのAbdul-Rahim Abu-Husayn氏(American University of Beirut)からはJohn Meloyが研究対象時期としているブルジー・マムルーク朝期以前の時期を対象とすることにより先行研究における研究空白を補っている点、メッカの地方史を史料として利用することにより多角的な研究が可能となっている点が評価された一方、sovereignty、subordinationといった言葉が具体的にどういった状況を示唆しているのか、またマムルーク朝がヒジャーズ地方に及ぼしていた影響が過小評価されているのではないか、といった指摘がなされた。またStefan Knost氏(Orient Institut Beirut)からは国際商業と紅海貿易の関連性についての質問が提起された。

会議参加の感想

 報告会開催時期がちょうど「レバノン特別法廷」が近く訴追を開始するという時期と重なったため、政治的緊張が非常に高まった中での開催となった。そのため報告者、コメンテーター、オブザーバー等いずれも日本、もしくはベイルート在住研究者が主体となったが、いずれの先生方も事前に丁寧にペーパーを読み込んでいて下さり、結果として中身の濃い、非常に充実した報告会となった。
 またベイルートがモスク、教会(マロン派教会、アルメニア教会他)などが散見する、国際色豊かな港市である一方、ベイルート東方のベカー高原の方はシーア派支配地域であり、イランの支援で建設されたイマームザーデが見られるなど、レバノンという国家の歴史、現在の政治状況について考える機会も得ることが出来た。
 最後に今回の報告機会をいただいたのみならず、無事に報告を行なうことが出来るよう最大限のサポートを下さった黒木英充先生、近藤信彰先生、高松洋一先生、小副川琢さん、錦田愛子さんらスタッフの先生方に心からお礼申し上げたい。

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