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中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
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"The mass conversion of 1354 reconsidered: The Copts in Mamluk Egypt as depicted in the Life and Miracles of Anba Ruways"


Asuka Tsuji
(Research Associate, Institute of Oriental Culture, The University of Tokyo)
辻 明日香(東京大学東洋文化研究所助教)

報告内容

 歴史的に異宗教・異宗派に属する人々が混住してきたベイルートで報告させていただくにあたり、修士論文でテーマとした「14世紀エジプトにおけるイスラーム化の過程」を、キリスト教徒側の視点からとらえ直す、という試みを行った。

 14世紀、マムルーク朝エジプトにおいて、土着の単性論派キリスト教徒であるコプトは、ムスリムによる大規模な教会破壊や襲撃を経験した。そしてマクリーズィーが伝える、1354年に起きた一連のコプトに対する事件が、エジプト宗教史の転換点となったと理解されている。本報告は、年代記やコプト聖人ルワイスの生涯から、14世紀後半のコプトの社会的状況、すなわち迫害や改宗の実態やコプト教会の地位と役割を検証し、マクリーズィーの記述について考察した。その結果、1354年の迫害で、コプト共同体は壊滅的な打撃を受けたわけではなく、マクリーズィーが伝える1354年の措置とそれに伴う大改宗の記事は、ウラマーが考える「コプトの敗北」の理想形にすぎないことを示した。

ディスカッションの概要

 聖人伝を利用することに対して、どのような反応があるか不安であったが、ジョン・メロイ氏、ステファン・レーダー氏双方が歴史研究に聖人伝史料を用いることへ賛同してくださった。また、今まで議論が続いているコプトの大改宗に関して、問題を再提起していることへ評価をいただいた。同時に、史料批判の問題や、組織としてのコプト教会をどのように研究するか、イスラーム化の過程をどう捉えるか、といった指摘や質問があった。

会議参加の感想

 英語で発表するのは初めてであり緊張していたが、案の定、発表の前半が非常に早口で聞き取りにくいものとなってしまった。しかし本会議では単に「英語で発表した」とはならず、事前にペーパーをチェックしてくださったり、他の報告者が全員同世代であったり、今後英語で報告をするにあたり何に注意し、どこを直すべきかということを学ぶ教育的要素を多分に含んでいたことが大変有り難かった。他の報告者の発表やコメントからも、プレゼンやコメントの仕方を学び、勉強になった。

 発表日の前後には、アルメニア教会やマロン派教会、ドルーズ派の村を見学した。東方教会の中でも、コプト教会とは雰囲気が異なる教会の中を実際に歩き、そして山奥の緑豊かでゆったりと時間が流れている(という錯覚をおこす)村々に魅了され、またレバノンを訪れたいと思った。

 このような機会を与えてくださっただけでなく、コメンテーターとのコンタクト、訪問・見学先・宿泊など、隅から隅まで目を配り、もてなしてくださった黒木英充先生、千葉さんを始めスタッフの方々に、深く御礼申し上げる。

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