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中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
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"Female Teacher as Pseudo-mother:
The Role of Female Teacher in the Current Egyptian Educational Market"


Junko Toriyama (Ph.D. Candidate, Ochanomizu University)
鳥山 純子(お茶の水女子大学大学院博士後期課程)

報告内容

 本報告では、現代エジプトの大都市圏における高い女性教師(初等教育における)の割合と、教師と母役割との相似という言説を取り上げ、参与観察から得たデータをもとに、言説の唱える相似性について、1)教育制度、2)社会関係、3)職業(教師)、という異なる3つの視点から検討した。

 そこから浮かび上がってきたのは、アメリカンディプロマ・セクションという新たな教育制度を取り入れた私立学校では、未だ教育の中身自体が模索状態にある一方、教育の民営化を背景に進む学校間競争の激化があり、顧客としての生徒・保護者への満足感の提供を迫られる中で、重要なサービス提供者として教師を動員しているという構図であった。そこで提供されるサービスとは、参与観察から確認できる限り、エジプトでは母役割に付されるとされてきた親密性の構築と非常に密接に関わっていた。さらにこうした北米の教育制度では試験における点数は絶対視されるものではなく、試験の点数が大きな意味を持つとされてきた従来の教育制度に比べ、明確な教育評価の指標が確立されておらず、指導方法の伝授や探求に充分な関心が向けられていなかった。

 これらの点は、雇用と女性、もしくは教育と女性といった大きな枠組みの議論からは見えてこなかったものである。本報告では、教師職にみる女性の高い割合や、教師と母役割との相似という言説の理解を、学校という現場における教師間、教師−生徒間、教師−保護者間のミクロな現象に探ったが、そこからは逆に、教育制度の改革といった大きな社会的動きが大きな影響を持っていたことが確認された。

ディスカッション概要・会議参加の感想

 またコメンテーターとして来ていただいた、カイロのフランス社会科学研究センター(CEDEJ)研究員であるイマーン・ファラグ博士からは、エジプトにおける女性教師に関する歴史的動きを含めた考察の可能性、および本報告で使用したデータを用いた女性の労働進出に関する議論への発展という可能性をご教示いただいた。

 現代エジプトにおける教育を今までにない視点から考察するという点において、エジプトの教育事情に通じた方の反応はとても気にかかるものであり、そのため、エジプトの教育について研究を続けてこられたファラグ博士と直接意見交換をし、アドバイスをいただけたことは非常に貴重な機会であった。これも、ベイルートという地において、英語で報告をする機会をいただけたからこそ実現できたことであったと思う。今後はいただいたアドバイスを受けた議論への発展も視野に考察を続けていきたい。

 また今回は私にとってこの会議への二度目の参加となったが、今年度のレバノン南部へのエクスカージョンでは、直接の調査地としているエジプトとレバノンとの文化的な違いに驚くことしきりであった。中東地域における多様性を改めて認識するとともに、調査地のカイロについての特殊性を考える良い機会を与えてくださったことに関して、この場を借りて感謝の意を表したい。

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